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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年01月15日

二酸化炭素によって二重リスクにさらされている海洋と沿岸(2007.01.14)

温暖化
 
少し前になりますが、2006年5月31日にドイツ諮問委員会(WBGU)の出した「二酸化炭素によって二重リスクにさらされている海洋と沿岸」の内容を、実践和訳チームの温暖化サブチームメンバーが抄訳にて紹介してくれました。
http://www.wbgu.de/wbgu_sn2006_presse_engl.html 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「二酸化炭素によって二重リスクにさらされている海洋と沿岸」                         ドイツ諮問委員会(WBGU) 最近発表された研究結果で、人類が排出する二酸化炭素を抑制できないと、世界の海洋に甚大な影響をもたらすことが示された。世界の海洋環境は継続する温暖化と酸性化で二重の打撃を受けている状況だ。魚類の乱獲も加わると、すでに少なくなっている魚種資源はさらに悪化する。 沿岸地域は海面上昇によって洪水やハリケーンの危険にさらされている。人類社会や生態系への悪影響を管理できる限界にとどめるためには、新たな沿岸保護対策の導入、海洋保全地域の指定、沿岸地域からの難民受け入れ策の協定などが必須だ。 しかしこのような方策は、地球温暖化や海洋酸性化と精力的に闘っていかなければ成功しない。そのため、大胆な気候保護対策が海洋保全や沿岸保護のために必要な重要な前提となるのである。 地球規模の変動に関するドイツ諮問委員会(WBGU)は2006年5月31日、新たにまとめた特別報告書『将来の海洋:温暖化、上昇化、酸性化』を、連邦議会の環境・自然保護・原子炉省および安全、教育・研究省の各副大臣に提出した。 WBGUはこの中で、気候変動が海洋状況にもたらしている深刻な影響について報告し、海や海洋生物へのリスクを最小限に止めるには、手遅れになる前に大気中二酸化炭素の増加を抑制することが肝要であると指摘した。さらに、今の時代の人間による活動が今後何世紀にもわたる海洋の状態を決定づけることになるため、一刻も早い行動の必要性を強調した。 ●WBGUが報告した深刻な影響は以下の通り。 1.進む海洋酸性化
・二酸化炭素は海水に直接溶け、急速に海洋の酸性化を進ませるため、今行動を起こさなければ、今世紀中に前例のないほどまでに酸性化が進む可能性がある。
・酸性化した海を元の状態に戻すには相当の時間がかかる。
・海洋酸性化は、海中の食物連鎖や生物地球科学的循環で重要な役割を果たしているサンゴなどの石灰化生物に特に脅威となる。 2.進む温暖化と海氷溶解
・温暖化した海水で多くの海洋生態系や魚種資源が危機的状況にさらされる。
・世界中で消費されている動物性たんぱく質の15%は魚類を摂取源としているため、海水の温暖化は特に人間の食糧安保に計り知れないリスクをもたらす。
・過去30年間で夏季における北極の海氷面積は約20%も減少。今から行動を起こさなければ、今世紀末までに夏季の北極海から海氷がなくなる。 3.さらに破壊的になる温帯性低気圧の威力
・観測やモデル化の結果から、温暖化で温帯性低気圧の威力がより破壊的になることがわかった。
・海面温度は熱帯地域で摂氏0.5度上昇しただけだが、ハリケーンのエネルギーは70%も増加したと観測された。 4.加速する海面上昇
・内陸氷河や大陸氷床の溶解と、温暖化に直接起因する海水量の増大により海面が上昇した。
・20世紀における世界の海面上昇率は10年間あたり平均1.5〜2センチであったが、衛星観測によると、この10年間だけで海面は3センチも上昇した。
・海面が産業革命以前の水準よりも1メートル以上上昇すると、沿岸地域社会の適応力は追いつかなくなる。 ●WBGUが勧告する対策は以下の通り。 1.酸性化と気温上昇の抑制
・海の温暖化と酸性化を許容水準に抑制するために、積極的な気候保全政策を実施する。
・海水温度を産業革命以前の水準に比べて摂氏2度以上上げないよう抑制する。
・特に二酸化炭素の排出を削減し、人為的に発生した温室効果ガスの世界総排出量は2050年までに1990年水準から約半減させる。 2.海洋生態系の回復力強化
・海面温度の上昇や酸性化した海においても海洋生態系の回復力を強化するために、海洋資源を持続可能なかたちで管理する。特に乱獲は止める。
・世界の海洋地域の少なくとも20〜30%を保全地区に指定する。そのために「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)」で設定した目標が達成できるよう行動を起こし、国際協定などの採択で公海における規制の国際格差をなくすようにする。 3.沿岸保護のための新戦略
・政府および国際レベルで、危険地域からの避難体制の整備も含む防災策および適応策をさらに開発、調整する。
・途上国では、既存の資金調達手段やマイクロ・インシュアランス(小額保険)などの革新的な資金調達手段を通して資金を確保する。 4.海面上昇による難民の法的安定性の確保
・現在、国際法では、気候変動によって沿岸地域や島から避難せざるを得なくなった人々を受け入れる責任やそれに係る経費の問題を明確にしていない。各国政府が温室効果ガス排出量に合わせて難民を受け入れるような割り当て制度も考えていく。
・海面上昇による難民受け入れに関する正式な国際協定を制定し、補償金のための国際的な基金を設立する。 5.暫定措置としての二酸化炭素貯留
・発電所などで回収された二酸化炭素の深海への直接注入は深海生態系を損なう危険性がつきまとうため禁止する。
・海底層への二酸化炭素の貯留は、エネルギー効率の向上や再生可能エネルギーの拡大といった持続可能なアプローチを補完する暫定措置とする。
・貯留事業は、環境を損なわず、最低1万年以上安全に貯留できると確認されてからのみ認可が降りるという制度にする。 (丹下陽子) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 アル・ゴア氏の『不都合な真実』にも、温暖化に伴う海洋への影響、サンゴ礁などへの影響がかなり詳しく(しかもわかりやすく)説明されています。サンゴ礁にとって生きやすい海域が、酸性化の影響で、昔に比べて現在どのくらい減ってしまっているか、このままだとどうなってしまうか、地図で示すなど、目で見るだけでわかります。うーん。。。とうなってしまいます。 ところで、ゴアさんが来日されて、テレビなどにも出ていらっしゃるためでしょう、 『不都合な真実』 、いまアマゾンで第2位です。
 

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