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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年12月07日

「報告書:スウェーデンにおける環境税導入の評価」その3(2006.12.07)

コミュニケーション
 

前号・前々号のつづきです。国民が環境税をどう考えているか、そして、スウェーデンでエコカーが普及しているのはなぜか(どうやったからか)、とても勉強になります。

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4.国民による環境税の評価
国民が環境税をどう評価しているかはアンケート調査をしなければ正確には分からないが、エネルギーに関してのアドバイスを提供している自治体のエネルギーアドバイザーが市民とエネルギー対策について一番対話をしているので、インタビューをしてみた。以下は、彼との話し合いの結果の私の見解である。

スウェーデンは、国際的に見て税金が高い。国民は税金が高いことに慣れている。そして、不満はあるが、税金がどのように使われているのかについての情報は確実に得られる。また、税金は、福祉のように良いことに使われているので、高くてもしかたがないというのが一般的な考え方だろう。

エネルギー税、炭素税に関しては、暖房用の石油や電気代が高くなったことに対する国民の不満はある。しかし、環境税は所得税や固定資産税などと違い、誘導政策なので環境に配慮した代替策に切り替えると経済的にメリットがあるようになっているため、個人は経済的に可能な範囲の中で代替策に切り替える方向に向かっている。

例えば、前頁の図11のグラフで見ると明解に分かるが、環境税の影響で、暖房システムの年間コストが石油ボイラーだと一番高く、電気暖房だと二番目に高くなっている。年間15 万円もの差が出てくると新しい暖房システムへの投資が数年で回収できることになるため、環境に配慮した暖房システムへの転換のインセンテイブとなっている。

私の家を一例にあげる。この家は、70年代の中ごろに建てられた。当時、脱化石燃料対策として原子力発電所を導入したため、電気代が安くなり、暖房を電気でするシステムが全国に広がって行った。私の家も直接電気のラジエーターで部屋を暖める暖房システムになっている。

政府の環境税の導入によって、電気で暖房するこのシステムのコストが高くなってきている。そこで、昨年、ヒートポンプでお湯のラジエーターシステムに切り替えようと調べてみた。しかし、ラジエーターもすべて取り替えなければならなく、残念ながらコストが高くなりすぎてエネルギーアドバイザーも投資の採算が合わないので薦めなかった。その代わり、ペレットストーブか、空気を使ったヒートポンプであるエアコンを設置して電気による暖房の量を減らす計画をしている。

また、スウェーデンでは、電力は自由市場なので、風力発電からの電力を購入している。風力発電で発電された電力の方が、生産された1Kwhに対してボーナスがつくため、安く買えているのだ。私の自治体の中でも、石油ボイラーでお湯のラジエーターでの暖房を使っている家に住んでいる人たちの多くが、地熱を利用したヒートポンプに切り替えていっている。

田舎では、ペレットが手に入り安いこともあり、ペレットストーブか、ペレットを原料にしたボイラーに切り替える家が増えているとのことだ。国民は、経済性のある方に動く。税金は、効果的な誘導政策となっている。

5.エコカーの普及、拡大政策に関する最新の動向

政府の報告書から抜粋
交通輸送セクターは、スウェーデンの温室効果ガスの総排出量の30%を占めている。そして、そのセクターからの排出量は、1990 年から10%の割合で増えている。道路交通における二酸化炭素の排出が独占的に多く、そのほとんどが重量トラックの輸送である。しかしながら、EU メンバー諸国では、重量トラックと乗用車の両方が著しく増えているため、スウェーデンは、それと比較すれば少ない方である。政府は、将来の予測として、交通輸送セクターの排出量は今後増えると見ている。

政府は、車両燃料税の増税が排出量の増加を軽減していると見ている。また、2004年に再生可能な車両燃料に対する免税政策を導入してから再生可能な車両燃料が増加している。また、エコカーの普及のために様々なインセンテイブが導入されたため、将来バイオマス燃料で走るエコカーが増える可能性があると見ている。

燃費の良い車両を促進するための主な誘導政策として、新車の燃費の情報提供の義務化と自動車業界のEU規模での新車における二酸化炭素排出量の削減の自主的対策のコミットメントがある。追加として、二酸化炭素に関する車両税が2006年に導入される計画がある。政府は、そのほかに、新しい微粒子フィルターをつけた新型ディーゼル車に対する特別な免税も提案している。

車両燃料税
ガソリンとディーゼルには、エネルギー税と炭素税と消費税が課税されている。ガソリンに対する最も大きい増税は1993年に導入された。ディーゼルに対するエネルギー税は、1990 年代の中ごろに、キロメートル税の廃止と同時に増税された。ガソリンとディーゼルに対する税金は、1990 年代の終わりから消費者価格のインデックス指標と合わせられている。1990 年から2005 年までのガソリンとディーゼル税の増税が車両燃料の消費と二酸化炭素の排出量に与えたインパクトが計算されている。

2010 年、2015 年、2020 年と将来の影響も計算されている。計算の結果、1990 年の車両燃料税が維持されていた場合に比べ、増税されたことによって2005 年の二酸化炭素の排出量は150万―320万トン少ないということが示された。

社用車に対する税金
スウェーデンで販売される新車の25%が社用車である。それらは、通常、一般市民の車に比較して重量が重く、燃費も悪い。現在の社用車のルールは、1997 年と2002 年に修正がされた。1997 年度の修正は、社用車を私用で乗る場合は、燃料を支払うというルールである。その目標は50%しか達成できていない。

しかしながら、無料の車両燃料に課税をする修正案は、長距離の利用の削減という形で顕著な効果があった。この修正案で二酸化炭素は、年間、20万トン削減できた。

スウェーデンのバイオ燃料戦略
2002 年のスウェーデンの地球温暖化防止法案においてバイオ燃料とエコカーの導入の戦略が発表された。主な目的は、バイオ燃料の使用を増やすことである。

戦略には、二つの要素があった。一つは、バイオ燃料の免税と、ガソリンとディーゼル以外の燃料を使える車の市場導入のためのツールと支援である。国会は、2004 年秋に、2005 年までに交通輸送業界で使用される燃料の3%をバイオ燃料にするという目標を決議した。政府も、2010 年までに、5.75%の燃料をバイオ燃料に切り替えるというEU 指令を目標にするという抱負を持っている。

バイオ燃料の免税
2004 年よりバイオ燃料には、炭素税とエネルギー税が免税になった。免税期間は2008 年までである。石油会社は、2003 年からガソリンにエタノールを混入することを大規模に始めた。そして、現在、スウェーデンで売られているガソリンのほとんどに5%のエタノールが混入されている。

その結果、バイオ燃料の使用は、2002 年には石油とディーゼルの全使用量の0.7%だったが、2004 年に2%に増えた。増加したバイオ燃料のほとんどがガソリンに混入された輸入エタノールが占めている。

EC-指令では、ガソリンへの混入率を5%に制限している。しかし、メンバー国の法令での修正さえすれば、RME(Rapeseed Methyl Ester)菜種油のメチールエステルを5%ディーゼルに混入することが可能である。政府は2006 年にその修正をする予定である。しかし、その修正の条件が満たされず、実現しない場合、2010 年までにバイオ燃料が現レベルより大きく変わることはない。

スウェーデンのエコカーの普及のための誘導政策
近年、エコカーの数が急増している。2004 年は、新車の2.5%にあたる7000台がエコカーだった。ガソリンも使えるというFuel-Flexible のエタノール車の増加が最も大きい。E85 という85%がエタノールで15%がガソリンという車両燃料の販売も急増した。エコカーの急増の大きな理由として、次の誘導政策が導入されたり修正されたりしたことが大きい。

-2010 年までバイオ燃料の免税

-2002 年に給料の福利厚生として社員にあてがわれていた社用車への税金が、社用車がエコカーであった場合、軽減されることに修正。エコカーの販売が2002 年は、3500台だったが、2003 年は、6000台に増えた。そのほとんどが社用車である。

-自治体や政府からエコカーの購入への助成金システムの導入。

-自治体の誘導政策の導入。例えば、エコカーには、駐車場を無料にする。ストックホルムでは、渋滞税が免税になる。

-2005 年から政府の省庁において新しい購入ルールが導入。省庁が年間に購入、レンタルする車の25%がエコカーであることという内容である。

-政府は、全国のガソリンスタンドに再生可能な燃料を供給することを義務つける法律を提案した。2005 年12月に国会で検討され、3000立方メートル以上のガソリンあるいはディーゼルを売っている大きなガソリンスタンドは2006 年の4月1日からエタノールかバイオガスを売らなければならないことが決議された。これは、最初のステップで、2010 年までに少しずつ規制が厳しくなる予定である。国会は、政府に再生可能な車両燃料の需要と供給を促進する長期戦略を立てる宿題を与えている。

2005 年には、Volvo 社もSAAB 社もE85 燃料で走れるエタノール車を発売した。今後数年においてエコカーが更に急増することが予測される。

これらのバイオ燃料戦略における誘導政策の施行によって、2010 年には、60万トンの二酸化炭素が削減されると予測されている。そして、その削減の80%がガソリンへのエタノールの混入対策により実現し、20%がバイオ燃料を使うエコカーの普及によると予測している。

参照 出典
スウェーデン政府の報告書
Sweden's fourth national communication on climate change 2005

エコカーの普及率
環境雑誌 Miljo Rapporten 2005-10-27 記事から抜粋

2005 年秋の環境雑誌の調査によると、2年前に比べて大手企業のエコカー使用率は40%増加した。2年前の595台から1044 台に 増えた。Volvo 社のエコカーが500台から360台に減ったが、他の大企業の割合が95台から684台に増えている。

一番エコカーが多い企業は、Volvo トラックで社用車の10%がエコカーである。そのほか、Telia Sonera Sverige AB, NCC, Manpower, Praktikertjanst, FalkSecuritv.Schenker, Saab AB にエコカーが多い。2年間で、社用車が15840 台から19727台と25%増えたと同時にエコカーの割合が40%増えている。全社用車との割合は1.8%から5.1%になっている。また、2年間での変化のもう一つは、エコカーに関する方針を打ち出している企業が増えたことである。

エコカー使用率は自治体の方が優秀
スウェーデンの自治体は、スウェーデンの大手企業よりエコカーの購入において優秀である。

スウェーデンの自治体の1/4 の公用車がエコカーである。スウェーデンの大企業の場合は、社用車の1/20 がエコカーである。スウェーデンの全288自治体の公用車は11390台である。その中の2816台、つまり24.7%がエコカーである。大企業の場合は5.2%なので、自治体の方が20%も多いことになる。一番優秀な自治体は、Trollhattan トロルヘッタン市と82.8%、Uddevalla ウッデバラ市 81.8%である。その他、Lidkoping64.9%、Alvesta 63.9%が続き、大都会の中では、イヨテボリ市が54.4%でストックホルム市は40.7%とこの2大都市が優秀である。

消費者が動かしたエタノール車の市場導入
2005 年にSaab とVolvo がエタノール車を発売したことによってエタノール車の普及は益々急速になっている。しかし、この2社がバイオガス車を発売してから、次にエタノール車を発売するには、決意が必要だった。その決意の裏には、政府の誘導政策があり、免税の市場への影響力は強いことは理解できる。しかし、政府が免税に踏み切るまでには、政府が国民にその政策の支持が得られるという確信が必要であり、時間がかかっている。ここまで来るには、10年かかっている。

10年前にフォードが試験的にエタノール車をスウェーデン市場に導入した時は、一部の自治体、環境保護団体、環境先進企業と購入するところは少なく限られていた。その後、NPO バイオ燃料推進協会が中心になり、啓発活動とロビ活動を行いエタノール車の普及に努力をしてきていた。自動車メーカーは売れるかどうか分からないエコカーを作ることにリスクを感じてなかなかエコカーの製造が進まなかった。

そこで、2000 年、バイオ燃料推進協会とストックホルム市も含む、環境先進自治体と企業がコラボレーションをして、4000 台、購入者を集めるからエタノール車を生産してくれと自動車メーカーに話を持っていったのである。4000 台購買者が集まれば生産しようと言ったのはフォード社だった。

彼らは、一般市民にも呼びかけてエタノール車の購入のキャンペーンを行った。価格は、通常より5000kr=75000 円安く設定されていた。そして、3000台の購入が決まった時、フォードが生産を決定し、2001 年から3000 台のエタノール車がスウェーデン市場に導入されるという画期的な活動があったのだ。

これは、消費者がエタノール車の市場を作ったと言える。このような下地作りがあったからこそ、政府の誘導政策が導入された時、普及がスムーズに行きそのスピードが速まったのだと思う。その理由として、一つには、大規模になる前に実験をしているため技術開発が進んでいるメリットがある。

2005 年夏に、フォードのエタノール車を買った個人として、全く他のガソリン自動車と比べデザインも性能も変わらないのに驚いた。また、エタノールのタンクステーションがかなり普及していたことも大きい。ストックホルム市内だけで20ヶ所以上のガソリンスタンドで既にエタノールをタンクするインフラができていたことも普及にとって大切なことである。

タクシーへの優遇措置
社用車におけるエコカーの普及のほかに、普及が急速に進むと考えられているのがタクシーである。タクシーにとって、バイオガス燃料のエコカーは、タンクステーションがまだ少ないことが難点であるが、エタノールは、インフラが整ってきている。

バイオ燃料にエネルギー税と炭素税が免税になるため、ガソリンに比べ、バイオガスもエタノールも安い。ガソリンが1リットル11円(約165円)に比べ、エタノールは1リットル(120円以下)である。また、それ以外にメリットがある。一つは、自治体、県、省庁がタクシーを使う時にエコカーのタクシーを優先的に使うようになっているからである。特に、高齢者福祉でよく使われるタクシーは、優先的にエコカーが選ばれている。

そして、ストックホルム市の場合、空港にタクシーが客を待つラインがあるが、エコカーのタクシーは、列に並んで待つ必要がないという優遇措置がされている。これらは、タクシー会社に、また個人タクシーの運転手にとっても魅力的で、今年は、エコカーのタクシーがかなり増えると予測されている。

個人への優遇措置
スウェーデンでは、個人が新車を買うことは少ない。私も2年たった中古のエタノール車を購入した。価格は、同じクラスのガソリン自動車と変わらない。エコカーを購入した後の優遇措置は、自治体によって少し違ってくる。バイオガスを自治体が生産している自治体は、バイオガス燃料を半年無料で提供したところがあるそうだ。

しかし、エタノールもバイオガスもエネルギー税と炭素税が免税されているのでガソリンより40円は安い。自治体側からの優遇措置として一番よく導入されているのが、自治体の駐車場が無料になることである。

ストックホルム市内の駐車場は限られており、中心街のアパート住まいの人は、高い駐車場料金を支払ってきているが、それが無料になる。また、今年1月3日から、半年試験的に導入された渋滞税をエコカーに乗っている人は、免れる。これも、支払いの面倒さも免れるし、経済的にも大きなメリットになる。


          <   つ   づ   く   >

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

冒頭の

> スウェーデンは、国際的に見て税金が高い。国民は税金が高いことに慣れている。
> そして、不満はあるが、税金がどのように使われているのかについての情報は確
> 実に得られる。また、税金は、福祉のように良いことに使われているので、高く
> てもしかたがないというのが一般的な考え方だろう。

ということ、当たり前のことなのでしょうけど、当たり前のことが当たり前にできていることの強さを感じます。。。

次は、バックキャスティングについて、国の違いなのか、何があれば日本もできるようになるのか、またまた考えさせてくれる報告書の終章をお届けします。

 

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