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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年12月29日

アラン・アトキソン「ピッツバーグ-不死鳥のように甦る持続可能な都市」(2006.12.29)

世界のわくわくNews
 

先日11月15日に開催したフォーラム「地球温暖化防止 企業の戦略的アプローチ:現状を打破する次の一手」では、アラン・アトキソン氏に基調講演をしてもらい、温暖化をめぐる世界の最新の動きなどを伝えてくれました。 http://www.atkisson.com/

「フォーラムに出られなかったが内容を知りたい」というお声をたくさんいただいており、翻訳・編集・デザイン等の実費程度で読んでいただけるよう、レポートを作成中です。できましたらまたご案内しますね。

さて、2〜3年前ですが、そのアランが書いた記事を訳してもらいましたので、お届けします。オンラインの和訳勉強会の環境英語MLが題材として取り上げたものを、実戦和訳チームのメンバーが整えてくれたものです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ピッツバーグ--不死鳥のように甦る持続可能な都市
http://www.atkisson.com/pubs/FR0303.html
アラン・アトキソン

「アメリカで最も持続可能な大都市」を考えるとき、オレゴン州のポートランドが挙がることが多いだろう(ポートランド市民ならなおさらのこと)。ポートランドは確かに、「都市成長境界線」を開発したことや、ヨーロッパ方式の交通システムを取り入れたこと、そして全体的に清潔で環境に配慮されているという点
で、アメリカの草分け的存在である。

しかし、ピッツバーグに注目いただきたい。

「"持続可能な都市ピッツバーグ"という表現はいかにも矛盾ではないか」と反射的に思われるかもしれない。鉄鋼王のアンドリュー・カーネギー、銀行家のアンドリュー・メロン、食品会社を創業したヘンリー・ジョン・ハインツのような実業家を輩出したこの都市は、煙突が立ち並ぶ重工業の街として、米国人の意識に焼きついている。

この街の空気はかつて非常に汚れていて、スモッグで薄暗いために街灯が一日中灯されていた。また製鉄業やほかの産業がコストの低い海外へ移転してしまってからは、さらに失業の街としてのイメージもある。

しかし、1990年代初め、ピッツバーグ地域はめざましい復活を始めた。川はきれいになり、環境汚染などで利用されなくなっていたかつての工業地帯は再開発され、新しいテクノロジー企業が生まれるなど、いまやピッツバーグは、多様で回復力のある経済を擁する魅力的な都市になった。

町にいながら、三本の川でカヤックや釣りができ、何キロメートルものサイクリング・コースを楽しんだり、ハヤブサの巣作りを見ることもできる。運がよければ、オオアオサギに出くわすこともあるかもしれない。これは数十年もの間、この地域でまったく姿を見かけなくなっていたが、今よみがえりつつある種(しゅ)
の一つだ。

また、ピッツバーグは、建築中のものも含めて、米国の民間環境建築基準であるLEED(エネルギー・環境設計リーダー)によって認証・登録された環境共生型建築物の数では、米国内でトップクラスである。

ただし誇張するのはやめよう。まだ「世界で一番環境に優しい都市」の話をしているわけではないのだから。ピッツバーグ地域は今なお大気汚染問題を抱えている。しかしその問題は、通りを車で走るのに昼間でもヘッドライトをつけなくてはならなかったかつてのものに替わり、今日では、地上のオゾン濃度が米国環境保護庁(EPA)の定める基準を満たしているか、否かという地域論争に関するものになっている。

さらにこの地域では、米国内に蔓延している「スプロール(ドーナツ化)現象」がかなり進み、問題になっている。1982年から1997年にかけて、建築物や道路は約40%増えた。一方、人口は実際のところ減少している。

大きな社会問題もまだ残されている。例えば、多数派である白人と、アフリカ系アメリカ人の低体重児の出生数を比べてみると、その格差が少しずつ広がっていることがよくわかる。

しかし「改善への動き」を尺度とするなら、ピッツバーグは不死鳥のように灰の中から確実に蘇りつつある。当社がピッツバーグでの長期にわたる持続可能性の動向を分析したところ、総合持続可能性指数(原則として、1から100で表した各動向の値を組み合わせて平均化した数値)は、この10年間着実に伸び続けていた。総合点は、100点満点中57点から64点へと7点アップした。

そしてその数値の伸びは、われわれが方位になぞらえて設定した「持続可能性の方向性指標」、つまり、自然(N)、経済(E)、社会(S=)、個人の幸福(W)のすべてに反映されていた。部分的には良くなったものも悪くなったものもあったが、全体的には明らかに良い方に向かっていた。

なぜだろう? ピッツバーグでは何がうまくいっているのだろうか?

簡単に答えると、地域で一生懸命改善に取り組んだことが実を結んできたのだ。(「ハインツ」や「メロン」といった名前のついた)地元の財団は、事情に精通した非営利団体の創設に投資してきた。地元の環境保護活動家は、圧力をかけたり、実証プロジェクトを実施したり、「静かな外交」を織り交ぜることで効果的な役割を果たしてきた。地元の大学は、都市設計に関する新しい考え方を提起して、全国的に注目された。地域の経済振興団体は、これまでにはなかった新たな事業を地元に誘致するのに懸命になってきた。

つまり、ピッツバーグが変わりつつあるのは、市民が変えようとしているからなのだ。

全米のあらゆる都市と同様に、ピッツバーグも依然として問題を抱えている。しかしそれでもなお、この地域がますます「持続可能」になっている理由はごくシンプルで、ただ誰もが改善に本気で取り組んでいるということだけだ。動向を調べ、何が改善に役立つかを理解すること。そしてまさにこの地域の勤勉さを誇る歴史の通り、言葉より行動を重んじるということなのだ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「持続可能性の方向性指標」:自然(N)、経済(E)、社会(S=)、個人の幸福(W)は、「コンパス」と名付けられたアランのつくりだした指標です。

「サステナブル・ピッツバーグ」というサイトを見ると、さまざまな活動が展開されている様子やその成果を見ることができます。

そのなかに、アランの「コンパス」に沿って、各指標がどのように変化しているか、どのように取り組んでいるかを見ることができるページもあります。

ピッツバーグが、自然(N)、経済(E)、社会(S=)、個人の幸福(W)をそれぞれ何で測ろうとしているか、という指標群を眺めるだけでも面白いでしょう。

「つまり、ピッツバーグが変わりつつあるのは、市民が変えようとしているからなのだ」--来年は、この力強いメッセージが日本や世界の各地でますます聞かれる年になりますね、きっと。

どんな展開が待っているのか、楽しみですね。そして、その展開をいっしょに作っていけることは、もっと楽しみですね!

 

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