ホーム > 環境メールニュース > 自然に学ぶ〜バイオミミクリ・プロジェクト(2005.02.22)

エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2005年11月05日

自然に学ぶ〜バイオミミクリ・プロジェクト(2005.02.22)

新しいあり方へ
 

<自然に学ぶバイオミミクリ、JFSのバイオミミクリ・プロジェクト>

「バイオミミクリ」(Biomimicry) って、お聞きになったこと、ありますか?
2001年夏ですが、[No.507] で、こういうご紹介を書いたことがあります。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

去年の夏、私は何かのはずみで、「世界の蝶博覧会」という大きなテント張りの会場に足を運んでいました。

その博覧会の目玉が、無数のモルフォ蝶からなる展示だったのです。そのコバルトブルーの色は、とても不思議な輝きでした。南米アマゾンに生息する蝶で、「宝石」に例えられる、と書いてありました。そして「この美しい色は、蝶の羽根自体の色ではない」と、これまた不思議な注釈が添えられていました。

私は、会場の展示責任者の方を探して、「これはどういうことなのですか?」と尋ねました。その方は、「羽根自体に色はついていないのです。このコバルトブルーの色は、羽根の細かな鱗片の構造に光が反射して、このように見えるのですよ。近くへ行って、蝶に光が射し込まないように手で囲ってご覧なさい」と教えてくださいました。

やってみたら本当にそうでした! 妖しいコバルトブルーに輝く蝶の標本を手で囲って見ると、色が消えてしまうのでした。本当に不思議でした!

「モルフォテックス」という、世界初のモルフォ蝶の発色原理を応用した繊維を織込んだ生地があります。日産のクルマに採用された「モルフォトーンクロス」です。「繊維が光の干渉によって発色し、濁りのない澄んだ色が得られ、見る方向によって光の干渉度が変わり色調が変化する」(カタログより)生地です。http://www.nissan.co.jp/SILVIA/CONVERTIBLE/interior.html

ちなみに共同開発した「帝人」によると、「染料や顔料を使わないことにより、染色廃液の低減や染色工程でのエネルギ-資源(水、電気など)の節約も可能であり、また、染料や顔料による肌かぶれなどの可能性もないなど人と地球環境に配慮した次世代の繊維として大きな可能性が期待できる」とのこと。

「クラレ」もモルフォ蝶の原理を応用した生地「デフォール」を作っているそうです。こちらのHPにモルフォ蝶の美しさの秘密が解明されています。

>>
モルフォ蝶の美しさの秘密は、電子顕微鏡写真でしか見られない羽根の微妙な構造にあったのです。
羽の鱗片の表面はスリット状のひだが規則正しく平行に並んでいます。そのピッチは約0.7ミクロンです。その断面を見ると、約0.2ミクロンのピッチで梯子状に> 9〜10の段を持っていることがわかります。
この段の部分で光が屈折反射して干渉により発色し、さらにスリット間で一層強い発色となって、あのコバルトブルーのあやしいまでの美しさが生まれ、我々を魅了するのです。
<<

環境の分野で、アメリカでは大きな潮流のひとつになりつつあるのですが、日本ではまだほとんど聞かれないコンセプトに、「biomimicry」があります。「bio」は生態系とか生物。「mimicry」は「真似ること」です。日本語にはまだ定訳がないので、「バイオミミクリー」とカタカナで書いておきます。

http://www.biomimicry.net/ から、その定義をご紹介します(原文は英語です)

>>
バイオミミクリーとは、人間の問題を解決するために、自然のモデルを研究し、自然のデザインやプロセスを真似る、またはそこからインスピレーションを得る新しい科学です。たとえば、葉っぱにインスピレーションを得てソーラーセルを作るなど。
バイオミミクリーではエコロジーの基準を用いて、私たちのイノベーションの「正しさ」を判断します。38億年にわたって進化を遂げてきた自然にはわかっているからです。何がうまく機能するのか。何が適切なのか。何が長続きするのか。
バイオミミクリーは、自然を見、評価する新しい方法です。自然界から私たち人間が何を取り出せるかではなく、私たちが自然界から何を学べるかを基本とする新しい時代を拓くものです。
<<

私たちにいちばん身近なバイオミミクリーの商品化例は、マジックテープです。

スイスのある人が猟に出たとき、猟犬の毛にごぼうのイガが強くくっついて、なかなか取れなくて手こずった。これをヒントにマジックテープが作られました。

欧米でのこのバイオミミクリの高まりには、「征服し、管理する対象としての自然」から、「畏敬の念を持って、学ぶ対象としての自然」への自然観の変化の兆しを感じることができます。

もっとも「素直な気持ちで自然から学ぶのも、結局人間に役立てるためでしょ」という見方もできますが、「人間のためではなく、自然が自然そのものとして存在すること」の認識へつながる動きのひとつになればいいな、と思っています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

私が共同代表を務めているNGOのジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)では、日立環境財団から助成金をいただき、1年間にわたり、バイオミミクリのプロジェクトを進めました。JFSのウェブページからご紹介します。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

http://www.japanfs.org/ja/biomimicry/index.html#loc
バイオミミクリ(Biomimicry)

自然のモデルを学び、そのデザインやプロセスを真似て(又はインスピレーションを得て)人間界の問題を解決する、新しい科学。 -ジャニン・ベニュス(生物学者)
「すごいなあ、どうしてこんなことができるんだろう?」
レオナルド・ダ・ビンチは、トンボやハチが空中停止をする様子にヒントを得て、ヘリコプターの原理をスケッチしたと言われています。ライト兄弟もまた、鳥の翼が「上面と下面で断面のカーブが違う」ことを発見し、飛行機の設計に取り入れました。

これまで人類は、自然界からヒントを得て様々な技術を生み出してきました。そしてJFSは今あらためて、自然に学ぶ技術の可能性に注目しています。生命の歴史38億年をかけて淘汰され進化してきた技術には、 持続可能性へのヒントがつまっているからです。

例えば生物たちのこんな技術をものにできたら、私たちの環境負荷を劇的に減らせるかもしれません。「アワビのように、合成接着剤を使わずに自由自在に壁に自らを吸着・剥離するには?」「シロアリ塚のように、エアコンを使わずに空調するには?」「カタツムリのように、洗剤を使わずに自らの殻の汚れを落とすには?」

こうした「自然に学ぶ」研究が、世界の様々なところで進んでいます。もちろん、日本発の研究もたくさんあります。こうした事例をみなさんと学びあうのが、このJFSバイオミミクリ・プロジェクトです。


●「38億年分の知恵を、ともに学ぼう」〜 JFSバイオミミクリ・プロジェクトとは
http://www.japanfs.org/ja/biomimicry/about.html

1.自然に学ぶとは
過酷な環境で生き延びるために生命は、その誕生から38億年かけて「技術」を進化させてきました。人間も、特に産業革命以降、様々な技術を生み出してきましたが、38億年の生命の知恵は想像を絶するものです。

例えば、アワビは、合成接着剤を使ずに自由自在に壁に自らを吸着・剥離させることができます。カタツムリは、洗剤を使わずに自らの殻の汚れを落とすことができるし、セコイアに至っては、数百ある根っこから、滑車やレバーや機械を使うことなく、太陽光のみで数トンの水を汲みあげることができるのです。これら全て、化石燃料を一滴も使うことなく。いったい、生命はどうやってそれを可能にしているのでしょうか?

こうした問いかけは、私たちの科学への探究心を揺り起こしてくれます。さらに、研究者や企業にとって魅力的なテーマとして現実の研究にうつされています。

例えば、「クモのように繊維をつくるには?」。クモの糸は、実は同じ重さの鉄鋼より10倍強いことが最近の研究で明らかになっています。大量のエネルギーを消費せず、常温常圧下でいかにここまで強い繊維を作り出すことができるのか。こうした問いかけに応じて、クモの体内の微細構造やナノレベルのメカニズムの研究が今始まっています。

または、「シロアリ塚のように空調するには?」。シロアリ塚は、エアコンを使わなくても、内部の温度や湿度はほぼ一定に保たれています。ここから通気性、湿度コントロールのヒントを得て、空調にほとんどエネルギーをかける必要がない建物や住宅が実際に作られ始めています。

こうした生物から学ぶ研究は今、工学や化学だけでなく、医療、エネルギー、ロボティクスなどの分野でも行われています。

こうした技術はどれも、環境負荷を劇的に下げつつ人間社会の問題を解決していくものです。これらは「生物に学ぶ技術」のあり方として、「バイオミミクリ(生物のまねび)」(1)や「ネイチャーテック」(2)といった考え方で、その名の書籍や文献に事例が紹介されています。

(1) バイオミミクリ
『Biomimicry: Innovation Inspired by Nature』
Janine M. Benyus (著) (2002/09/01) Perennial
(2)ネイチャーテック
『カタツムリが、おしえてくれる!_自然のすごさに学ぶ、究極のモノづくり』
赤池 学 (著), 金谷 年展 (著) (2004/04) ダイヤモンド社

2.バイオミミクリを定義する
自然に学ぶ技術を考える際に様々なアプローチがありますが、このプロジェクトでは、自然に学ぶ技術として「バイオミミクリ」に着目し、以下のように定義しました。

定義:「生物に学び模倣する」技術
その特徴として、次の二つを想定しています。

・自然のデザインやプロセスをモデルやヒントにして、人間社会の問題を解決する。
・ライフサイクルを通した環境負荷を下げる。
この二つの特徴を満たす技術はたくさんありますので、4つのカテゴリに分類して整理しています。

横軸は「どれくらい加工するか」を表しています。左から右に向かって、「そのまま使う」から「手を加えて」「加工のレベルを高くして」使う方に向かっています。

そのまま使う「生物体を活用する」「バイオマスを活用する」(例:ココナッツの殻を自動車のヘッドレストに使う、珪藻土を浄水器に使う)から、だんだん手を加えるレベルを上げていくと、「生物の動きに学ぶ」「形態・構造に学ぶ」「化学プロセスに学ぶ」「生態系そのものに学ぶ」などがあります。

一方、縦軸が示しているのは、「個体に着目するか、集合体に着目するか」。集合体に着目する方には、「バイオマスを活用する」「生態系に学ぶ」などがあります。

このように整理したうえで、とくに加工度の高い側の4つのカテゴリーを、ここで捉える「バイオミミクリ」の範囲として想定しました。

3.国内外の事例を探す
持続可能な社会へ貢献することをミッションとするJFSでは、「持続可能な社会における技術とはどんなものか」といった疑問から、本プロジェクトを開始しました。自然に学び、人間の環境負荷を劇的に下げていく多くの技術や研究を国内外で掘り起こし、整理・分類して発信しようというものです。

その過程で、技術のあり方について様々な気づきや人々のつながりを生み出していければよいと考えています。

●インタビュー・レポート
この分野の情報発信を積極的に行っているジャーナリストや研究者にインタビューを実施しました。「どういうきっかけや興味からこの分野に着目したか」「なぜ、どういった研究事例に特に注目するか」「今後この分野が広がっていくために何が必要か」など、単に事例紹介に留まらず、活躍する人々の人間像や世界観をお伝えします。その他、関連イベントや講演のレポートもあります。
http://www.japanfs.org/ja/biomimicry/interview.html

○第1回インタビュー
「ネイチャーテック」 赤池学さん
本連載の記念すべき第1回は、ユニバーサルデザイン総合研究所の赤池学所長に登場いただきました。氏が著書『カタツムリが教えてくれる!』で提唱されている、自然に学ぶ技術のあり方「ネイチャーテック」について伺います。

○第2回インタビュー
「材料生物学」 竹本喜一先生
石油化学から作られるプラスチックなどの合成高分子は、ほとんど自然には分解しません。そのため、廃棄や処理の仕方が大きな問題になっています。そうした中、自然界の合成と分解の循環に学び、生物の英知に習う研究が注目を集めています。1993年に「材料生物学 -生物をまねた新素材」という新しい分野を開拓し、一躍有名になられた大阪大学名誉教授・竹本喜一先生に、生物に学ぶ無害・高機能の新素材についてお話を伺いました。

○第3回インタビュー
「自然に学ぶものづくり」
積水化学 自然に学ぶものづくり 研究助成プログラム
プラスチック製品、ユニット住宅の大手メーカーの積水化学工業株式会社が、2002年「積水化学 自然に学ぶものづくり 研究助成プログラム」を開始しました。これは、自然に学んだ知恵をものづくりに活かす研究に、年間総額2,000万円を助成するプログラムです。「21世紀の科学技術のあり方を考え広げる一翼を担いたい」と話す本プログラムのディレクターである前島一夫氏、白鳥和彦氏、広報担当の相原佳世子氏にお話を伺いました。

○レポート
積水化学 自然に学ぶものづくり フォーラム 2004 報告
2004年10月14日、積水化学工業株式会社京都研究所にて、第2回「積水化学自然に学ぶものづくりフォーラム」が開催されました。大学・研究機関から79名、企業、NGO・一般市民の方が137名と総勢216名が参加し、助成対象となった研究の展示発表の他、参加者同士の活発な交流が行われました。その模様を抜粋してご報告します。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

インタビューの詳細などはぜひウェブページをご覧下さい。何だかわくわくしてきませんか? そんなわくわくをご一緒に!

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ