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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年03月26日

シューマッハ通信より「セルフ・オーガニゼーション」(2006.03.21)

システム思考を学ぶ
 
JFSには、JFSでの活動をきっかけとして世界に出て行く人がたくさんいます。損保ジャパンのCSOラーニング制度から最初の年に来てくれたインターン生だった星野敬子さんもそのひとりです。 星野さんは、JFSで活動する中で、当時プロジェクトとして展開していたバイオミミクリーに惹かれました。 http://www.japanfs.org/ja/biomimicry/index.html#loc もっと学びたいといろいろ調べているうちに、英国のシューマッハー・カレッジを知り、「ここで学びたい!」と受験を決めました。その後の英語の猛勉強ぶりは端で見ていてもすばらしく、見事合格し、いま留学中です。 (こう書くと、さらっとすんだようですが、実際にはなかなか点数が上がらずに落ち込むこともあり、勉強法をいろいろとくふうしたり、大学の図書館が閉まってしまう年末年始には、私の事務所イーズに通って、1日10時間近く集中して勉強するなど、汗と涙の日々でした) その星野さんが、「シューマッハー通信」を送ってくれるようになりました。私がチェンジ・エージェントで進めているシステム思考と重なる勉強をしているので、情報交換しながらお互いに進められれば、と思っています。 最新号の通信では、システム思考のなかでもとても重要なコンセプトである「セルフ・オーガニゼーション」を取り上げているので、許可を得て、ご紹介します。 JFSがまさにそうですが、私はこれまで様々な活動を、このself-organization を意識して進めてきました。強い組織づくりの核となるものでもあり、また、持続可能な社会へのうねりを作っていくためにも、とても重要なポイントだと思っています。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜 修論の仮タイトルを"self-organisation for sustainability"として、取り組み始めました。前回は、self-organisationを簡単に紹介しましたが、今回は、self-organisation とは何か、また、ケーススタディとしてシューマッハーカレッジを紹介します。お時間のある時にでも、ご覧いただけましたらうれしいです。 星野敬子 ================================================ 【シューマッハー通信03】 ―self-organisationとシューマッハーカレッジ ■self-organisationとは? self-organisation(自己組織化)は、「他からの制御なしに自分自身で組織や構造をつくり出す事。 自発的秩序形成」と、wikipediaで定義されています。他による制御ではなく、「自分自身」でオーガナイズする。「自分自身」といっても、個体から組織、コミュニティまで様々なレベルがあります。self-organisationはよく、ヒエラルキーやコントロールと対比され、ホラールキー(holarchy)、またはネットワーク型と言われています。 self-organisationには、大きな特徴が二つあります。一つは、複雑かつ有機的なつながりに因っていること。直線的な因果関係ではなく、複雑に入り組んだ関わり合いによって、self-organiseしていることです。 もう一つは、つながることで生じる秩序(創発的秩序)があることです。各部分がつながった時に初めて、全体として意味のある秩序が生まれます。 以上の説明だと、随分分かりにくいと思うので、いくつか例を挙げます。 私たちの体は、self-organisationにより、ある一定のレベルに保たれています。例えば、暑い時には汗をかき、寒い時には鳥肌が立つというように、体温を一定に保とうとするシステムが働きます。外部環境の変化などに応じて、体の各部分が緊密に関わり合い、体内環境をある一定範囲内にself-organiseしているのです。 自然界のself-organisationの例では、アリのコロニーが分かりやすいかもしれません。アリは、個体レベルでは、ランダムで無秩序的な動きをしていますが、密度が高まるとコロニーを形成し、ある一定の秩序(創発的秩序)を形成します。この秩序は、アリの行列といったかたちで見ることができます。(アリはこの秩序を、胎児を育てたり食べ物を集めたりすることに使っています) また、地球自体もself-organisationの例です。生物・無生物が有機的につながって、生態系や気温などを一定のレベルに保っています。(温暖化や砂漠化などは、地球の自己調節の限界を超えた例だと言えます) 以上のことから分かるように、自然界はself-organisationというシステムで成り立っています。個々が有機的につながり、ある一定の秩序を創り出しています。 ■シューマッハーカレッジ:self-organising community 私の修論では、自然界のself-organisationに学ぶ(応用する)ことで、人間界がどう持続可能性に向かうかを研究しています。前回の通信で、self-organisationに基づく組織の運営や教育、科学技術、コミュニティなど、様々なレベル・分野を紹介すると書きましたが、今回は、self-organisationの一例として、シューマッハーカレッジを紹介したいと思います。 シューマッハーカレッジの主な構成要員は、組織運営スタッフ(常勤・非常勤)約10名、流動的ボランティア約5名、MSc生10名です。そして、ショートコースに参加する生徒が10〜30名、入れ替わり立ち代わりやってきます。 シューマッハーカレッジでの生活・学習は、self-organisationに基づいています。権威者がルールを敷いて、その上で動くのではなく、みなにカレッジ運営への「参加」を促し、「自発的・自律的」な行動を尊重しています。 「参加型」という点では、スタッフからボランティア、生徒まで、全てのコミュニティ住人が、等しく掃除や料理などに参加します。また、コースやレクチャーの内容も、参加者のニーズや特性によって、柔軟に変えられます。 私のマスターコースでも、講義の内容やスタイルを教授との対話で決めたり、生徒同士の話し合いから課外活動を行ったり、といった具合です。個々人の学習プロセスを大事にし、知識を超えて「経験」する機会を作っていることが、大きな特徴です。 シューマッハーに来た当初、私はこの学習・生活スタイルに、とても困惑しました。決められたルールがほとんどない。自分は何をするべきか、何をしたらいいのか、ひいては何がしたいのか、このコミュニティの中で、自分はどう振る舞ったらいいのか分からない場面が多々ありました。 日本はとかく、規則や規律に基づいた社会です。これは、他国の文化を経験すると、みな共通して感じることだと思います。そうした日本で育ったこともあり、私は当初、カレッジに規則やルールを求めては、違和感を訴えていました。 しかし、カレッジでの生活に慣れるにつれ、このコミュニティの中で、自分は何をするべきか、何がしたいのか、徐々に自覚するようになりました。人から言われなくても、自分の行動に責任や使命を感じるようになりました。これは、カレッジに流れる気風や、人々との関わりを通して、コミュニティ(全体)の中での自分(部分)という捉え方ができるようになったからだと思います。 前回の通信「部分と全体の関係性」で触れたことですが、全体を構成している部分は、ただの部分ではなく全体を反映した部分です。コミュニティの一員なのだという自覚が、私の行動を変えていったように思います。 今は、self-organiseできる生活を楽しみ、その意義を見いだしています。コミュニティづくりに「参加」しているという意識から、自分とコミュニティのつながり、人とのつながりを強く感じるようになりました。 さらに、自分の発言や行動について考えるようになるので、自分自身とのつながりも以前に増して感じるようになっています。self-organisationは、自分自身、他人、自然など、いろいろなレベルでのつながりを見いだすキーワードになると感じています。 とても幅広いホリスティックサイエンスの領域から、特にself-organisationに興味を持ったのも、これまでの活動、特にJFS・イーズでの活動が基盤になっていると感じています。 修論の大きな流れは、自然界のしくみ(self-organisation)に学んで、人間界に応用することで、持続可能な社会に向かう、というバイオミミクリーの考え方です。また、JFSのボランティア組織のかたちがself-organisationであること、イーズで自分マネジメントの講座を聴講させていただいたこと、システム思考に興味を持ったことなどが、みな本修論のself-organisationというテーマに収束しているように感じています。 これまで、JFSやイーズで活動していて、分かるようでよく分からなかったことが、ホリスティックサイエンスを通して、実感できるようになると同時に、こうしたことを、これからもやっていきたいんだなぁとの思いを強めています。 今後の通信では、self-organisationが、どう人間界に応用できるのか、どう持続可能な社会につながるのかをテーマに、様々な切り口からお送りできればと思っています。修論の進捗によりテーマなど右往左往すると思いますが、次回もご覧いただけましたらうれしいです。どうぞお楽しみに! 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 星野さんの【シューマッハー通信】を購読ご希望の方は keiko_mail2@yahoo.co.jpまでメールいただければ、次回から配信させていただきます、とのことです。 先日、コーディネータとして参加した朝日新聞社主催の「朝日環境フォーラム」のパネルディスカションでも、「変化を加速するためには何が必要でしょう?」という私の問いかけに、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏が「自己組織化です」と。 JFSが、毎月30本ずつ日本発の情報を世界に届けつづける傍ら、さまざまな活動を展開できているのは、300人ものボランティアさんやインターン生の力ですが、「常勤の事務局スタッフはたった2人なのに、よくそれだけの運営ができますね!」とよく言われます。 星野さんも書いてくれていますが、これはself-organization(自己組織化)の力を持つ組織だからだと思っています。(JFS組織論については、『がんばっている日本を世界はまだしらない②』に詳しく書いていますので、よろしければご一読ください) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4907717776/junkoedahiro-22/249-2919328-9475557 self-organization志向のJFSでいっしょに活動し、世界に出て行ったインターン生が、self-organization の研究をしている、きっとそれを日本に持ち帰って、さらに進めてくれるだろうと思うと、これぞ循環型(スパイラルアップ)だなぁ!とうれしくなります。 私もがんばろうっと! 今回のポルトガルでの「システム思考集中トレーニング・プログラム」で、システムやその構造についての見方を深めることができ、とてもうれしく思っています。チェンジ・エージェントで開発中のトレーニングコースの内容や質も大きく向上できそうです。 さて、3時間後に空港に向かいます。次のメールニュースは日本からの配信です〜。
 

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