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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年07月30日

【温暖化・脱温暖化に関する最新情報】米国電力会社の動き〜海外情報源〜クライメート・セイバーズ・プログラム(2006.07.30)

温暖化
 
温暖化・脱温暖化に関する最新情報             (by 枝廣淳子+実践和訳チーム温暖化サブチーム) ※このメールニュースの目的は、温暖化・脱温暖化に関する世界の最新情報をいち早くお届けすることです。英語による最新情報を発信しているサイトなどをご存じの方は、ぜひ教えて下さい。 ※印刷物への転載は、著作権の関係がありますので、無断ではできません。メールでの転送やウェブへの転載は、以下の出所を付記していただければ、歓迎です。 枝廣淳子の環境メールニュース http://www.es-inc.jp/lib/mailnews/index.html 温暖化・脱温暖化に関するバックナンバー http://www.es-inc.jp/lib/archives/11.html 今回は少し前になりますが、アメリカの環境保護団体や投資関係団体などからなる連合組織であるセリーズ(「Coalition for Environmentally ResponsibleEconomies:環境に責任をもつ経済のための連合」)からの情報をお届けします。「カーボンリスク」に対する投資家たちの働きかけうえの電力会社の対応です。 この情報のとりまとめ作業をしてくれたボランティア翻訳者の方が、参考にしたリンク集も挙げてくれていますが、こちらも参考になります。 米国中西部の電力4社、気候変動問題に関する報告書発行に合意 Ceres http://www.ceres.org/news/news_item.php?nid=144 米国ミズーリ州とウィスコンシン州の電力会社4社は、導入が予定されている温室効果ガス排出量削減のための規制による影響を評価し、これを情報開示することに合意した。 これは、2005年秋に提出された株主決議案を受け、投資家が企業に対して、気候変動リスクに関する報告書を発行し、温室効果ガス排出規制への対応について情報開示するよう求めていたのに応じたもの。 今回合意に達したのは次の4社。 ・グレート・プレインズ・エナジー(カンザスシティー、ミズーリ州)(GreatPlains Energy Inc.) ・アライアント・エナジー(マディソン、ウィスコンシン州)(Alliant Energy) ・WPSリソーシズ(グリーンベイ、ウィスコンシン州)(WPS Resources) ・MGEエナジー(マディソン、ウィスコンシン州)(MGE Energy ) 各社とも、排出規制の影響を特に受けやすい微粉炭火力発電所の建設を新たに計画しており、排出規制による影響などについて、既存の発電所と併せて情報を開示することになる。 また、ドミニオン・リソーシズ(リッチモンド、ヴァージニア州)(DominionResources)と、微粉炭火力発電所の建設計画を発表したピーボディ・エナジー(セントルイス、ミズーリ州)(Peabody Energy)に対しても同様の要求が出されているが、こちらは現在保留中。 こうした決議案は、気候変動がもたらすリスクやビジネスチャンスについて、積極的な情報開示や取り組みを企業に求めていくという主要投資家たちの努力の積み重ねの結果である。 投資家とは、米国主要都市や州の年金基金、企業年金基金、労働組合、財団、宗教団体、機関投資家などで、そのほとんどは、「気候リスクに関する投資家ネットワーク」(Investor Network on Climate Risk)【注1】に属している。 投資家は、株主決議案提出のほかにも、全米上位30社の保険会社と上位43社の電力会社に書簡を送り、規制変更に伴うリスク削減計画や物的資産の変化、その他気候変動がもたらす影響などについて今年中に報告書を発行するよう要求したり、債券格付け機関やウォール街の投資会社に対して、投資格付けを行う際に気候変動リスクに基づく分析を考慮に入れるよう強く求めるなどの活動をしている。 「気候変動が企業にとって重要な問題であるという認識を持ち、企業に対してその戦略を明らかにするよう求める投資家が、従来よりはるかに増えている」と、当セリーズ(Ceres:「環境に責任を持つ経済のための連合」)【注2】のミンディ・S・ラバー(Mindy S. Lubber)会長は言う。 「中でも投資家が心配しているのは、炭素排出規制が導入された場合に、石炭火力発電所が財務体力を長期にわたり維持できるかどうかだ」と話すのは、「企業の社会的責任に関する異業種連合センター」(Interfaith Center on Corporate Responsibility、ICCR)【注3】の政策責任者であるレスリー・ロウ氏 (Leslie Lowe)。 「炭素排出に価格が付き、欧州で実施されているキャップ・アンド・トレード方式による排出量取引が導入されれば、温室効果ガスの排出枠を超えた企業は、超えた分を市場から購入することになるからだ」 この2年間だけで、米国内の12を超える電力会社が、株主の要望を受けて気候変動リスクに関する報告書を発行、あるいは発行することに合意している。ニューヨーク市の会計検査官(New York City Comptroller)であり、自らの事務所でニューヨーク市退職年金基金の資産950億ドルを運用するウィリアム・S・トンプソン氏(William S. Thompson)も、積極的な情報開示を推進する投資家のひとりだ。今回の4社を含め、電力会社に7つの決議案のうち6つを提出している。 「株主に対して財務上のリスクを評価している点で、今回の4社は高く評価できる。しかし、こうした株主決議案がなくても情報を開示する企業がもっと増えるべきだ」とトンプソン氏。 「米国で炭素排出規制への支持が高まっていることを考えると、今後建設される石炭火力発電所に対する投資が長期的にどのような影響を受けるのか、とりわけ懸念されるところである。これらの発電所は、この数十年で炭素費用という新たな経済的負担を抱えることになるからだ」 米国北東部の7州は2005年12月、発電所からの温室効果ガス排出量の削減に向けて、2009年からキャップ・アンド・トレード方式による排出量取引を実施することに合意。また、カリフォルニア、コロラド、ユタの3州は、電力各社に対して、新設される発電所の計画案に炭素排出コスト(1トン当たり15ドルにもな る)を織り込むよう要求している。 このように、州や国レベルで温室効果ガス排出規制が導入された場合、この数年に建設が予定されている100を超える石炭火力発電所に対する投資は、かなりの影響を受けると考えられる。 地球温暖化に関する株主決議案は、2004年、2005年とこれまでにない高い支持率を得ており、2006年もこの傾向は続く。2005年にエクソンモービルに提出された決議案は、同社の気候変動に関する決議案では最高の支持率となる28%を獲得した。 以下の米国企業に対して、地球温暖化に関する株主決議案が提出されている。(*は企業との合意に達したため決議案は撤回。) ・自動車部門(1社) ゼネラル・モーターズ(General Motors Corp. (NYSE: GM)) ・石油・ガス部門(4社) デボン・エナジー(Devon Energy (NYSE: DVN))、エクソンモービル(ExxonMobil Corp. (NYSE: XOM))、ウルトラ・ペトローリアム(Ultra Petroleum (NYSE: UPL))、ヴィンテージ・ペトローリアム(Vintage Petroleum(NYSE: VPI)) ・金融サービス部門(2社) ワコビア(Wachovia (NYSE: WB))、ウェルズファーゴ(Wells Fargo & Co.(NYSE: WFC)) ・保険部門(2社) チャブ(Chubb Corp.(NYSE: CB))、マーシュ・アンド・マクレナン(Marsh &McLennan Cos. (NYSE: MMC)) ・不動産部門(6社) DRホートン(D.R. Horton Inc. (NYSE: DHI))、リバティ・プロパティ・トラスト(Liberty Property Trust (NYSE: LRY))、センテックス・ホームズ(Centex Homes (NYSE: CTX))、ライランド(Ryland)【●(米証券取引委員会の決定により除外) omitted due to SEC decision】、サイモン・プロパティ・グループ* (Simon Property Group*(NYSE: SPG))、スタンダード・パシフィック(Standard Pacific (NYSE: SPF)) ・大型小売店(4社) ホーム・デポ* (Home Depot * (NYSE: HD))、ベッド・バス・アンド・ビヨンド(Bed, Bath and Beyond (NYSE: BBBY))、ホール・フーズ・マーケット(Whole Foods (NYSE: WFMI))、ロウズ*(Lowe's* (NYSE: LOW)) ・電力部門(7社) アライアント・エナジー*(Alliant Energy* (NYSE: LNT))、ドミニオン・リソーシズ(Dominion Resources (NYSE: D))、グレート・プレインズ・エナジー* (Great Plains Energy* (NYSE: GXP))、MGEエナジー*(MGE Energy*(NYSE: MGEE))、ピーボディ・エナジー(Peabody Energy (NYSE: BTU))、センプラ・エナジー(Sempra Energy)【●(米証券取引委員会の決定により除外)omitted due to SEC decision】、WPSリソーシズ*(WPS Resources* (NYSE:WPS)) 【注1】「気候リスクに関する投資家ネットワーク」(Investor Network on Climate Risk)-3兆ドル規模の資産を持ち、50を超える機関投資家からなるネットワークで、Ceresが設立・運営。 【注2】セリーズ(Ceres:「環境に責任を持つ経済のための連合」)-米国の環境保護団体や投資関係団体などからなる連合組織。株主決議案の提出や書簡の取りまとめを支援。 【注3】「企業の社会的責任に関する異業種連合センター」(Interfaith Center on Corporate Responsibility、ICCR):200を超える宗教系の投資基金からなり、地球温暖化に関する株主決議案の提出に積極的に取り組んでいる連合組織。 (参考にしたURL) ★「気候リスクに関する投資家ネットワーク」(Investor Network on Climate Risk)について http://www.dbj.go.jp/japanese/download/br_report/ny/85.pdf http://www.teri.tohmatsu.co.jp/pdf/newsletter/ems/061.pdf ★セリーズについて http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=1544 ★ICCRについて http://www.ford.co.jp/press_release/2005_2/0451.htm ★ニューヨーク市の会計検査官について http://www.city.yokohama.jp/me/bousai/tero/ny/shiryo4.pdf ★「米国北東部の7州が2005年12月に排出量取引協定の実施に合意」のニュース http://www.pointcarbon.com/Home/News/All%20news/Kyoto%20International/Domestic%20ETS/article12851-882.html (小野寺春香) ============================== 海外のこういった動きの情報源の一つとなるサイトをご紹介しましょう。 NEDOの海外レポートです。 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/index.html 登録しておくと、毎日のニュースのほか、こういったレポートのお知らせも届きます。すこし前に、温暖化がテーマのレポートがありましたので、ご参考まで、見出しを引用しておきます。 NEDO 海外レポート 2006.3.8 BIWEEKLY 974 I.テーマ特集: 地球温暖化 ○インドにおけるCDM(クリーン開発メカニズム)への取り組み(NEDOバンコク事務所) ○2005年が過去1世紀で最も暖かい年に(世界) ○2100年まで北極地域の永久凍土層が殆ど融解(米国) ○温帯地域の森林が温暖化の原因に(米国) ○米国北東部7州のCO2排出権取引-7州間合意文書(米国) ○英国が2004年の温室効果ガス排出量を発表 ○2004年の持続可能な発展指標および温室効果ガス排出量(英国) ○欧州裁判所、英国のNAP修正案を棄却した欧州委員会の決定を無効と判決 ○英国政府は中国との温暖化対策を推進 ○イタリア政府は「温室効果ガス排出量割当枠」を承認と公表 ○二酸化炭素の削減および処理技術の開発戦略(韓国) ○気候変動をどこまで受け入れるか-Defraの新刊書(英国) II. 個別特集 ○中国の水問題と解決への取り組み(NEDO北京事務所) ○2007年度ブッシュ大統領予算概要(2)-全米科学財団等-(米国)(NEDOワシントン事務所) ○MEMS2006(トルコ・イスタンブール)参加報告(NEDO機械システム技術開発部) III. 一般記事 ○太陽と風力エネルギー資源による水素の可能性(米国) ○ニューヨークで働く人々の動きが大気中の微粒子濃度に影響(米国) ○ナノ材料の安全性と健康リスクを評価する新試験手法(米国) ○強い人工骨を作る海の秘密(米国) ○英国におけるナノ粒子の潜在的健康影響の研究に関する動向 ○メイド・イン・イタリア無人トラック、モハーベ砂漠を横断 ○韓国の次世代技術開発戦略 それから、NGOから企業への働きかけとして、日本でも展開されているWWFの「クライメート・セイバーズ・プログラム」をご紹介しておきます。先進的な環境対策を進めている世界の様々な企業に、さらに一歩踏み込んだ温室効果ガスの削減を行い、その業界における地球温暖化対策推進リーダーとしてより大きな役割を果たしてもらうプログラムです。 http://www.wwf.or.jp/activity/climate/clmt-svrs/index.htm 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 現在、日本におけるCO2排出量のうち約8割が企業・公共部門から排出されており、このことは、企業が大きな責任を持っているというだけでなく、温暖化問題の解決において、鍵となる役割を果たすことができる可能性を示唆しています。   クライメート・セイバーズ・プログラムは、WWFと企業がパートナーシップを結び、企業の排出削減の計画とその実施を行っていくプログラムです。企業は、WWFとの対話を通じて削減目標を掲げ、温室効果ガス削減目標とその実行を、WWFと第3者認証機関が検証します。 現在、このプログラムには、ジョンソン・エンド・ジョンソン、IBM、ポラロイド、ナイキ、ラファージュ、コリンズ、ザンテラ・パークス・アンド・リゾート、キャタリスト、ノボ ノルディスク、テトラパックが参加しています。日本からは、佐川急便株式会社とソニーが参加しており、全世界で合計12社が参加していることになります。 ○クライメート・セイバーズに参加するためには 企業とWWFが話し合いの上、新たなCO2削減目標を策定します。もし企業が既に目標を持っている場合、新たに定める目標は、既存の目標に対してさらに一歩進んだ目標(追加性のある目標)を掲げてもらうことになります。 第三者機関にその新たな目標を技術的に評価、認定してもらい、協定を結びます。 この目標値は、生産量や売上高あたりの排出量である原単位で定めるのではなく、原則的に絶対量で策定します。 目標へ向かって削減が進んでいるかどうかの検証をWWFと第3者機関が行います。   ○クライメート・セイバーズで企業が得られること 企業がクライメート・セイバーズ・プログラムに参加することで得られることとして、温室効果ガス削減に関する最新情報、企業としての信頼性向上、WWFのネットワークの三つがあります。 1) 最新情報 クライメート・セイバーズ・プログラムでは、他のクライメート・セイバーズ参加企業や、環境先進的企業、エネルギー・環境専門家など、他のステークホルダーと関係を結ぶイベントが年に一回、WWF USの主催で開催されます。このイベントでは、クライメート・セイバーズに参加している世界の各企業担当者や専門家によって、温室効果ガス排出削減、グリーンデザインのビル建設の機会、現在の温室効果ガス測定方法の概要、自然エネルギー市場の発展、国内の政策動向など、幅広いトピックで講演が行われます。最新の取組みに関する情報・知識だけではなく、グローバルな環境ビジネスのネットワークキングにも役立ちます。 2) 企業としての信頼性向上 企業はWWFとの対話を通じて、技術的にも経済的にも実現可能な削減戦略を立てることができます。そうした対話によって、企業が戦略を練るプロセスに、温暖化問題やエネルギー問題への対応を統合することを促進できます。さらに、第3者機関が目標の妥当性、目標達成の状況を確かめ、透明性を高めます。 3)WWFのネットワーク WWFの世界的なネットワークは企業にとって有効なものです。WWFは、5百万人ものメンバーを持ち、気候変動プログラムは25カ国を超える様々な国の代表から成るグローバルなチームにより展開されています。たとえば、このプログラムを通じ、IBMとWWFイギリスは従業員教育プログラムを作成し、IBMの多くのスタッフが家庭で使う電気を自然エネルギーによる発電に切り替えました。 クライメート・セイバーズへの参加企業募集WWFジャパンでは、その業界における地球温暖化対策推進リーダーとして、WWFとともに温室効果ガス排出削減に率先して取り組むクライメート・セイバーズに参加する企業を募集しています。 クライメート・セイバーズに少しでもご関心を持っていただけた方は、お気軽にお問い合わせください。 お問い合わせ WWFジャパン・気候変動担当 鮎川ゆりか/山岸尚之/小西雅子 Tel: 03-3769-3509 / Fax: 03-3769-1717 Email: climate@wwf.or.jp 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 日本でももっと「モノ言う投資家」が増えてくるといいですね。 温暖化の展開やピークオイルをめぐる議論をみていると、投資家のリスクも、企業のリスクも、一般市民のリスクも、未来世代のリスクも、途上国のリスクも、全部重なっている未来が感じられます。これまでになかったことだと思います。 「地球はひとつ。みんな同じ船に乗っているのだ」ということが、「理性」だけではなく、「感情」的な意味でもそれぞれの立場での「ワガコト」になってくる。それぞれの立場で「このままではいけない」「なんとか変えなくては」と居ても立ってもいられなくなってくる。変化のうねりの胎動を感じます。
 

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