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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2005年07月01日

オフィス町内会(2002.1127)

日本のありもの探し
 
平成3年8月に発足したオフィス町内会は、環境NGO(非政府組織)として古紙の共同回収に取り組んでいます。さらに、再生紙使用拡大をはかるための提言を行うなどオフィス古紙リサイクルを通じた社会貢献活動を展開しています。http://www.o-cho.org/ ぜひ読んでいただきたい本があります。 『白色度70がちょうど良い』半谷 栄寿・ オフィス町内会(ぎょうせい) オフィス町内会の事務局代表の半谷さんは、東京電力の社員でいらっしゃいます。1990年、東京電力の本店内で、ゴミの減量化と資源化を目的として、古紙の分別回収が始まりました。オフィスでの取り組みとしてははじめてのものでした。半年ほどの試みで、回収量やコスト面で実績が上がり、次の展開を考え始めました。 このとき、半谷栄寿さんたちは、東京23区内に点在する約50ヶ所の東京電力関連の事業所をネットワークし、古紙の分別回収を広げることを考えました。しかし、交通渋滞や運送費などのコスト面でも難しいことがシミュレーションから明らかになりました。 「それなら、企業間の枠を取り払い、近隣のオフィス街で共通の回収車を巡回させれば分別回収の輪が拡大する......。「オフィス町内会」は、こんな発想の転換から生まれた、オフィス街での企業間ネットワークの環境NGOなのです。 その後、既存の古紙回収会社との連携を築き、約30社ほどの事業所から試験運用が始まりました。その後、2000年3月末には159社282事業所が参加し、毎月約722トンの古紙を回収して資源化するまでに、活動を広げてきました。 町内会というネーミングが示すとおり、オフィスのお隣さん同士が、「個別で回収していたのでは効率が悪いから、それじゃあ、いっしょにやりましょうかねぇ」というノリでいっしょに活動している、とてもユニークな取り組みです。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 今、会員企業からはこんな弁もいただける。「商売上の義理も損得もないのに一緒に協力してきたのは、お互いの熱意があったからかな」。   たしかにオフィス街は、隣り同士であっても会社が違うと日頃のお付き合いはほとんどない。私の出身である福島県の浜通りにあるような「町内会」を「オフィス街」で創ることができたのは、会員企業のご担当の皆さんのこんな気持ちの結集があってこそである。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 とても「日本的な良さ」をじょうずに活かした活動ではないかな、と思います。(かつて「オフィス町内会」という名前の英訳を試みたことがありますが、けっこう悩みました。^^;) 「オフィス町内会」の活動は、東京23区から全国に波及し、企業、回収会社、ボランティアグループ、自治体などの皆さんが中心となって、それぞれの地域の特性に沿った「オフィス町内会」が広がっています。東京多摩、横浜みなとみらい21、浦和、上尾、水戸、土浦、前橋、沼田、宇都宮、千葉、木更津、袖ヶ浦、東扇島、身延などの関東圏はもとより、札幌、仙台、山形、福島、福島浜通り、新潟、北九州、大分、延岡など、北海道から九州に至っているそうです。 そして、この本の前半、東京電力という一企業の中で、社員が始めた活動を、企業がどう支援してきたのかという内部の展開、そして、既存の古紙回収会社・選分会社の縄張りに入り込む活動になるわけですが、その外部との展開を、私は「手に汗握る」思いで読みました。 特に、まだ試験実施のレベルにあったころ、NHKのドキュメンタリー番組に取り上げられたのですが、そこでは、既存の古紙回収業界の仕事の場を奪いかねない存在であるという、誤った見方での主張で番組が展開され、半谷さんは背筋にぞっと寒気が走るような感覚に襲われた、と書いていらっしゃいます。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 そして、それ以上に恐れを感じた。「『オフィス町内会』の今後の運営に東電社内からブレーキがかかるのではないか。大組織はあまり冒険を好まない。自由な事務局活動がこれまでどおり続けられるだろうか」。 ところが、私の心配に反して、社内から多くの励ましを受けた。番組を見た企画部門の取締役は、「新しい流れを創ろうとすれば、従来の流れとの調整はどんなことにもつきもの。そこに気づかせたという意味ではNHKの番組構成はなかなか的を射ている。NHKに理解してもらうまで頑張れ」と応援してくれた。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 その後、「私たちの視点の中に見落としていたものがあったのではないかという反省がわいてきた」という半谷さんたちが、どのように既存の業界と直談判し、強力な協力体制を築いていったのか、ひとりの人間としてぶつかって、現状を打破していった様子をぜひ読んでみて下さい。 また1996年、東京電力のトップマネージメントにおいて、「オフィス町内会」への「ゆるかなサポート」が改めて確認されたそうです。東京電力の社会貢献活動ではあるが、社内の論理や慣例、慣行で「オフィス町内会」を運営するのではなく、あくまで会員の立場に立ち、「オフィス町内会」ができるだけ自由な活動を続けられるように、「オフィス町内会」の主体性を大切にしていこうという配慮が「ゆるやかなサポート」という表現に込められています。 そして、東京電力の社内では環境部が「オフィス町内会」に対する社内のサポート組織となっており、オフィス町内会の事務局に人材を継続して派遣するなど、自主的な活動を支援しています。 もうひとつ、この本を読んでいただきたい理由があります。オフィス町内会は、環境NGOですが、運営を開始して以来、ずっと黒字運営です。そして、着実に賛同・参加する企業や団体を増やし、活動の幅も深さも広げています。その成功の鍵は、とても参考になります。 オフィス町内会は、「どんなに良いことでも『経済性』が成り立たなければ、仕組みとして定着はしない。どんな活動でも、『経済性』が見えなければ、モラルに訴えるだけの一過性の活動に終わってしまう」という信念で活動をしています。新しい事業をはじめる際には、シミュレーションを繰り返し、経済性を確保し、 ウィン-ウィン(敗者がいない)仕組みを作っているのです。 たとえば、「3つの経済性」を保っています。 (1)会員企業が負担する費用はゴミ処理の負担よりも軽い オフィス町内会の会員企業が位置する東京都では、オフィス古紙を廃棄物として処理すると、標準で28.5円/kgの処理費用がかかります。これに対して、オフィス町内会の共同回収の仕組みを利用すると、平均負担額は17.6円/kgですみます。1kgたり10円以上もコストダウンがはかれるのです。 (2)回収会社は古紙相場が低迷しても回収経費を確保できる 古紙回収会社は、通常は古紙の相場によって利益が変動し、相場が低迷していると、経費さえ回収できないこともあるのですが、オフィス町内会の仕組みでは、企業側が回収費用を負担するので、相場に左右されずに回収経費を確保することができます。 (3)事務局は独立採算のもとで主体的な活動を展開できる 企業側が負担する回収費用の中に、オフィス町内会を運営する事務局の経費5.8円/kgが含まれています。このことによって、事務局は同率採算性を確立することができます。 本書の中で、立ち上げから一貫してオフィス町内会を応援してきた三橋さん(白色度70クラブのリーダーであり、JFSの理事でもいらっしゃいます)が、このように書かれています。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 オフィス町内会の事業の立ち上げをみると、環境NGOの立ち上げというよりも、最近はやりのベンチャー企業の立ち上げに似ているのに気がつく。強力なリーダーシップの存在、綿密な事業計画、しっかりした費用対効果分析、さらに回収会社との信頼関係の樹立、古紙量の正確な把握、テスト期間の設定とリサイクルのためのシミュレーションなどを事前に十分な時間をかけて行っている。 この辺の準備と実行までの段取りは、企業の新規事業の進め方とそっくりである。様々な職種の企業人の集まりであるだけに新規事業の進め方については手馴れたもので、多くのノウハウが動員されており、一般のNGO活動に対して、計画的かつ組織的である点が参考になる。 日本の場合、通常このような運動は、官主導で行われるのが普通である。オフィス町内会のように、民主導で運動を始め、官を巻き込んで成功するというケースはこれまでほとんど見られなかっただけに新しいタイプのグリーンコンシューマー運動としても注目に値する。 21世紀には、官が民を指導する行政から、地域住民やNGO、NPO主導の様々な環境への取り組みを国や地方自治体が支援、協力する新しいスタイルが求められてくるだろう。オフィス町内会の実験は、そうした新しい時代の運動の指針になりうる。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 本書の帯には、このように書かれています。 世の中を変えていく人へ  オフィス町内会の10年間。その発想・その行動を著した本書は、リサイクルや 環境問題に取り組む人にとっての、また、これからの難しい時代に何か新しい ことをやろうとする人にとっての、参考の書である。 私も、白色度クラブでご一緒させていただくようになりましたが、オフィス町内会や半谷さんのスタンスやアプローチ、とても勉強になります。三橋さんもお書きになっているように、ビジネス的なセンスとバランス感覚を持ったNGO活動だと思います。そして何といっても、ごいっしょしていてウキウキしてくるのは半谷さんの情熱!ですね。 最後に、本書扉の写真に添えられた半谷さんの言葉を--。    新しいことを    やろうとする時は、     やり過ぎるくらいが    ちょうど良い ええ、本当に!! 私もそう思います。(^^;
 

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