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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年06月24日

レスター・ブラウン「石油減少時代の到来」〜カーシェアリング(2006.06.24)

エネルギー危機
 

[N0.1186, 1189, 1190]でデニス・メドウズ氏の「ピーク・オイル」の話を紹介しました。いま米国に来ていますが、ガソリンの値段が高いことなどから、たとえば、バイオ燃料への関心が高まっており、おとといのワシントンポスト紙にも「農家が大きな関心を寄せ、投資を始めている」と、大きく取り上げられていました。3日前の夕方、レスター・ブラウン氏の研究所を訪問したときにも「石油が減っていく時代のエネルギー」についての話になりました。

先月レスターが出したアップデート記事を、実践和訳チームが訳してくれましたので、ご紹介します。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


石油減少時代の到来
レスター・ブラウン

『仮邦題:プランB 2.0』(PLAN B 2.0)より 2006-6号

2004年末、原油価格が高騰し1バレル50ドルを超えると、人々が世界の石油供給は大丈夫なのだろうかと注目し始め、とりわけ、原油生産量がピークに達し減少に転じる時期(ピーク・オイル)がいつやって来るのかという問題に関心が集中するようになった。この点については、専門家の意見も大きく分かれている。しかし今では、ピーク・オイルは目の前に迫っていると考える著名なアナリストが何人もいる。

石油は、農業の機械化からジェット機飛行にいたるまで経済のあらゆる面に影響を及ぼし、21世紀の文明を形作ってきた。原油生産量が減少に転じれば、それは経済を揺るがす一大事となり、人類がこれまで経験したこともないような世界が生み出されるだろう。後世の歴史家たちはこの時代を、BPO(ピーク・オイル前)とAPO(ピーク・オイル後)と表現し、区別して表すようになるかもしれない。

原油の見通しを予測するにはさまざまな分析方法がある。なかでも、石油企業やコンサルティング会社、各国政府が大きく信頼を寄せているのは、コンピュータモデルを使って将来の原油生産量と価格を算定する方法だ。

埋蔵量と生産量の関係から将来の生産傾向をとらえるというアプローチは、米国地質調査所にも籍をおいた伝説的な地質学者、キング・ハバート氏によって、数十年前に開発されたものである。

石油生産の性質からハバート氏は、新たに発見される油田の原油埋蔵量のピークと原油生産量のピークの間には、予測可能な一定の時間差があると理論づけた。そして、米国における新たな原油の発見のピークが1930年頃だったことに注目し、同国の原油生産量は1970年にピークに達すると予測したのだ。それはずばり的中した。

2つめの方法は、世界の主要産油国を原油生産量が減少しているか増加しているかによって、2つにグループ分けするというもので、こちらはより明快だ。主要な23カ国のうち、生産量がすでにピークに達したのは15カ国、8カ国は増産中である。

すでにピークを迎えたグループには、サウジアラビア以外で唯一生産量が900万バレル/日を越える米国や、1970年に生産ピークを迎えたベネズエラ、他にも北海の産油国であるイギリスとノルウェー(生産ピークはそれぞれ1999年と2000年)などが入っている。

米国の産油量は1970年に960万バレル/日でピークに達し、2004年には44%減の540バレル/日にまで落ち込んだ。ベネズエラの産油量は1970年以来31%減少している。
 
原油生産のピークをまだ迎えていない8カ国の方に目を向けると、世界のトップ産油国であるサウジアラビアとロシアが他を圧倒している。2005年秋の原油生産量は、サウジアラビアが約1100万バレル/日、ロシアが約900万バレル/日であった。そのほかにかなりの増産が見込まれる国として、オイルサンドの豊富なカナダと、石油資源開発の途上にあるカザフスタンが挙げられる。残る4カ国は、アルジェリア、アンゴラ、中国、メキシコである。

このうち最も不確定要素が大きいのが、サウジアラビアだ。同国の原油生産量は厳密に言うと1980年に990万バレル/日でピークを迎えており、現在はこれを100万バレル近く下回っている。産油量の増加が見込まれる国とされてはいるものの、その根拠はただ1つ、まだ大規模な増産の可能性があるとするサウジアラビア政府の発表だ。

しかしこれとは裏腹に、専門家の間では、同国の生産量が今後、現在の水準を大きく上回るとは考えにくい、とも言われている。古くからある油田の中にはほとんど枯渇してしまったところもあり、これを補って余りあるほどの原油を新たな油田から採掘できるのか、現時点でははっきりしていない。
 
このように分析を進めていくと、次のような疑問に突き当たる。すでにピークを過ぎた15カ国では、原油生産量が減少しつつある。では、まだピークを迎えていない8カ国の生産量は、この減少分を補うことができるほど、実際に増加するのだろうか? 

ピーク前の8カ国とピーク後の15カ国の生産能力をそれぞれ合計すると、現在のところ、ほぼ同じ量になる。しかし、前者のうちいずれか1カ国でも生産量が減少に転ずれば、世界全体の生産量も下り坂となりかねない。

原油生産の今後を予測する第3の方法は、主要石油会社の行動に注目することだ。今後の産油量増加について非常に強気な見方を示す石油会社トップも中にはいるが、各社の実際の行動を見ると、それほど楽観視している様子はうかがえない。

その証拠として挙げられるのが、主要石油会社が近年、自社株を大量に買い戻しているという事実である。例えば、2004年第4四半期に84億ドルという史上最高の利益をあげたエクソンモービル社は、100億ドル近くを自社株購入に費やしている。

シェブロンテキサコ社も、利益のうち25億ドルを自社株の買い戻しにつぎ込んだ。新たな原油発見の可能性が薄まる一方で、世界の石油需要は急速に増加している。そんな中で各社とも、自社の保有する原油の価値が今後さらに増していくことを悟りつつあるようだ。

こうした自社株買いとも大いに関係するが、2005年、原油価格が1バレル50ドルを優に超えたにもかかわらず、どの会社も石油資源の探査や開発の規模をほとんど拡大していない。ここから判断するに、石油会社もどうやら、地球上にある原油の95%がすでに発見されていると考える石油地質学者と同意見のようだ。

地質学者コリン・キャンベル氏は次のように述べる。「すでに全世界で地震探査法による念入りな調査が行われているし、地質に関する理解はここ30年で格段に深まっている。これに鑑みると、大規模な油田が今後新たに発見されるとは、極めて考えにくい」。当然、残りの5%を発見するには、莫大な費用をかけて大規模な探査や掘削を行わなければならないことになる。

このように埋蔵量が減少しているという事態は、新たに発見される原油の量と、主な石油会社の生産量との比率を見れば一目瞭然である。主要石油会社の報告のうち、2004年の原油生産量が新しく発見した原油の量を大幅に越えていたのは、ロイヤルダッチシェル、シェブロンテキサコとコノコフィリップスだった。

『地球の運命--国家と個人を絶対的に支配する地球資源(仮題)』の著者である地質学者のウォルター・ヤンクィストの指摘によれば、世界全体では2004年、305億バレルの原油が産出されたが、新しく発見されたのは75億バレルにすぎない。

私が「枯渇心理」と呼んでいる、ある種の心理状態がいつ生じてくるのか。今後数年間の原油生産に影響を与える要素の中で、もっとも計りかねるのがそれである。

原油生産がほぼピークであることを実感すれば、石油会社や石油輸出国は手持ちのストックのやりくりを真剣に考えるようになる。生産量をわずかに減らすだけで、世界の原油価格はともすると2倍にも跳ね上がる、そういう事態が明らかになると、それぞれが保持する原油の長期的な価値はさらに一層明白になってくる。

世界の原油生産が間もなくピークに達するだろうということは、地質学上の証拠からも推測できる。石油投資銀行のシモンズ・アンド・カンパニー・インターナショナルのトップであり、業界のリーダーの一人であるマット・シモンズは、新しい油田について次のように話している。

「いい計画はもう出尽くしてしまった。資金に問題があるのではない。石油会社がすばらしい油田計画をもっているのなら、既に計画に着手しているはずだ[つまり新油田を開発中のはず]」

石油業界での勤務経験があり、現在はプリンストン大学に在籍している高名な地質学者ケネス・デフェーイェスは、2005年に出た著書『脱石油(仮題)』の中で、「個人的見解だが、ピークは2005年の後半あるいは2006年初頭の数ヶ月のうちに訪れるだろう。」と述べている。ウォルター・ヤンクィストとイラン国営石油会社のA.M.サムサン・バフティアーリーも、ともにピーク・オイルは2007年と予測している。

サウジアラビア国営石油会社アラムコの深鉱開発責任者を先ごろ退いたサダード・アル・フセイニ氏の指摘によれば、世界の原油需要は、年々少なくみても200万バレル/日という勢いで成長している一方で、既存の油田からの産出量は400万バレル/日以上減少している。

つまり新たな油田から、これをカバーする以上の量を産出しなくてはならないというわけだ。「これではまるで2年に一度新しいサウジアラビアの誕生が必要になるようなものだ。持続可能とはとても言えない。」と氏は語った。


この文章の出典は、レスター R ブラウンの著書「Plan B 2.0:ストレス下にある地球と混乱する文明を救う」(ニューヨーク:W.W.Norton & Company 2006年)の第2章「オイルピークの先にあるもの」より。

さらなるデータや情報源については、ウェブサイトwww.earthpolicy.org をご覧いただくか、jlarsen@earthpolicy.orgまで英語でご連絡ください。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ワシントンの会議が終わった午後、アル・ゴア元副大統領の評判の映画"An Inconvenient Truth"を観にいきました。温暖化がテーマの、とてもしっかりした作りの科学的・感動的な映画でした。(日本で公開されたら、ぜひご覧下さい〜!)

また、2000年4月の[No.160] などから、ときどきカーシェアリングの動きを取り上げてきましたが、今回はワシントン郊外のホテル近くの地下鉄の駅でも、ワシントンのダウンタウンの地下鉄の駅でも、改札を出ると「カーシェアリングはこちら」のサインが大きく壁に貼られていて、ごくふつうに人々の足になってきたのだなあ、と思いました。

米国で手広くカーシェアリングのビジネスをおこなっているZip Carのオフィスにも立ち寄り、いろいろと話を聞くことができました。
http://www.zipcar.com/

「ガソリンの値段が上がりはじめてから、どんな感じですか?」と尋ねると、「もう大忙し!」とにっこり。

単発の「今回のガソリンの高値」というできごとではなく、「これから石油がどうなっていくか」という経時パターンを認識した上で、自分の生活でも企業でも、正しい選択・正しい変化をはやめに進めていく必要があります。

ちなみに、この「単発のできごと」ではなく「パターン」を見る、というのがシステム思考の第一歩となります。パターンを認識した後、そのパターンを生み出している「構造」を分析・診断し、望ましい変化を起こすために、どのように構造を変えていくかという「働きかけ」を考えていきます。

レスターのこの記事からも、過去のパターンと、これからのパターンが読み取れますね。こういった変化の波がやってきてから翻弄されるのではなく、先手を打って望ましい変化を創り出していくことができたら、と思います。

たとえば、いまのガソリンの高値に対して、「もっと生産への投資をすればいい」「海外からの輸入を増やせばいい」と対応するのではなく、「石油をいまほど使わなくてもよい社会」への一歩にしていくこと。米国でのカーシェアリングへの関心の高まりが、そのひとつの指標になっていくことを期待して、カーシェアリングのオフィスを失礼したのでした。

そして、日本でのカーシェアリングを広げようという事業もがんばっています!東京・名古屋・大阪のカーシェアリングをご利用できるビジター制度ができたので、出張でも新幹線で移動して、あとはカーシェアリングのクルマで行って帰ってきて、また新幹線で帰る、ということもできます。ぜひいかがでしょう?
http://www.cev-sharing.com/

横浜では住宅地にカーシェアリングの拠点を5ヶ所設けて、各1台ずつを配置するという分散配置型カーシェアリングをこの春に日本で初めて導入しています。

この分散型は、Zip Carの仕組みと同じです。Zip Carで話を聞いたときは、ひとつの拠点に置いてあるクルマは2〜3台だけど、そこここに拠点があるのでとても便利、という話でした。地図を見せてもらいましたが、地図が拠点のマークで埋まってしまうぐらい、たくさんあるのでびっくり!でした。

この分散配置型のカーシェアリングだと、「近くの駐車場に停めてあるマイカー」感覚で使うことができます。日本で事業を進めているシーイーブイシェアリング㈱によると、「欧州のカーシェアリング事業者も分散配置型を取り入れはじめている」とのこと。使いやすくなる→利用者が増える→ニーズが高まる→拠点が増える→ますます使いやすくなる......という好循環が、はやく日本でも回り始めることを期待しています。

 

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