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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年07月15日

「木材情報」より泉谷さんの「国産材のPRの戦略」(2006.07.15)

森林のこと
 
間伐材や端材で積み木を作るキット「きのころ」を一緒に作ったり、奈良県桜井での講演に招いてくれたり、エコプロダクツ展でブースでお世話になったりしている泉谷さんは、国産材復活に情熱を燃やして、次々とフットワーク軽くアイディアを形にしていく、とても明るい人です。 泉谷さんが「木材情報」2006年4月号に書かれた記事を、ご厚意で転載させていただけることになりました。「国産材はこうやってPRしよう!」というアピールです。PRのアイディアや成功事例をお持ち(ご存じ)の方、ぜひ教えて下さいな。よろしくお願いします。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 国産材のPR戦略 アピールするのは木づかいの「効用」 柔軟な発想で「新たな木の文化」を 泉谷 繁樹(協同組合吉野の森と住まいのネットワーク 代表理事、泉谷木材商店専務) 国産材を取り巻く現状は、複雑になってきています。業界同士が集まる会合では「不景気だ」「売れない」のオンパレード。実際、これまでの国産材製材業者の主要商品である役物柱の需要が大幅に減っている、また主要販売ルートである製品市場・小売店のルートが以前に比べ疲弊している現実があります。また、それにより原木価格も下がり、山にお金が回らず、手入れされずに荒れる山が増えているようです。 一方、環境や健康を大事にとらえるユーザーに支持されて中小のビルダーが作る無垢材をふんだんに使った健康・環境共生住宅が売れている現実もあります。国産材あるいは無垢材に対して大きなフォローの風が吹いていると感じる人が増えているのも事実です。 そんな中、国産材を扱う関係者はどのように国産材をPRしてゆけばよいのか。より実効的にしかも息長く国産材をPRできるのか、若輩者ながら、これまでの経験も踏まえて提言したいと思います。 人と木材の結びつきが弱くなっている 私は1967年生まれ。現在の住宅購買層である30代40代に当たります。我々の世代は、高度成長をひたすらに進む日本に生まれ、どんどん消費が増え、新しい素材が生まれた時代でした。学校も木造校舎が壊され、鉄筋コンクリート造、冷たいPタイルの床でした。家に帰っても新建材・合板フローリングにビニールクロス。毎日遊んだ野球ですら木製バットから金属バットに。 大きくなってからもバブルにも踊らされ一流建築士が建てるコンクリート打ちっぱなしの住宅・店舗が格好良いと思わされた世代でもあります。このような環境で生きてきた世代が「木材」といって想像するのは、あくまで表面に見える「木目」であってそれがプリントされたものであるか、質感を伴ったものであるかは 関係ないように思います。これくらい、木材という自然素材に手を触れる機会が極端に少ない世代です。 ひるがえって木材業界のこれまでの国産材PRを考えると、触れていれば通常イメージに浮かぶ木の艶・香り・質感・温かみ...こういったものが最重要視されて情緒面に訴えかけるものが多いように思います。 もちろんこのこと自体は間違っていませんし、素晴らしいこととなのですが、我々世代にとって、聞いただけでは実感しにくいイメージでもあります。例えば、ヒノキは良い香りがするといっても、60代の方が想像する香りと30代の我々が想像する香りは大きく違うように思います。 また、実際に小学校であったことですが、海の魚の絵を描こうという授業で、スーパーで売っている切り身の絵を描いた子がいたそうです。木も同じ事が言え、柱が山に生えている絵を描いた子がいるように、山で立っている木と住宅で使われる木材、バットや割り箸に使われる木材が結びつかない子どもが増えているのも事実のようです。 昨今、信じられない事件が多発し不安な世の中になっているのもいろいろな原因が考えられますが、人と人との結びつき・心のつながりがなくなった、弱まったせいではないかと考えます。 木材・国産材も同じ状況で、人と木材、人と里山、人と森林の結びつきがないあるいは非常に弱いのではないでしょうか。その結びつきをどのようにすれば取り戻すことが出来るか、次に考えてみたいと思います。 木片を削って本能を呼び覚ます 春4月。とある公園。満開の桜の花の下で花見を楽しむ多くの家族連れ。そんな中、楽しそうに老若男女何かに取り組んでいるパーティーがある。近づくと良い香りがする。やんちゃそうな男の子に聞くと何と1時間以上も同じことをしているという。そのお母さんに聞くと「TVゲーム以外でこんなに集中している息子 を見るのは初めて」という。 何をしているかと言うと、木片(この場合は吉野ヒノキ)を紙やすりで削っているのだと言う。道理で辺りはヒノキの香りで充満しているはずだ。人それぞれいろんな形に削っている。単純だ。でも見てみると子ども達もお父さんお母さんも皆、幸せそうな良い顔をしている。 実はこれ『きのころ』ワークショップの一場面です。『きのころ』は、(有)イーズ代表・環境ジャーナリストの枝廣淳子さんが中心に第一線で活躍しているデザイナー、プランナー、コピーライター、広告マンたちが所属するクリエイター集団ソーシャルデザインプロジェクトの皆さんと製材業者(小生)が、楽しみながらそれぞれの技量を持ち寄って社会に貢献できる活動として作り上げたもので、小さな円筒型の紙缶に入った、積み木のもとです。 パッケージには、木片が5個、紙やすりが3枚、それからパンフレット。もうひとつ、どんぐりや松ぼっくりが入っています。購入した人は、この木片を紙やすりで削って、積み木を作る、というのがこの『きのころ』の趣旨です。でも、本当に『きのころ』が提案するのは、『きのころ』を紙やすりで削る、その時間を楽しむことなのです。 この『きのころ』を経験した方は皆「木って良い香りがしますね」とおっしゃいます。紙やすりで削ることによって香りをゆっくりと楽しむことが出来ます。木の持つ温かさも何回も手の中で転ばせて持つことによって、より一層手の感覚として覚えこみます。 特に我々30代40代のお父さんお母さんが結構はまるのも、潜在的に持っている人間の本能としての自然への回帰で、自然素材を求める行為なのではないでしょうか。木の持つ魅力を五感で受け止める。そんな機会を作ることの重要性を『きのころ』は教えてくれます。 木材の効用を具体的にアピールする 2005年2月に京都議定書が発効し、マータイさんの「MOTTAINAI運動」など、にわかに環境について書籍やマスコミ等で取り上げられることが増えました。「地球に優しい○○」といった商品は枚挙に暇ありません。(実際は地球環境からすれば怪しい商品がほとんどですが...)。 京都議定書によれば日本は1990年比6%二酸化炭素を減らさないといけないわけですが、そのうち3.9%を森林が吸収することとなっています。これは森林を見守るだけで吸収する数字ではなく、間伐等山の手入れを進め、持続可能な林業を進めることで達成されるもので、現状の荒れた山を見ていると厳しい数字に見えます。こういう状況から環境を第一に考える層の消費者が間伐材商品を選ぶ例も増えてきています。 例年参加している東京ビッグサイトで開かれる日本最大の環境関連展示会であるエコプロダクツ展を見ればわかるのですが、2004年までは木材関連のブースはほとんどなく、むしろ非木材の紙や伐採反対運動といったブースが目立ち、木材=環境破壊といった従前の図式が印象に残りました。 しかし、2005年12月に開かれたエコプロダクツ展では大手企業の環境報告書がケナフ紙から国産間伐材紙に変わるように、積極的に「国産材を使っています」というブースが増えました。参加者のプレゼントに『きのころ』を採用する企業も出るくらいです。 「日本の森が荒れている」→「環境面でも問題がある」→「国産材(間伐材)を使おう!」とストレートに理性的に選んでくださる層も確かにおられます。しかしながら木材の環境面での貢献だけを推し進めてPRしても、社会全体の大きなうねりは起こらず、応える層は恐らく少ないのではと思います。 具体的に多くの消費者層において木材消費の大きなうねりを起こすためには、これからは従来の情緒面に訴えるPR・環境等の理性に訴えかけるPRとともに、木材を使えばこんな楽しい生活になる。おしゃれな生活になる。健康的に毎日を送れる。といった具体的な効用を伝えることも必要なのではないでしょうか。そう、『新しい木の文化の創造』です。 他分野との交流で柔軟な発想を 地元奈良県桜井市の最大のイベントに「大和さくらい万葉まつり」という市民が作り上げるまつりがあるのですが、その目玉が夜、万葉集にも詠まれ遣隋使が帰国した際に迎えた由緒ある初瀬川に「歌垣火送り」と題してヒノキの板の上にロウソクをおき、周りに薄く削ったヒノキを巻いた灯篭を流します。 市民のそれぞれの願いを書いた灯篭に灯が燈されると、吉野ヒノキのピンク色が透けて何ともいえない味わい深い風景になります。今や奈良県名物となったこの歌垣火送りは、木材の持つ魅力を違う形で表現したものです。 また、東京の自由が丘の住宅街に国産材だけで建てた住宅があります。内装はすべて吉野ヒノキを使っていると聞けば、従前ですと和風か少し野暮ったいイメージが湧くのですが、建築家によってコーディネートされた空間は、無機質の家具等とマッチして現代的なおしゃれな空間になっています。しかもヒノキの香りが漂い、何時間でもゆっくりできるような世界で、雑誌にも紹介されるほどです。 木材業界の発想では、ヒノキ・無節=高級・和風住宅、と簡単に結び付けてしまい柔軟なアイディアが出てこないのですが、インテリアコーディネーターやデザイナー等、他の分野の方と交流する中で生まれてくる新しい木の文化があると思います。『きのころ』がまさにそうです。それらを丁寧に効果的に紹介することが重要になってくると思います。 変革をもたらす方程式 社会の流れを作り出すには、木材業界が1人で叫ぶのではなく、多くの立場の違う共感者(推進者)を巻き込み、多面的に運動を広げていく必要があります。 ①これまでの木の香り・艶といった情緒面でのPRよりも具体的に普段の生活から木と心を結び付け、体感できるものに。 ②木は地球環境にやさしい資源であるという理性的なPRも大手企業や環境関連NPOが木材を使いたいと推進してくれるように仕向ける。また、具体的に木造住宅を建てた場合、CO2をどれだけ固定したか、他の工法に比べ、他の材種に比べ輸送距離が少ないので、これだけCO2を節約できた...といった具体的な貢献度がわかるとこういった層は動きやすい。 ③文化的な方々と交流する中で生まれる『新しい木の文化』を広げる。 これらを多面的に伝えていくことによって、ある一定の層だけではない、幅広い層に広がる大きなイノベーションが生じると信じています。 最後になりましたが興味深い方程式があります。「ギルマンの方程式」というのですが、人々がものの考え方を変えたり、新しいものを採り入れるという「変革」はどういうときに起こるのか? ということです。 変革は、N-O>CCのときに起こる N:新しい方法の、認知された価値 O:古い方法の、認知された価値 CC:変化にともなう、認知されたコスト というものです。 これでいくと木材の価値に関しては①②③で述べたようにPRしていけばよいのですが、実際に大きな流れを呼ぶには「CC:変化にともなうコスト」を下げる必要があります。それは何も価格を下げるだけではなく、相談できる窓口がいたるところにあるということであったり、メンテナンスがしやすい商品にしたりといったことでも良いと思います。 多くの知恵を努力を集め、イノベーションを起こしていきましょう! 【泉谷繁樹(いずたに・しげき)氏】 1967年生まれ。泉谷木材商店(奈良県桜井市)専務、協同組合吉野の森と住まいのネットワーク代表理事、桜井木材協同組合青年経営者協議会元会長。泉谷木材商店は昭和38年に創業した吉野ヒノキ・スギの製材メーカー。各種住宅用木材を製造販売しているほか、日曜大工用材や木の玩具も販売。吉野ヒノキを使った「きのころ」や「やさしい積み木」はプレゼントや出産祝いなどとして人気。積み木は海外に納入したケースも。また、地元桜井市内の小学校で、総合的学習の時間の社会人講師として「木と環 境」「木材はどこから来てどこへ行くのか」といったテーマの授業を担当している。ジャパン・フォー・サスティナビリティ会員、NPO法人緑の列島ネットワーク会員 http://www.begin.or.jp/~izutani/ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 泉谷さんも紹介して下さっている「きのころ」、もしよろしかったら、ぜひ一度遊んでみませんか? 「きのころ」をリビングルームに置いたら、それまでは食事が終わるとすぐに自室に帰っていた子どもたちが、なんとなくおしゃべりしながら「マイきのころ」を削るようになって、家族の会話が復活しました、といううれしいお便りもいただいている「きのころ」です〜。
 

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