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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年06月03日

東大五月祭のパネルディスカションより その1(2006.06.03)

 

先週末に、東大の五月祭に呼んでいただきました。

「持続可能な社会の構築に向けて」〜Sustainabilityの第一人者達によるパネルディスカッション〜 ということで、安井至先生、住明正先生、そして、キャンドルナイトをいっしょにやっている竹村真一さんといっしょに、それぞれ20分話したあと、会場からの質問シートに答え、メッセージを送る、というパネルでした。

自分がしゃべった部分をボランティアの方にテープ起こししていただいたので、ご紹介したいと思います。3本目が質疑応答の部分となります。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

皆さんこんにちは。4人目の枝廣です。

今、先生方が、かなり専門的な話をとてもわかりやすくしてくださったと思います。私は、4人のパネリストの中でも活動側に携わっていることが多いので、そちらのほうからお話ができればと思っています。

私は、先ほどご紹介いただきましたが、教育心理学の出身です。カウンセリングの勉強をしていました。大学院を出たあと就職をして、普通のOLをやっていたのですが、29歳で一念発起して英語を勉強して通訳者になりました。そのあと環境の分野に入って、今は環境ジャーナリスト、NGOの共同代表、ほかに会社を二つ持っていて、社会的起業家というような活動をしています。

今になっても、大学の時に勉強した心理学が、今の私の活動の基盤だなと思っています。「環境心理学」と呼んでよいのかわかりませんが、心理学的な手法を使って環境問題を解決するような分野をつくっていきたいと思って、今、いろいろと実験をしているところです。

ずっとさまざまな活動をしていますが、私のキーワードは「つながり」です。私の活動は多岐にわたっているとよく言われるのですが、すべて「つなげる」ことが目的です。自分自身の活動をご紹介しながら、何を考えてきたのか、そして今何を考えているのか、お話しできればと思っています。

通訳になってから、レスター・ブラウンやそのほか、世界の環境の第一人者とのつながりを得て、彼らのいろいろな情報とか考えを日本に紹介する活動を始め、それから自分自身も勉強して、企業とか自治体とか市民団体に対して、講演やコンサルをしています。

本や翻訳書も出していますが、1999年に環境メールニュースというのを始めました。これはまだ、メルマガという仕組みもないころでした。環境の通訳の仕事を始めて、いろいろな世界の第一人者のおもしろい話が聞ける。でも、通訳で自分だけで聞いているともったいないなと思ったので、それを環境に興味のある方にお知らせしよう、おすそ分けしようと思って、メールニュースを始めました。

最初18人、「じゃあ、読んであげるよ」と言ってくれた友だちに送って、今、口コミで広がって7,800人ぐらいの方が登録をして、情報を読んでくださっています。情報を出し、そこからまた情報をもらって、各地で何が起こっているのか、みんなどういうふうに思っているのか、そういうことをまたニュースという形で提供するというような活動を、これはまったくの趣味ですが、やっています。

先ほどご紹介いただいた、ジャパン・フォー・サステナビリティというNGO、これはもうじき4年になりますが、2002年の8月に立ち上げました。通訳をやっていて、世界のいろんな情報は日本に入ってくるのだけど、日本のいろいろな活動とか、たとえば江戸時代は循環型だったとか、日本のいろいろな自然と共生する知恵とか、全然世界に伝わっていないということがよくわかりました。なぜならば言葉の壁があって、日本の情報は日本語なんですね。それでは、世界の人にとっては「ない」に等しい。やはり英語にして伝えないといけないと思って、仲間と一緒につくったのが、ジャパン・フォー・サステナビリティという組織です。

このNGOは、ミッションとして、日本のいろいろな取り組みを英語にして発信していますが、同じ情報をすべて日本語でも出しているので、皆さんも検索していただくと、さまざまな日本の活動がわかると思います。具体的にはWebサイトで毎月30本、ほとんど1日1本ずつですが、日本のいろいろな情報を提供しているのと、ニュースレターを毎月出しています。今、181カ国の約8,000人の方が私たちのニュースレターを登録してくれていて、毎週、毎月、私たちの情報を受け取ってくれています。

それから日本のビジョン--「持続可能な日本って、どういう形なんだろう?」これは残念ながら政府からは出てきません。私たちはNGOとして、日本のビジョンを研究者や一般の方や学生さんたちと、みんなで作っていく場をつくろうという活動もやっています。

ビジョンといえば、去年の秋ですが、スウェーデンの政府が「私たちの国スウェーデンは、2020年までに石油を使わない国になる」という宣言をしました。2020年には石油を使っていないという、スウェーデンのビジョンがあるんですね。そのためにどうするということを今、さまざま施策にしています。

ほんとうは日本も、「2020年には、2030年にはこういう国にしたいんだ」ということが出てこないといけない。今、政府も自治体も企業も市民団体も、みんな一生懸命やっているのだけど、「どこに向かっているのか」という共通認識がないので、活動のベクトルが合わない、もしくは、だれもやっていなくて足りない活動がある。そこのところを何とかできないかと思って活動しています。

ご存じの方も多いかもしれませんが、日本でNGOを運営するのはとても大変です。アメリカやヨーロッパだと、NGOに対する寄付など、いろいろな支援がありますが、残念ながら日本は、そういった意味でのNGOを支える社会的基盤がまだ発達していません。

私たちのNGOは専従スタッフが2人いて、小さいNGOにしては恵まれているほうだと思いますが、あとは350人のボランティアの方々がみんなで力を貸してくれて、活動しています。20ぐらいのチームに分かれて、それぞれ自分の得意なところで、たとえば、英語が得意な人は英訳チームに入るし、新聞を読むのが得意な人は、日本中のいろいろな情報を拾ってくるチームで、協力してやってくれています。

私たちの活動はほとんどメールベースなので、企業の人も主婦も学生さんも、地方に住んでいる人も、海外に住んでいる日本の人も参加をしてくれています。今日はあまり時間がないので話せませんが、この活動自体も、私は一つの新しい実験だと思っています。「自己組織化」というんですが、上から何か指示を出してみんなで動くという形ではなくて、それぞれのチームがそれぞれで進化していく。そして、全体としても進化していく。この自己組織化の仕組みを今ここで工夫しながらつくっているところです。

NGOの活動のほかに、会社も経営しています。ひとつは2年前につくったイーズという会社です。この会社のモットーは、「自分を変えることができれば、社会も変えられる」ということです。

今日は「変える」ということをテーマにお話をしますが、「変えたい」「何とかしなきゃ」と思っている人は今、すごくたくさんいるんですね。実際に、その思いだけではなくて、変えるためのスキルや方法論、ツールを提供していきたいと思っています。熱い思いで始めたけど、どうやってそれをみんなに伝えていいのか、どうやって働きかけていいかわからなくて挫折している人たちをたくさん見てきました。「自分を変えることができれば、同じ変えるスキルを社会にも使える」と思って、イーズは個人向けに自分を変えるようなコースやワークショップを行っています。

もう一つ、「お金の流れを変えることで社会を変えたい」思って、とても小さいのですが、オンライン・ショップを持っています。お金というのは社会の血液ですよね。私たちが伸ばしたい、もっと増やしたいと思うところにお金を流すこと。これはやめてほしいと思うところにお金を流さないこと。そうしないと社会は変わっていきません。

マイ箸や間伐材を使った商品を販売しています。これは「きのころ」という、企画商品ですが、間伐材の切れ端を積み木の大きさに適当に切ってもらって、紙ヤスリと組み合わせた商品です。それで自分で削って積み木をつくる。その時間とか、木の手触りとか、香りとかを楽しんでもらおうという商品です。

エコプロ展でブースをやったのですが、子どもたちが本当に一生懸命楽しんでくれて、こうやって木に触れたり、自分で働きかけて形を変えていくという体験を、子どもたちはあまり持っていないのだなあ、と思いました。こんなことも一つの「つなぐこと」、森と人々をつなぐという活動としてやっています。

もう一つ、昨年、チェンジ・エージェントと会社を同僚と立ち上げました。この活動を少し説明したいと思います。現状を考えたときに、あちこち講演に行ったり、いろんな方と話をしていて、よく思うのですが、ほとんどの人はもう、何が問題かわかっています。たとえば温暖化とか。それに対して、どうすべきかもわかっています。たとえば省エネをしなきゃいけないとか、ライフスタイルを変えなきゃいけないとか、交通移動はこれまでみたいに自動車ばかり使ってはいけないとか、わかっている。

解決に必要な技術も、もうほとんどはあります。たとえばエネルギーを替えたかったら、化石燃料じゃなくてソーラーや風力や地熱やバイオマスや、そういう技術はもうありますよね。問題はわかっていて、解決策もわかっていて、そのための技術もあるのですね。

いつも思うんですが、日本はみんな一生懸命やっているんですね。自治体も一生懸命、企業も一生懸命、消費者も、そしてNGOも一生懸命、それぞれやっています。日本ほど、圧力がかからないのに一生懸命やっている国はないなと、産業界を見てよく思うのですが、それなのに現状は悪化しています。

先ほどほかの先生からもお話がありましたが、日本の二酸化炭素の排出量も減っているわけではないのですね。どうしてこれだけわかっているのに、みんな一生懸命なのに、問題が好転していないのか? 足りないのは何なのか? 今必要なことは何か。

一つは、「情報や知識を行動に変えていくこと」だと思います。私たちがどんなに地球の現状や原因を理解したとしても、頭でわかっても、それは地球を救うことにはなりません。行動を変えない限り、地球に対する影響を減らすことができないんですね。

変化をつくり出していく人を英語で「チェンジ・エージェント」と言うのですが、チェンジ・エージェントという会社は、変化の担い手を大量生産することを使命としてつくった会社です。

「大量生産」というのは、先ほどもお話がありましたが、環境問題は時間の問題だと思うからなのです。もし、時間が無限にあるとしたら、環境問題は全然問題じゃない。解決できます。でも今、刻々と残された時間が減っている。そうしたときに、自分が変わるだけではなくて、自分たちが変わるだけじゃなくて、どんどん変化のうねりを、ドミノのようにわっと広げていく仕組みをつくらないと、間に合わないのではないかと思っています。

自分が変わる--もちろんそれが第一歩ですが、では、どうやって広がりのある形で「変化」を創り出していくか。そしてそのためには、これはとても大事なポイントですが、どういうコミュニケーションのしかたをすれば、人は変わるのか、動くのか?

心理学を勉強してきたと、先ほど申し上げましたが、心理学というのは、人はなぜ動くのか、人はなぜ変わるのかを研究する学問なんですね。それをもっと使っていきたい。残念ながら、心理学をやっている人は、あまり持続可能性の問題に取り組んでいないのですが、心理学の知識で使えるものはたくさんあるはずだと思っています。そうして、「変化の担い手を大量生産する」活動をしたいと思っています。

 

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