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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年04月01日

レスター・ブラウン『プランB 2.0』より(2006.04.01)

温暖化
 
レスター・ブラウン氏は、『プランB―エコ・エコノミーをめざして』という本を出して、「このままの現状維持を続けるプランAではなく、新しい経済を作り出すプランB」の道筋を明らかにしています。 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4948754161/ref=ase_junkoedahiro-22/249-2919328-9475557 昨年11月の[No.1144] で > レスターは「プランB 2.0」という本を来年1月に出します。目次はこちら。 > 第1章がダウンロードして読めるようになっています。 > http://www.earthpolicy.org/Books/PB2/Contents.htm > (出版後はすべての章を無料でダウンロードできるようにすると言っていました) と紹介しましたが、英語版の『プランB 2.0』が予定通り1月に刊行されています。数ヶ月のうちには日本語版も出版されると思いますが、英語版の紹介ページを、実践和訳チームのメンバーが訳してくれましたので、ご紹介します。(日本の話も出てきます) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 炭素排出量の削減 http://www.earthpolicy.org/Books/PB2/PB2ch10_intro.htm レスター・R・ブラウン いつだったか息子のブライアンから電話があった時、テキサス州西部を走る州間高速道路を運転中に、新しい巨大なウィンドファームに遭遇したという話になった。 風力タービンが地平線に向かって列を成し、その間に油井が点在していたという。風力タービンがくるくると回り、油井のポンプが上下に動く。息子は、古きものと新しきもの、過去と未来が混在する姿に魅了されたという。 「30年後に同じ場所を訪れたら、風力タービンは回っているだろうけど、油井のポンプはもう動いてないだろうね」と私は言った。つまり、息子が見たものはエネルギーの変遷、化石燃料時代から再生可能エネルギー時代への移行だったのだ。 エネルギーの変遷は、勢いを増すばかりである。1997年に京都議定書が採択された時、先進国の炭素排出量を2012年までに1990年比で5%削減するという案は、壮大な目標のように思われた。 今では、それは時代遅れで極めて不十分なものである、というのが大方の見方である。各国政府、地方自治体、企業や環境団体が現在打ち出している計画は、再生可能エネルギーへの移行やエネルギー効率の向上によって、京都議定書で合意した数字よりはるかに多い炭素排出量の削減を目指すものだ。 科学者によれば、気候を安定させるには炭素排出量を70%削減しなければならないのだが、どうやってそれを達成させるかを考える人や団体も出てきている。 欧州委員会は2005年7月、エネルギー消費量を2020年までに20%削減し、欧州のエネルギー供給量のうち再生可能エネルギーが占める割合を、2010年までに12%まで拡大するという新計画を提案した。この2つの計画を合わせると、欧州の炭素排出量はほぼ3分の1削減されることになる。 欧州各国で、古くて効率の悪い冷蔵庫の買い換えや高効率の電球への切り替え、屋根の断熱など、エネルギー効率を高めるために数々の方策が挙げられている。再生可能エネルギーのシェアを拡大する目標を達成するには、やや控えめに見積もっても、さらに1万5,000メガワットの風力と、現状の5倍のエタノール生産量、3倍のバイオディーゼル生産量が必要になる。 エネルギー消費量を2020年までに20%削減するという欧州委員会の提案は、現状維持ではエネルギー消費量が10%増となるという予想とは対極をなすものである。 この提案された計画が最終的に承認されるのは2006年の予定だが、実行されれば2020年までに600億ユーロ(約8兆5,000億円)が節減されることになる。また、この計画では、経済成長を促し、新たな雇用を生み出すほか、エネルギー費節減により世界市場で欧州の競争力を高めることも狙っている。25カ国から成る欧州連合(EU)のエネルギー消費量は、米国に次いで世界第2位なのだ。 日本は、経済活動におけるエネルギー効率がすでに世界最高水準にあるが、日本政府は2005年、これをさらに大幅に高める全国キャンペーンの実施を発表した。政府は、国民に対して、旧式で効率の悪い電化製品の買い換えや、ハイブリッド車の購入を促している。 ニューヨークタイムズ紙は、これを「エネルギー消費量を減らし、地球温暖化と闘おうという愛国的な動きの一環」と評している。この記事によると、大手メーカーは、こうしたエネルギー効率化の波に乗って、エネルギー効率の高い最新モデルの売り上げを伸ばそうとしているという。 こうした動きに加え、日本は電化製品のエネルギー効率化をさらに進めるための目標も設定した。消費電力を、テレビは17%、パソコンは30%、エアコンは36%、冷蔵庫はなんと72%も削減させようというのだ。科学者たちが現在開発を進めている真空断熱材を用いた冷蔵庫の場合、消費電力は10年前の製品のわずか8分の1である。 非政府組織(NGO)レベルでは、カナダの環境団体のデヴィッド・スズキ財団が世界的な環境団体のネットワークである気候行動ネットワーク(CAN)とともに、自国向けの計画を策定した。カナダ国内の炭素の排出量を2030年までに半減させ、しかも利益を生むエネルギー効率化への投資だけでこれを実現させようというものである。 世界自然保護基金(WWF)も、科学者たちによる評価を経た上で、2003年4月上旬、米国の発電部門の炭素排出量を2020年までに60%減らすように提案した。 この提案が重点を置いたのは、エネルギー効率の高い発電機器に換えること、効率の高い家電製品や産業用モーターなどの機器を利用すること、また場合によってはエネルギー源として石炭の代わりに天然ガスを使うことである。この提案に沿えば、国全体で2020年まで年平均200億ドル(約2兆3,000億円)を節約できることになるだろう。 カナダで最大の人口を抱えるオンタリオ州では、エネルギー省が、2009年までに州内5カ所にある大規模な石炭火力発電所を順次閉鎖していくことを計画している。2005年4月に閉鎖したレイクビュー発電所を皮切りに、2007年末までに3カ所、最後の1カ所は2009年初頭に閉鎖する。 石炭を風力や天然ガスに替え、エネルギー効率を向上させようという計画は、三大政党すべての支持を得ている。同じくこの計画を支持するオンタリオ・クリーン・エアー・アライアンスのジャック・ギボンズ会長は、石炭の燃焼について、「石炭は21世紀のオンタリオにはふさわしくない19世紀の燃料だ」と話す。 企業も活動を始めている。世界最大の業務用カーペットメーカーである米国のインターフェース社は、1990年代にカナダの子会社で炭素排出量を3分の2削減した。電力消費からトラック輸送方法に至るまで事業のあらゆる面を見直すことでこれを達成したのだ。 同社の創業者で現会長のレイ・アンダーソン氏は、「インターフェース・カナダは、温室効果ガスの排出量を最大時から64%削減し、その過程でかなりの収益を上げました。それも当社の顧客が、環境責任を果たすことを後押ししてくれているからです」と話す。2030年までにカナダの炭素排出量を半減させようというスズキ財団の計画も、このインターフェース社の取り組みがもたらした収益性に触発されて生まれたものだ。 大気中の二酸化炭素量濃度を安定化させるのは、尻込みしてしまいそうな難題だが、十分に可能である。風力発電機設計の向上、ガソリンと電気を併用するハイブリッド車の進化、太陽電池製造技術の進歩、家電製品のエネルギー効率の改善など、化石燃料経済から再生可能エネルギー経済にすばやく移行するために必要な基本的な技術はすでにある。 2015年までに世界の炭素排出量を半減させることも、手の届く範囲にあるのだ。この目標は大胆そうに見えるかもしれないが、気候変動がもたらす脅威がいかに大きいかを考えれば、決して大胆なものではないのである。 レスター・R・ブラウン著『プランB 2.0:ストレス下にある地球と窮地に陥った文明を救うために』(Plan B 2.0: Rescuing a Planet Under Stress and aCivilization in Trouble)(W.W.ノートン・アンド・カンパニー刊、2006年)の10章「気候を安定させる」(Stabilizing Climate)より抜粋。 www.earthpolicy.org/Books/PB2/index.htmでも入手可能。 (訳:梶川祐美子、五頭美知、丹下陽子) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 やればできる!という例がいっぱい出てきています。日本にもたくさんあります。日本のそんな取り組みを世界に発信しているNGOジャパン・フォー・サステナビリティの情報を見ていても、本当にそう思い、心強く思います。 世界の、日本のそういう動きをもっと加速し、広げ、時間との闘いに間に合わせるために、私たちに何ができるでしょう? 何をすべきでしょう? ぜひ考え、ひとつでもふたつでも、実行していきたいと思います。 余談ですが、ポルトガルでのデニス・メドウズ氏のシステム思考のトレーニング・プログラムで、デニスが受講者に強く「プランB 2.0」を薦めていました。「自分の書いた『成長の限界 人類の選択』は、長期的なトレンドを分析するものだが、レスターの本書は現在の状況が克明に分析され、役に立つ」と。 デニスは何冊も買い込んで、あちこちに配っているようです。私もとても役に立つ本だと思います。「現状」のなかには、「地球環境の状態:state」だけではなく、「人間の対応や対策:response」も含まれていて、上記のようにわくわくする情報もたくさんあります。英語版でも、日本語版を待ってでも、ぜひどうぞ! 英語版はこちらからどうぞ〜。ペーパーバック版で17ドルです。 http://www.earth-policy.org/Books/PB2/index.htm
 

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