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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年06月03日

東大五月祭のパネルディスカションより その3(2006.06.03)

 

会場からいただいた質問シートに答えました。

「外からの情報を日本に和訳していないのでしょうか」という質問をいただきました。

本や、先ほどご紹介したメールニュースで、世界の情報を日本語にして発信しています。世界には、まだまだ日本に伝わっていない重要な情報がたくさんあるんですね。取り組みレベルでも情報レベルでも。それを単に直訳調で翻訳するのではなく、人の心に伝わるように、人の行動につながるような翻訳ができる人をもっと増やさないといけないと思っていて、実は翻訳の通信講座を去年から始めています。今、40人からなる和訳チームを持っていて、特に温暖化の情報等を含め、世界の情報をいち早く翻訳して、メールニュースで伝える活動をしています。

「行動に移すためには、個人のモチベーションを上げるしかないのでしょうか」という質問です。

時間があれば、一人ひとりのモチベーションを上げていくことができるでしょうが、先ほど言いましたように時間がないので、みんなを説得することはできない。そうではなくて、モチベーションがなくても、みんなが環境にやさしい行動をするようにしなきゃいけない。

そのためには仕組みを変えることだと思います。いちばん簡単なのは値札を変えることです。値段が安ければみんな買います。それが環境にやさしければいいわけですよね。ですから、環境税というのはそういう点でも大事だし、もしくは私たちの幸せとか気持ちよさに対する考え方を変えていくこともできます。

何年か前まで、コピー用紙って真っ白だったのを覚えていますか? 今は白色度70といって、目にやさしい色になっていますね。あれが出てきた時に、「こんなの、使えるか」って、みんな言ったわけです。「紙は真っ白がいい」と。でも今は、あの真っ白の昔の紙を見ると、「こんなの、まぶしくて使えない」と、みんな言っています。私たちが考えている価値観、幸せ感って、結構、簡単に変わるんだと思うんです。

変化の担い手というのは、一人ひとり説得する人も必要ですが、みんなが気がつかないところでそうやって仕組みを変える、価値観を変えるようなきっかけや仕掛けをしていく人かなと思っています。

次に、「NGOやこういった活動を起こす人は、ほかの仕事をする人よりもお給料が低い。こういう人たちがちゃんと活動していけるにはどうしたらいいか」と質問をいただいています。

これも幸せ感のシフトに関連しているかもしれません。私たちのNGOにも、大手の企業を辞めて専従になりたいと言って来てくれた人がいます。お給料、かなり減ったはずです。私も通訳だけやっていた時代から比べて、こういう活動をするようになって、年収は4分の1になりました。でも、今のほうがずっと幸せだし、やりがいがあります。それで暮らしていけるなら、それでいいんじゃないかなという人は今、かなり増えてきているんじゃないかなと思います。

もちろん、税制の控除であるとか、私たちが寄付する習慣なども変えていく必要はあります。たとえばアメリカでは、1年間に国民の40%が環境NGOに寄付しているといわれます。それに比べると、日本はとても厳しいです。そういうことを変えていく必要はありますが、それを待ってから変えるのでは遅いかもしれない。

それから「ビジョンの大事さはわかるんだけれども、ビジョンに自信が持てない。もしくは確信が持てない場合はどうするんでしょうか」というご質問です。

これは、"エダヒロの相対性理論"というのがありまして。どういうことかと言うと、確信が持てる、「絶対これだ」というのはほとんどないと思っているんですね。私はいつも、「あれよりはこっちだよね」と、相対的に選んで進んでいます。それで進んでいって、もしかしたら、それよりももっと「こっちだよね」と思うのが見つかったら、どんどん変わっていっちゃいます。

私のことをアメーバと呼ぶ知り合いがいるんですが、アメーバでいいと思っています。なので、ビジョンに100%確信持ててから進めようというんじゃなくて、「あれよりはこっちだよね」「南よりは北だよね」と思ったら、もう進んじゃえばいいと、私はそう思っています。

「変化の担い手を大量生産することは可能なのでしょうか。日本の人口でいうとどれぐらいなのでしょうか」という質問です。

変化の担い手を大量生産することが可能かどうかということは、実は考えたことありません。必要だと思い、やりたいと思ってやっているだけなので。可能かどうかはわかりませんが、私は可能だと思ってやっています。

今、私が考えているのは、ほんとうの意味でビジョンと変えるスキルを持った人が200人日本に生まれれば、日本は変えられると思っています。その200人が育つお手伝いをしたいと思っています。

システム思考の話をしました。つながりを考える。全体像を見る。このシステム思考を、「読み書き・そろばん・システム思考」というぐらい、普通の人にも、小学生にもおばあちゃんにもわかってほしいと思い、そのための活動も少しずつ進めています。システム思考という言葉は知らなくても、つながりとか全体像とかを考えて行動できる人は、2,000万人ぐらいを目指しています。

あとは、システム思考のワークショップについて、いくつか質問をいただいていますが、これは「チェンジ・エージジェント」もしくは「システム思考」と検索していただくと、私たちの会社に来ていただけますので、こちらで情報を取っていただければと思います。今はビジネス向けのコースも実施していますが、もうひとつの会社のイーズでは、自分が変わりたいという個人向けに「システム思考を使って、自分の成長に役立てる」というコースもやっています。

個人向けのコースでは、自分のこれまで変えたかったけど変えらないことなどを、システム思考的に分析してやるんですね。それで、長年できなかったダイエットに成功して減量できたとか、早起きがずっとできなかったのができるようになったとか、散らかって困っていた机の上が整理できるようになったという人たちがいます。

恋愛ループというのを描いた人がいて、どうして彼といつもうまくいかないかということを、ループ構造で分析して、どこをどう変えたらよいかを考えました。そのあと、うまくいっていると報告をもらっています。個人にも役立つシステム思考ということです。

最後に「行動、変化に関して、教育を受けている立場の学生の可能性をどう思いますか」という質問です。

私は、変化をつくり出すためには、変えたいという心、思いの部分と、現状がどうなっていてどちらに変えるべきか、それをちゃんと頭で考える頭の部分と、そして思いつきだけではなくて動かし続ける、動き続ける体の部分と、心と頭と体と三位一体、必要だと思っています。

学生さんは、そういった意味でもとても可能性があると思っていますが、残念ながら、今は、全体を見るとかビジョンを考えるとかいうことなく、タコツボにすぐ入っていってしまうような教育制度になっています。

たとえばアメリカやヨーロッパではしばしば、専門分野に分かれる前にシステム思考を教養学科で勉強します。全体がどうつながっているのか、自分がやろうとしていることはどこに位置づけられるのか、わかってからタコツボに入るんですね。日本は今、それをやっていません。

なので、今の教育制度の中だけで勉強しようというのではなくて、こういうところもそうですが、外に出ていただく。NGOとも付き合う。ビジョンを考える。そしていろんなつながりを見る。こういったことをやりながら、学生の立場でできること、可能性を花開かせてくれること、たくさんあると思います。

最後のメッセージということですね。

いろいろな環境にかかわる活動をしていますが、私はとても楽しいと思ってやっています。やりがいもあるし、一つ一つやっていることがわくわくして、ほんとに楽しいと思ってやっています。

たまたまおととい、レスター・ブラウンと夕食を食べていたんですが、レスターもいつもそう言います。彼は講演などではまじめな顔をしてしゃべっていますが、そうではないときには、「ほんとに今、楽しい、やりがいのある時代だよね」とよく話します。もちろん、立ちはだかっている問題は大きいし、レスターのように30年、40年前からああいう活動をしていると、どんどん悲観的になってもおかしくないのですが、でも彼は心からそう思って、前向きにやっています。

今日から、明日からできることということで、一つお伝えしたいメッセージは、「100人の村」というお話を書いたドネラ・メドウズさんのメッセージです。私は彼女がつくった国際的なネットワークに入っているんですが、100人の村も一つの可視化ですよね、地球というのを目に見える形にしてくれた。

ドネラさんが、私が訳した『成長の限界』という本の中で、持続可能な社会をつくるために私たちができること、すべきこと、五つ挙げています。ビジョンを描くこと。ネットワークを広げること。真実を語ること。学ぶこと。そして、慈しむこと。

今日ここに来てくださったこと自体、学ぶことであり、ネットワークを広げることなのだと思います。今日の話で「面白い」「なるほど」と思ったことを、安井先生もおっしゃったように、ぜひいろいろな所で伝えていっていただけたらうれしいです。ありがとうございました。

 

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