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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年07月16日

growth と development について(2006.07.16)

 
[No.1208] で、ワシントンでの「ビジネスと持続可能な開発会議」パネルディスカションでの発表内容をお伝えしました。 http://www.es-inc.jp/lib/archives/060628_165411.html 私とフォードの方とワシントンポストの記者さんの20分ずつのプレゼンのあと、会場との活発な質疑応答タイムとなりました。 私も3つか4つの質問に答えました。(あらかじめ用意していけるプレゼンに比べて、やっぱりその場で質問を理解し、答えを考え、英語で話す、というのは骨が折れますねー。日本語だったら立て板に水なのですが。。。はて、英語で「立て板に水」ってなんていうんでしょうね? ^^;) 私にいただいた質問の1つは、「日本では、economic growth と sustainable economic decvelopment をどのように区別して取り組んでいますか?」というものでした。 この「growth と development」については、「日経エコロジー」での連載中のコラム「枝廣淳子の目からウロコの環境英語」の第2回で取り上げていました。 (日経エコロジーはこちら:http://www.nikkeibp.co.jp/news/ecology/) このときの原稿をご紹介しましょう。クイズも、よろしかったらぜひどうぞ! 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 第2回 growth/development 経済や社会でも持続可能性の分野でも、growth とdevelopment という言葉がよく出てきます。持続可能な社会や世界を創っていこう!というとき、「サステナブル・ディベロップメント(sustainable development)」とは言いますが、「サステナブル・グロース(sustainable growth)」とはあまり言いませんね。  何が違うのでしょうか?  辞書を引いてみると、たとえば、 growth:成長、普及、増加、増大 development:発達、発展、進展、進歩、成果、開発 何となくニュアンスやイメージの違いが感じられますか?  私は大学時代、教育学部で乳幼児の成長について学んだとき、やはりこの2つの言葉に出会いました。子どもの育つ姿を表現する言葉には、「成長」「発達」「発育」などがあります。「発育」は日本独自の言葉ですが、「成長」は英語ではgrowth、「発達」はdevelopmentです。  ではクイズです。次の「子どもの育つ姿」を表す言葉は、「成長」でしょうか?「発達」でしょうか? ・身長が伸びる(  ) ・体重が増える(  ) ・知恵がつく(  ) ・感情が芽生える(  ) ・心肺機能がしっかりしてくる(  )  「成長(growth)」は言ってみれば、形態学的な量の変化で、その変化は手軽に測ることができます。単に生物学的に増大していく現象です。  「発達(development)」は、質の変化といえるでしょう。人間としての機能などが大人のレベルに向かって向上していくことです。測定できない微妙な変化も多く、経験・練習・訓練・教育などの「学習」によって、基本的な生物学的現象に付加されるものも含まれます(人間としては、そちらも大事なのです)。  さて、このようなニュアンスの違いを踏まえたうえで、環境など持続可能性の分野ではどのように訳し分けるのでしょうか?  一般的には、growthは「成長」がほぼ定訳ですが、developmentは国連などの定訳に従って「開発」とする場合と、これでは経済のために自然を切り開いていくイメージがあるからと、「発展」を好む人もいます。    昨年『成長の限界 人類の選択』を出したデニス・メドウズらは、前書『限界を超えて』で、このように述べています。「本書のなかで最も重要なのが、「成長(growth)」と「発展(development)」の区別である。・・・・・・何かが成長するときには、量的に大きくなり、発展するときには、質的に良くなるか、少なくとも質的に変化する。量的な成長と、質的な改善は、まったく異なる法則に従っている。・・・・・・この二語以上に明確な区別を必要とする言葉はないと考えている。両者を区別することで、成長に限界はあっても、発展には限界のないことが示されるからである」。  地球は有限で成長しませんから、そのサブシステムである経済も、無限に成長することはありえません。量的な成長ではなく、質的な発展を求める経済や社会への転換を急ぐ必要があります。  あなたの会社がめざしているのはgrowthでしょうか?それともdevelopmentでしょうか? 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 さて、「日本では、economic growth と sustainable economic decvelopment をどのように区別して取り組んでいますか?」というご質問に対して、私は、 ・経済活動と環境負荷の分離(デカップリング) ・幸せの脱物質化 ・経済や事業のサービス化(グリーン・サービサイジング) などのポイントで答えました。 ここで紹介した日経エコロジーでの連載コラム「目からウロコの環境英語」は、イーズのサイトのライブラリーの「執筆・連載」コーナーに少しずつアップしていきます。 http://www.es-inc.jp/lib/writing/ この「執筆・連載」コーナーには、『通訳翻訳ジャーナル』で連載していた「やってみなくちゃわからない ツーホンの世界はFUN!FUN!!FUN?」のコラムも掲載してあるので、英語の勉強や通訳の実態(?)などにご興味のある方、よかったらどうぞ〜。
 

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