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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年05月15日

「第3回朝日環境フォーラム」より田中優さんのお話 その1(2006.05.14)

大切なこと
 

3月3日に開催された朝日新聞社主催の「第3回 朝日環境フォーラム」で、パネルディスカッション「エコな社会の新しい仕組みづくり」のコーディネータを務めました。

パネリストとして、飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長、日本総合研究所主任研究員)、佐藤博之氏(グリーン購入ネットワーク事務局長)、田中優氏(未来バンク事業組合理事長、ap bank監事)の3氏をお迎えし、単発の取り組みにとどまらない「しくみ作り」という、私にとっても大事だと思い、大変興味のある話題で、ディスカションをおこないました。

とても興味深いお話をうかがうことができ、当日参加できなかった方々にもぜひお伝えしたいとお願いして、ご快諾をいただきました。田中優さんのお話から、ご紹介したいと思います。(今回は最初にそれぞれからお話いただいた部分です)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

田中優といいます。私自身は、中心的には三つのことをやっています。一つが今日ご紹介いただいている、未来バンク事業組合、要は市民が勝手にバンクをつくっていくという動き、金の問題です。もう一つやっているのが、省エネと自然エネルギー、地球温暖化の問題。そしてもう一つやっているのが、国際的な途上国の深刻な貧困の問題です。

その中の、今日はお金の話に中心的なスポットを置いてお話をしたいと思います。私のお話は、ここでやや長めに時間をもらいまして、問題点、そしてどういうふうに解決していくかを、具体的な方策まで、ここで一気に話をしたいと思います。

まず、私たちの預けている貯金の実際ですけれども、ここに写っているのは静岡空港。世界の中でも非常に珍しいほどお金のかかる空港です。ほとんど赤字になることが、今の時点でも明らかな状態のものですが、こういうものがなぜつくれるのか。

実はここには、私たちの郵便貯金、簡易保険、年金のお金が使われているからです。これをまとめて財政投融資、「財投」といいますけれども、その財投の使い道を見てみると、私たちが気にしているダム、河口堰、スーパー林道、原子力発電所、こういったありとあらゆる環境破壊が、これを資金源にやられています。

ということは、私たち市民のやっている運動というのは、もぐらたたきゲームに似てきちゃうんですね。こっちに問題が出てきたというとたたきに行く。ところが、コインを入れているのは自分自身ですので、より悪い、次のプロジェクトが成り立ってしまう。またたたきにいくという、そういう構図になってしまうのです。

次は軍事費ですが、今、世界の軍事費を見てみると、毎年ぐいぐい伸びています。つまり世界は今、戦争に向かっているという状態にあるんです。でもそのうちの半分は、実はアメリカが出しています。アメリカの軍事費は一体どこからお金が出ているのか。

アメリカは財政赤字なので、よそからお金を借りてこないとできません。そのお金の出所を見てみると、このアメリカ国債を買ってあげているお金の38%が、この日本から買っているという構図になっています。

この流れを追いかけてみると、日本の国債、政府短期証券から流れていまして、それをいちばん買っているのは日本の銀行になっています。ということは、私たちの銀行預金が、イラクの人たちの頭の上にミサイルを届けるという構図になっているということです。

それらを一つにまとめて考えてみると、私たちが良かれと思い、未来のためだと思って貯金しているお金が、未来を粉々にしているというふうに見ることができます。私たちが「環境破壊はよくない。環境を守ろう」「戦争はよくない。平和にしよう」と口で言ったとしても、口で言ったことは何一つ実現しません。実現
していくのは、私たちがお金でやったことです。

ですので、私たちは未来を決めているんです、貯金をすることによって。その貯金をどこで預けたかによって、直ちにそれは現実化します。お金でやったことは現実化する。ですから、戦争は私たちの貯金の結果であり、環境破壊は私たちの預金の結果だと見ることができるわけです。

では、どうしたらいいんだと考えるときに、私は三つの方向性があると思っています。一つはタテの動き。自分自らが政治家になるなり、政治家に影響を及ぼすなりして、下から上、上から下に動かすことです。もう一つはヨコ。ムーブメントを起こして、みんなで運動を広げて社会を変えていこうという動き。

従来は、このタテとヨコを努力して、どうにもならないと、やっぱり駄目かという形であきらめていたんですけれども、私は三つ目、ナナメの方向というのがあると思っています。それは、まったく別な仕組みを考えついて、自分で現実にやってしまうことです。

そして私自身は、今日のテーマであるお金について、未来バンク事業組合という、市民が勝手につくるバンク、しかも専従もいない、ボランティアだけでやっているというバンクを12年前、94年に立ち上げています。たった7人で、400万円を出資し合ってスタートさせました。

周りじゅうはもちろん「すぐつぶれる」と言ったんですけれども、意外なことに今まで続いていて、400万円だった出資金が、今はもう1億5,000万。そして融資をした額は7億に及ぶ状態です。貸し倒れはこれまでのところゼロ。これから1件発生しそうですけれども、今までのところゼロ。貸し倒れ引当金が500万円あるというような状態になっています。

融資先は、環境にいいことか、福祉か、市民が社会をつくろうとする市民事業か、その三つにしか貸しません。金利は固定の3%、単利です。ですので、複利のように金利が金利を生むということは一切ないというバンクをつくっています。

これを私たちが12年前に始めて、10年ぐらいたつころから、意外なことにつぶれていないということで、ほかの地域でも、同じことをやってみようかという気運が広がってきました。

東京ではコミュニティパワーバンク、ap bank、神奈川には女性・市民信用組合設立準備会、北海道には北海道NPOバンク、長野には夢バンク、新潟には新潟コミュニティバンク、名古屋にはコミュニティ・ユース・バンクmomo、そして明日、岩手には、いわてコミュニティバンクというのが、各地域に立ち上がるとい
う状態になってきています。

そういう中で、一つ非常に有名になってきたのがap bankです。これは出資した人が有名なんです。ap bankを出資したのは坂本龍一さん、Mr.Childrenの櫻井和寿さん、音楽プロデューサーの小林武史さん、この三人だけが出資して、環境を中心に市民が何か事業を起こそうとするものに融資をしています。

去年それが大きなイベントを仕掛けました。今年もやることが、昨日発表になりましたけれども、ap bank fesというのをやります。これは2万人集まるコンサートで、それを3日間連続でやるというものです。面白いのは、人寄せパンダでアーティストが集まるのではなく、アーティスト自分自身の発意でこのようなイベントが開催されていることです。これは多分、世界でも例がないことだと思います。

こうした融資を現実に、どういうふうに応用できるかというのを、ここから紹介したいと思います。まず日本の二酸化炭素排出全体の8分の7は、家庭以外の事業者が出しているんです。残りの8分の1を出している家庭が、まるですべての原因であるかのように言われますが正しくありません。

その家庭の中で、排出量が最も大きいのは電気でして、次が車です。ですから、電気と車について、いかに省エネをするかというのが第一に重要です。

その電気ですけれども、電気消費の中には、家電の四天王がいるんですね。この四天王が3分の2を食ってしまいます。エアコン・冷蔵庫・照明・テレビの四天王です。この四天王を省エネすると、3分の2の部分を減らすことができることになるわけです。

その四天王の製品がどれくらい省エネしたか、というのをグラフにしたのがこれです。95年を100として現時点で見ると、冷蔵庫は何とマイナス80%。ほかの製品もほとんど半分まで減らしているというというのが現実です。ですので、省エネ製品を選ぶだけで、努力・忍耐をしなかったとしても省エネは可能だというのがわかるわけです。

そこで私たちは、これを融資するという形で実現します。「省エネ冷蔵庫に買い替えたい人」というふうに聞くと、「買い替えたいです」という人が出てくる。そうすると、計算でどれだけ減るかというのを出すわけです。

これまでの冷蔵庫のドアの内側に表示されている消費電力量が67kW/月であれば、それに12ヵ月掛けて、さらに99年3月以前に製造のものは、省エネ基準が変わっているので1.6を掛ける。そうすると1286.4Kwh、1年間に電気を食う。現在の省エネ冷蔵庫は180しか食いませんので、差し引きで言うと、1106.4kW/h減る。これを電気料金に換算しますと、22円掛けてやると2万4,340.8円、1年間に電気
料金が安くなる。

それを私たちは融資をします。上限2万円で5年間、つまり10万円融資する。そうすると冷蔵庫を買えちゃうんです。そうすると、本人は冷蔵庫を買い替えると電気料金が1年間で2万4,000円安くなる。その中から2万円ずつ返すわけです。

そうすると5年で返済が終わって、その後は安くなった電気料金を払うだけでいい。つまり、買い替えた人はただで手に入れて、エネルギーを節約して、電気料金も得して、最終的に経済的にも得をしてしまうという仕組みがつくれるわけです。

ところが、それをやってみたんですが、問題もあります。というのは、ここに「さば読み度」と書いてあるんですが、メーカーごとにカタログ値と実績値が違うんです。ちょうど不動産屋みたいに、非常にさば読みをするメーカーと、さば読みをしないメーカーが実はあったんです。この棒グラフのほうが、実際に消費した電気の量。折れ線グラフのほうはさば読み度です。見ていただいておわかりのように、さば読みの少ないところと、さば読みの多いところが歴然としてきます。

このさば読み度を、われわれ実際に全部データに取りました。そして、そのさば読みは問題だと審議会にデータを提出しました。その結果、この5月からはさば読みが禁止になりました。ですから5月以降は、実際の値に近いカタログ値が出てくることになります。

実際にはどうなのだというのが気にかかるところです。これは私の家です。ブルーの線がおととし、去年が赤い線で、赤い線のほうがだんだん増えて、うちは電気の消費量が増えていたんですね。子どもが3人いて、うち2人が大学生という中で、どんどん消費量が増えていた。でも、冷蔵庫を買い替えた直後から、その前の年を割り込んでいくんです。そして、緑の線がその翌年ですけれども、さらに割り込んでいってくれた。トータルで見ると、1年間に2万5,000円、電気料金が安くなりました。

これは実は、想定していたよりも減り方が大きいんですね。なぜこれほど減ったのかと思ったんですが、実は、さば読みの大きいS社から、さば読みの少ないH社に切り替えたという、さば読み度の違いのせいで、より以上に省エネができてしまったというのが実際でした。こうやって、現実に得をしながら省エネをするということが、融資の仕組みを入れることでできちゃうわけです。

ところが一つだけ引っ掛かるのは、今動いている冷蔵庫を取り替えちゃうなんて、ということです。ところが調べてみました。冷蔵庫は平均12年間使われて、エネルギーの91.4%が電気として、動いている最中に使われていたんです。

その次に大きいのが、素材、鉄とかを掘って精錬する7%でした。冷蔵庫を捨てるときのエネルギーは0.3%でした。今の冷蔵庫を使い続ける場合と、新しい冷蔵庫に買い替えた場合とを比べると、1年4ヵ月たつとプラスになるんです。

ということは、買い替えたとしても、1年4ヵ月以上使ってもらえればプラスになるということがわかりました。ということで、私たちは、1年4ヵ月以上使ってくださいねということで、省エネ冷蔵庫に買い替えたい人には融資をしています。

この中でもう一つ、調べていって、もっと効果が出るなというのを見つけました。沖縄のエアコンです。10年以上、古いエアコンを使っていらっしゃる方に、新しい省エネ型のエアコンに買い替えてもらうと、1年間で電気料金が5万円安くなります。2年間で元が取れてしまいます。ですから、そういう買い替え事業を市民が起こして、そこに融資の仕組みを入れていけば、たとえ1万円ずつ、それぞれの買い替えた世帯に渡したとしても黒字にできるんですね。

こうした融資を入れた仕組みは、実は、省エネ住宅などにも使えるんです。省エネの住宅に買い替えた。でも最初のコストは500万円ぐらい高くついた。でも高熱水費が安くなるんですね。半分ぐらいに減ります。そこのローンの部分に500万円余分にかかった分を入れていくと、長期的にプラスになるという仕組みをつくっていくことができます。

そうすると、経済的にプラスになりながら、エネルギー的に、環境的に良くすることができるようになっていく仕組みをつくることができます。

こういうことをやっていけたとしたら、私たちはお金を使って、お金をいい方向に向けていくことができます。そのときに大きなことが二つ起こります。一つは従来の悪い方向にお金を流さずに済むということ。もう一つは、新しい社会をつくっていくことに自分のお金を投資することができるということです。

私たち、今までは、お金について、環境や人権を考えてこなかった。意志をそこに込めるなんてことはまったく考えてこなかった。これからは、お金に意思表示をさせるということが重要になると思います。お金に意志を持たせる。

「私は環境破壊が嫌だから、お金に環境破壊をさせません」「私は戦争が嫌だから、私のお金は戦争には使わせません」という使い方ができるだろうと思います。

もしそれを世界中がしたらどうなるか。もし、軍事費をそれ以外のことに使ったらというグラフをお見せしましょう。途上国の深刻な貧困。その一番の原因は借金地獄です。その借金を全部チャラにしましょう。世界中の兵器を全部捨てちゃいましょう。そして、世界中の飢えた人に食べ物をあげましょう。

こういったことを国連などが出しているデータで全部並べて、国連が必要としている金額を全部入れました。1年分の軍事費を使って、そこに使ったらどうなるか。2099億ドルおつりが来るんです。

ということは、気づいてみると、私たちの地球という惑星は、お互いを殺し合うためにお金を使おうと決めた惑星だということですね。これを、お互いに助け合うためにお金を使おうと考えたとしたら、1年分の軍事費でおつりが2099億ドルもきちゃう。

それをせずに、お互いに殺し合うことばかりにお金を使ってきた。これは愚かなことではないだろうか。これを是認するのであれば、私たちは環境破壊そして戦争によって、みんな滅びていくことになるのではないかというふうに思っています。

というのは、二酸化炭素排出量で計算してみると、軍事によって出されている二酸化炭素は、世界第6位の国になります。ということは、私たちが軍事を除いてCO2を減らしましょうとやっていったとすると、最終的にCO2は確かに各国が減らした、でも、軍事の二酸化炭素によって私たちは滅びたという結果になるということです。

それがもし嫌なのだったら、軍事を別枠にせずに、きちんと二酸化炭素を減らしていくということをさせていく。そして私たちのお金にその意志を持たせるということが、どうしても必要なのではないかと、私は思っているということです。ありがとうございました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

田中優さんの歯切れのよいお話が少しでも伝わったら、と思います。優さんはデータ魔といえるほど、データを集め、分析し、だれも気づかなかったようなあっと言うような切り口で、物事の本質を見せてくれます。優さんの鋭いお話や本はいつもとても勉強になります。また「伝え方」という点でも学ぶことが多いです。

優さんが最近出したブックレットをご紹介します。今回の話をもっと詳しく、データや分析なども抱負に交えてわかりやすい文調で読ませてくれる本です。ぜひどうぞ!


『戦争って,環境問題と関係ないと思ってた』
-平和をあきらめたら、地球に誰も生き残れない
    480円+税 (岩波ブックレット)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4000093754/junkoedahiro-22/503-7488817-3088764

<著者自身の紹介文>

平和をあきらめて、環境問題の解決だけ進めたらどうなるか--それを真剣に調べてみました。やっぱり人類は生き残れません。ではどうしたら戦争を止められるのか、戦争の原因はどこにあるのか--それを調べた結果は、エネルギーの問題と金儲けの仕組みにありました。どちらも私たちの生活と密着した問題です。ところが戦争の現実は、エネルギーや金儲けのフィルターを通して見ると現実感がなくなります。このままでは戦争の悲惨さを実感したり、その悲劇に共感したりすることもできません。

では、どうしたら戦争の悲惨な現実に共感できるのか、戦争をさせないために、どう社会を組み換えていったらいいのか。それを一緒に考えてほしいと思います。そのきっかけになる一冊のつもりで書きました。ぜひ手にとって見てほしいと思います。

あきらめずに平和を求めることは、環境問題の解決にもつながるのです。

 

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