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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年08月30日

コブ・ヒル・コウハウジングとその決意表明(2006.08.30)

 
6月に米国出張に行くまえに、[No.1206] で > そのあと、「100人の村」の原作者で、やはりシステム思考の第一人者だった > ドネラ・メドウズさんの作られた小さなコミュニティを訪問してきます。バラト > ングループのメンバーたちが楽しみに待ってくれているとのこと。尊敬するドネ > ラさんがどんなところで考え、働いていたのか、一泊させていただいて、少しで > も感じられたらなあ、と楽しみにしています。 と書きました。 このときの訪問記と写真は、自分のウェブのブログ・ダイアリーにあります。 http://www.es-inc.jp/edablog/diary/archives/000533.html このドネラさんたちが「小さなコミュニティ」、コブ・ヒル・コウハウジングを作られたときの思いや決意表明を、実践和訳チームのメンバーが訳してくれましたので、お届けします。 持続可能な暮らし方や本当に幸せな生き方を考えさせてくれる、珠玉のような決意表明です。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 コブ・ヒル・コウハウジング http://www.sustainabilityinstitute.org/cobbhill/ (「コウハウジング」とは、北欧で生まれた「コレクティブハウジング」と同義であり、各住民の占有住居スペースとともに共用スペースを設けて、住民参加による運営を行う住まい方をします) コブ・ヒルは、「社会や生態系に対する責任を果たしながら、物質的に充足し、精神的にも豊かな生活を送る」という課題に挑戦したい人々が自主的に集まって形成したコミュニティです。 私たちは、田園コミュニティとして、有機農業、生態系に配慮した林業、廃棄物の最小化など、持続可能な土地管理を実践しようと試みています。また、分かち合い、責任、思いやり、コミュニケーション、合意形成、対立の発展的解消、多様性の尊重、愛、といったコミュニティスキルを伸ばそうとしています。これらのスキルは、より大きな社会において持続可能で満ち足りた暮らしを実現するためにも不可欠と考え、力の及ぶ限りこれらを身につけたいと思います。 コブ・ヒルでの生活は、量の面ではつつましく、しかし質の面では豊かなものになるでしょう。私たちは、プライバシーの尊重と共同生活、労働と余暇、自由と規律との間で、健全なバランスをとろうと努めています。何かを決める際にはできる限り、長期的な視点から、このコミュニティや土地や世界にとって最善の道は何かを考えます。 コブ・ヒルに住む人たちは、この土地の恵みで生計を立てたり、サステナビリティ研究所で働いたり、この土地からインスピレーションを得て講義やワークショップを行ったり、土地に根ざした芸術品や工芸品をつくったり、コミュニティの外で働いたりします。 地元のハートランド町に税金を払い、町の行事に参加します。私たちは、食べ物、水、エネルギー、建材の調達、そして廃棄物の処理を、すべてコミュニティ内で完結させることを目指しています。 ここに住む各家庭は、それぞれに専用の生活空間を持つとともに、共用の土地や納屋やコモンハウスを共有しています。運営予算や設備投資、住居の追加販売、土地利用については、住民たちの合意によって決定されます。 ------------------------------------------------------------------------ 決意声明 個々人の集まりがさらに大きなものを形成するとき、そこにコミュニティが生まれます。持続可能性を実現するには、そしてコミュニティを形成するには、長期的な思考と、狭義の「自分」を超えてもっと大きなものに貢献しようとする姿勢が必要です。 私たちは、小さなコミュニティとして持続可能な生活を模索する旅を始めました。なぜなら、正しい暮らし方や協力のスキルを学び、実践するには、小規模であることが不可欠だと思ったからです。 この決意声明は、私たちが手を携えて旅を続ける際の指針となります。私たちは、簡便さに流されることなく、価値基準や理念によって導かれたいと考えています。住民が学び進歩していくのに伴って、声明も絶えず改善されていくことでしょう。 私たちの目的は、自分自身やコミュニティや自然界を満たし、かつ精神的な成長や認識を深めるような方法で、持続可能で生産的で喜びにあふれた生活技術を学び、実践し、共有することです。 私たちは、持続可能性に向かう道はただひとつではないことを認め、謙虚な気持ちでこの冒険を始めました。全力を尽くして自分たちの道を追い求めるとともに、ほかの道を探る人たちについての論評は控えることにします。 私たちは、進んで実験に取り組み、その結果を包み隠さず伝え、間違いから学びたいと考えるようになりました。ここに掲げる原則に完全に従っていると言い切ることはできません。この原則は、私たちが到達した場所ではなく、私たちが進みたいと願う方向を示すものです。 【一体性】 ・私たちは、あらゆる生命のつながりと美と神聖さ、宇宙の一体性と力と神秘を尊重します。こうした真理を、私たちの暮らしや農園、コミュニティに反映できるように努力します。 【美】 ・建造物を作ったり、土地と関わる作業をするときには、細かな気配りや全体を見る視点、洗練されたシンプルさから生まれ出るような美しさを創造するように努めます。 ・この土地で持続的に収穫される物質やエネルギー資源を使い、バーモントの田園環境にふさわしいデザインを選びます。 ・私たちは、景観全体という尺度と長期的な視野に基づいて、物事を考えます。 ・私たちは、建物や土地の物理的な美しさだけでなく、愛情に満ちた関係の美しさも認識しています。 【コミュニティ】 ・自分を尊重すること、互いを尊重すること、生物圏を尊重することを、私たちの行動のよりどころとします。 ・自分たちが持つ多様な強みを生かして、互いに協力し合う道を模索します。 ・対立を明らかにし、これに取り組み、解決に向けて努力します。 ・孤立と無関心を避け、しっかりと参加し、正直に、根気よく、思いやりを持って意思の疎通をはかります。 ・内省や黙想、自然を味わうこと、その他の創造的なことがらに時間を割くことを勧め、多様な個性や才能を伸ばします。 ・敵をつくるようなネガティブな思考や憶測を避け、自分の考えと行動に責任を持ちます。不信や恐れを抱きそうなときには、信頼や愛に目を向けるようにします。 ・コミュニティ内の個人と家族のどちらも尊重し、支援します。 ・自分たちの農業コミュニティにしっかりと根ざした上で、周りのコミュニティにも参加し、学び、支援します。 【公正】 ・このコミュニティは、あらゆる人種、宗教、年齢、性、性的志向、所得層の人々を歓迎します。 ・私たちは、人の価値を、その人が市場で使えるお金の量と等しいと考えることはしません。どの人の時間、独立性、責務、喜びも、その価値が人によって異なるようなことはないと考えます。 ・私たちは正しく暮らしたいと強く希望し、人や自然、お金を扱う際に清廉であります。 ・私たちは、物質的にシンプルであろうとすると逆に解決が複雑になることが多いと理解した上で、シンプルに暮らすことを選びます。 ・自分が抱く非物質的ニーズを、物質に頼らない方法で満たせるように努力します。 【持続可能性】 ・私たちを物質的・精神的に支えるものは、できる限り地元の土地や人から得るようにします。 ・土壌、森林、水などの天然資源を、その純度や生産性を高めるような方法で、効率よく使います。 ・様々な決定を下す際には、土地やそこに住む人、さらには人間以外の生きものの長期的な健康を考慮します。 ・コミュニティの土地や共同の建物、共用の資源を大切に使うように、協力し合います。 ・今以上に持続可能な暮らし方を見つけるために、様々な技法や技術を試します。持続可能性に向けて同じように努力するコミュニティの外の人たちと、成功と失敗を正直に分かち合い、積極的に協働します。 ・最後に、「できうる限り広い視点で長期的に物事を見れば、上記の価値はすべて、互いを高め合うものである」という私たちの信念を、ここで強く主張しておきます。これらの価値のどれかひとつを実現するには、ほかを犠牲にしなければならないと言う人がまだ多いためです。 【相乗作用】 ・物質的・金銭的・時間的な制限があるために、こうした価値のいずれかで妥協しなければならないと感じる場合、一見ジレンマに思えるこの感覚を、私たちはひとつのサインと捉えます。 あらゆる価値を同時に高めたり低めたりする自然の相乗作用を見つけ出すためには、物事をもっと深く見て、ペースを落として自分の内面に集中し、時間と空間の見方を単純化し、他の人と共有し、広げられる方法を見つけなさいというサインです。 (翻訳:五頭美知、森由美子) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 本当に素敵なところでした。わずか1泊の滞在でしたが、生きることと考えること、語ることと暮らすことが別々ではなく重なっていることの落ち着き・安定・充足を感じたのでした。 3人のバラトングループのメンバーもここで暮らし、サステナビリティ研究所で仕事をしています。いろいろな情報・意見交換をするなかから、「これ、日本でもやろう!」「これはいっしょにできないかな」というプロジェクトや夢をいくつも持ち帰った出張でした。 ところで、いまは成田エキスプレスの車中です。今日からスイスに出張なのです。[No.1221] で > 9月にInternational Sustainability Innovation Council of Switzerland(ISIS) > の委員会に出席する予定です。 > > これは、スイス連邦工科大学とThe Sustainability Forum (TSF)が、グローバ > ルな持続可能性の問題について専門家をまじえて議論し、具体的な政策提言など > を出していくために、この秋に新しく立ち上げる評議委員会。スイスを本拠地と > して、インターナショナルなメンバーから構成される委員会で、運営委員会のど > なたかが私の名前と活動をご存じで強い推薦があったとのこと。 > > 委員会メンバーのリストには、国連環境計画(UNEP)の事務局長や、あちこちで > お名前を拝見している博士や研究者などのお名前が並んでいます。私は研究者で > はないので、自分の知っている日本でのイノベーションの話を伝え、世界の動き > を日本に持ち帰るぐらいしか役に立てないけど、せっかくのチャンスなので、参 > 加を決めました。 と書いた会合に出席するためです。 今回はどんな出会いや展開が待っているのか、何を日本から提供できるかな、何を日本に持って帰れるのかな? と楽しみにしつつ、一人で初めての場所へ行くので(筋金入りの方向音痴なので......)「ほんとうに着けるかな〜?」「アムステルダム空港の乗り換えで神隠しにあったらどうしよう」とハラハラドキドキの旅に出発ですー。(^^;
 

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