ホーム > 環境メールニュース > チェンジ・エージェント、今年のシステム思考の展開(2007.01.17)

エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年01月17日

チェンジ・エージェント、今年のシステム思考の展開(2007.01.17)

システム思考を学ぶ
 
私が共同設立者・会長を務めている(有)チェンジ・エージェントが新年第一号で出したメールマガジンから、「今年の抱負」をお届けします。今年、チェンジ・エージェントの舞台で展開していく予定の活動の枠組みです。(重複して受け取られる方、ごめんなさい〜) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ■「さまざまなシステム思考を考える〜チェンジ・エージェント今年の抱負」
http://change-agent.jp/news/000068.html 明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。新年にあたり、今年の私たちチェンジ・エージェントの抱負をかねて、システム思考を使って何ができるかを考えてみました。「システム思考でさまざまな可能性を広げていくこと」をご紹介します。 <さまざまなシステム思考> 「システム思考(システム・シンキング)」と一言でいっても、実はさまざまなシステム思考があります。たとえば、環境問題を考えるうえで重要なマテリアル・フローは、インプットからアウトプットまでの「フロー」に着目するシステム思考であり、ビジネスで用いられるTOC理論は、フローに加えて「制約条件」に着目します。また、リエンジニアリングで使われたプロセス・マッピングは、情報フローの「プロセス」の観点からシステムを捉え、社会システムのアプローチでは、「人間関係」に着目します。 チェンジ・エージェントがトレーニングやファシリテーションを提供している「システム思考」は、さまざまなシステムの「フィードバック」から生じるダイナミクスに着目する「システム・ダイナミクス」に基づいています。ツールとしては、時系列変化パターングラフ、ループ図、システム原型を主に用います。 上級レベルのシステム・ダイナミクスでは、ストック&フロー・ダイアグラムというチャートを用いて、モノ、エネルギー、情報などのマッピングを行うこともあります。 これらのさまざまなシステム思考は互いに補完しあうものですが、中でもシステム・ダイナミクスが多くの組織やコミュニティに選ばれているのは理由があります。 その理由のひとつは、個人やグループの感情、認知、行動などの「人」の次元を、物質やエネルギーなどの「物理・化学」の次元、情報、知識、知恵などの「文化」の次元などと組み合わせて、一元的に考えられるという特徴であると考えています。 実際、システムの複雑な動きは、さまざまな次元の要素が複雑に絡み合って生まれています。TOCやプロセス・マッピングでは、概して人の次元の把握が難しく、一方、社会システムのアプローチは人以外の次元を組み合わせることがなかなかできません。しかし、ループ図やストック&フロー・ダイアグラムを使えば、次元を超えて起こる相互作用も簡単に紙の上に書き表すことができるのです。 このように次元を超えた相互作用によって、さまざまな事象は実に複雑な形で起こります。今システム思考でもっとも先進的な分野は、システムを「生物的」に捉える考え方です。つまり、組織、コミュニティ、ネットワーク、経済、生態系などのさまざまなシステムは、あたかも生物のように、システム全体の目的に向かって「行動」し、システムそのものが「進化」していくという考え方です。 この考え方は、組織やコミュニティを劇的に変化させる最新の手法として、世界中で研究、実験、そして実践が進められています。その中でもっとも確立した手法のひとつが「学習する組織」です。これは、変化の担い手が組織やコミュニティを変革していく上で、もっとも効果的なアプローチといえるでしょう。 <システムの階層> システム思考が対象とするシステムにもいろいろなものがあります。ビジネスという分野をとっても、さまざまなシステムの階層があります。そのなかで、対象とするシステムの境界をどのように引くか-これはつねにシステム思考の本質的な問いとなります。 私たちは、まず個人のレベルから見て行きます。一人ひとりの認知や行動が、その周囲の環境と常に相互作用があるからです。そして個人対個人(上司・部下、同僚同士など)のレベル、グループや部門のレベル、さらに企業というひとつの組織のレベルへと視野を広げていきます。 さらに、企業を取り巻くさまざまな社会があります。ひとつの軸には、競合会社があり、それらの集合体が業界を構成し、さらに業界が集まって産業界を構成します。また、別の軸では、顧客・最終消費者や何層ものサプライヤーがあるでしょう。さらに、株主、コミュニティなど、「ステークホルダー」と呼ばれるさまざまな関係者が企業の営みを可能にしています。 これらの経済活動は、企業を迎え入れるコミュニティや国などの社会があって、はじめて成り立ちます。社会そのものも階層を構成しますが、究極的には社会を成り立たせる基盤は国土や生態系などの自然環境です。 <チェンジ・エージェントの今年の抱負> さまざまなシステムの中で、私たちは次の4つのレベルで、システム思考を基盤とした活動を展開したいと考えています。 1.個人のレベル: 複雑なシステムを理解し、望ましい変化を創り出す
2.グループ・部門のレベル: チームで学習し、共有ビジョンを達成する
3.組織のレベル: 組織をデザインする
4.社会・経済のレベル: 社会的課題に取り組む 1.個人のレベル
どのレベルのシステムをとっても、重要なのは人であり、究極的には、一人ひとりのレベルでの変化が求められます。システム思考は、個人が自分自身の課題や職場での問題の解決に役立つと共に、理想とするビジョンをもち、それを達成するための効果的な戦略を導いてくれます。 私たちチェンジ・エージェントは、システム思考力を身につけるためのワークショップ、セミナー、講演の提供を通じて、それぞれの個人が複雑な問題の構造を見抜き、望ましい変化を創り出す力をつけるお手伝いをしています。 2.グループ・部門のレベル
企業がその使命と戦略目標を達成するには、個々の優れた人材が活躍するだけでなく、組織として効果的に機能する必要があります。とりわけ、変化のめまぐるしい今日のビジネス環境では、最前線の現場の社員にとるべき行動に必要な情報や考え方限がなく、いちいちトップや管理部門にお伺いを立てなくてはならないとしたら、すぐに取り残されてしまうことでしょう。 組織の一人ひとりが、上司の命令がなくても、自律的に目標共有、情報収集して、最善の行動をとるために開発された手法が「学習する組織」です。学習する組織には、「システム思考」に加え、「個人のやりがい」、「共有ビジョン」、「メンタル・モデル」、「チーム学習」の5つのスキル・習慣が必要とされています。 私たちチェンジ・エージェントは、組織向けに「学習する組織」の5つのスキル・習慣を身につけるための研修プログラムを提供するとともに、ビジョンおよび戦略策定ミーティングやステークホルダーとのダイアログなどでのファシリテーションを提供していきます。 3.組織のレベル
「学習する組織」は、環境変化にすばやく適応しながら、自分たちの共有するビジョンに向かって、迅速に行動する人材と組織を開発する上で、革新的な効果を生み出します。   しかし、現場の社員たちが変わるだけでは、組織変革は成功しません。最大の障害となるのは、実はトップの経営陣の経営手法にあることが多いのです。力を備えた社員の潜在能力を最大限活かすと共に、常にそのような社員にとって魅力的な企業であるための組織のデザインと新しいタイプのリーダーシップが必要となります。 社員のスピードと創造力を阻害する最大の要因は、従来型の組織に典型的な「プラニング」、「「コントロール」、そして社員の「コンプライアンス」です。多くのトップは、それこそがマネジメントであるという過去の幻想から解放されていません。 しかし、これからの時代を生き残るには、この幻想を打破して、組織が適応し、創造性を発揮して、進化し続けるためのコミュニケーション、プロセス、場をデザインすることが重要です。社内はもちろんのこと、社外のステークホルダーも含めた多様な人たちのコミュニケーションが、真の創造性を生み出す源泉となります。 私たちチェンジ・エージェントは、そのような新しいリーダーシップスタイルを求めるリーダーたちとともに組織デザインについて考え、「共に学び、共に育つ」コンサルティングサービスを提供していきます。 4.社会・経済のレベル
企業は、その外にある社会・経済システムの影響を大きく受けます。さまざまな企業を取り巻く環境変化の中で、私たちが特に注目しているのは、資本の流れと蓄積、そして経済を動かすエネルギーの流れです。 資本は、かつて「人、モノ、カネ」といわれました。それぞれ「人的資本」、「工業・サービス資本」、「財務資本」と呼べるでしょう。最近では、これに「知識資本」、「社会資本」、「自然資本」などを加える動きが出てきていますが、一方で財務資本への注目と関心が異常なほどに高まり、他の資本が軽視される傾向が強まっています。 さらに、グローバリゼーションによって、国境を越えた財務資本の自由な移動が、今までの社会経済のあり方の前提を覆しつつあります。いかに多元的な資本をマネジメントするか、グローバルな財務資本と向き合うかがこれからの企業と社会にとっての大きなチャレンジとなるでしょう。 また、エネルギーに関しては、現在文明史上もっとも大きな転換を迎えつつあります。私たちの社会経済システムは、エネルギーの変革と共に大きくシフトしてきました。 数千年前には、薪などの植物、家畜などの動物のエネルギーを活用し、農業を中心とした「バイオマス社会経済」を形成しました。やがて、18世紀の産業革命以降、石炭、石油などの化石燃料をエネルギー源として、工業を中心とした「化石燃料社会経済」を形成します。さらに、この数十年間で、サービス業・情報産業を中心とした「知識社会経済」に移行しつつあります。 そして今の先進国の社会経済システムを支えている化石燃料に2つの大きなダイナミクスが起こりつつあります。ひとつが「ピークオイル」であり、もうひとつが「温暖化」です。 ピークオイルとは、原油とガスの生産量がピークを迎えその後減少に転ずる現象で、原油は2012年までに、ガスもその後5年以内にピークを迎えると見られています。(楽観的な予測でも、原油で2025年にはピークとなるといわれています。) 世界的にエネルギーの需要が伸びている今日、供給の減少は中東、ロシアなどの売り手の交渉力を強め、企業はエネルギーおよび原材料の供給確保とコストに関して未曾有のチャレンジを迎えます。 一方、温暖化は主に原油、ガス、石炭の利用に伴う温室効果ガスを排出によって、大気・海水の温度が上昇し、気候や生態系などにさまざまな影響を与える問題です。昨年11月、イギリス政府の研究で、今のペースで化石燃料エネルギーを使うと、気候災害、食糧と水の不足、疫病などによって世界のGDPを5-20%後退させるとの調査結果が出されました。 今後、世界各地で産業に対して化石燃料からの移行を求める行政や市民の圧力は確実に増大し、企業の責任ある行動と適切なリスクマネジメントが問われます。 これら2つのエネルギーに関するダイナミクスは、これから数年の間で確実に強まり、単にエネルギー政策だけでなく、企業のビジネスモデルの根底にまで影響を与えることが予測されます。 私たち、チェンジ・エージェントは、すべての企業に影響を与えるこれらの課題について、最新の情報を集め、環境変化に適応するための知識を集積していきます。 また、このメルマガでも、上記の4つのレベルから、システム思考を活用した知見、洞察、事例を紹介していく予定です。どうぞご期待ください。
 

このページの先頭へ

このページの先頭へ