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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2005年06月21日

ワールドウォッチ研究所訪問記(1) (2001.01.17)

世界のわくわくNews
 
ワシントンは東京よりずっと暖かく、昼間はコートも要りません。すごーく寒い、と聞いていたので(先週は寒かったそうです)、すごーく分厚いダウンジャケットを持て余しています。 ワールドウォッチ研究所の懐かしいスタッフと再会を果たし、研究者と「最近どお?」「日本ではこんな動きがあるよ、知ってる?」(たいてい知らなかった、という返事とお喋り。ブリーフィング・ミーティングの部屋は、去年までの部屋よりずっと大きな部屋に設営中でした。去年は40人ほどの参加でしたが、今年は60人ぐらい来るそうです。準備に忙しそうなスタッフに「繁盛で何より」と声だけの応援。 研究所(あるビルのワンフロアを借りています)に一歩入ると、各国語の『地球白書』やその他の翻訳本のディスプレーが目を引きます。最近は中国語のものが増えてきたなぁ、と。中国でも環境問題への関心が高まっているのでしょうね。台湾や中国、出版社によって使うタイトルが違うようですが、『世界現状』は文字どおり、State of the World ですね! 『全球預警』というのはアラート(alert)でしょうか? Vital Signs(邦題『地球データブック』)かなぁ、と。日本では出されていませんが、モノグラフシリーズWorldwatch Paperのタイトルは、『看守世界専論』となっています。なるほど〜・・・と見ていたら「ジュンコ、読めるの?」と。 『地球白書』は現在34ヶ国語に翻訳されているそうですが、今年画期的なのは、6ヶ国で同時刊行されたことです。アメリカ、英国、インド(ここまではどうせ英語なので、そう大したことはナイ)に加えて、韓国、インド(地元の言語で)とブラジルです。米国で印刷している間に、翻訳・チェック・編集・校正・印刷までやっちゃうというのはスゴイ!と感心しちゃいました。何人の翻訳者で分担したかわかりませんが、大変だったでしょうね。いろいろな言語の『地球白書』を見ていたら、出会うこともない、知らない者同士ですけど、それぞれの国で翻訳や出版、啓発に尽くされている方々とどっかでつながっているような気がして、何だか嬉しくなりました。 昨日の午後は、このブラジル版の発刊に合わせて、ブラジル大使館での記者会見が開かれるというので、ついていきました。3年ほど前から、とても熱心にブラジルでの出版や啓発に努力している起業家がいるのです。彼には去年のミーティングでも会いましたが、起業家として、環境NGOの理事長として、ガンガン進めている様子にはいつも感心しています。 この記者会見も彼の努力の成果です。ワールドウォッチ研究所もそれに答えて、レスターを含めて主要な研究者を4人送り込みました。ブラジル大使を囲む形で記者会見は進められ、なかなかの光景でした。30人近くの出席者がありました。部屋の後ろには、英語とポルトガル語の『地球白書』が積まれ、4人の研究者のプレゼンに続く活発な質疑応答で、1時間半はすぐに過ぎてしまいました。 「アマゾンでのエコツーリズムは環境によいのか、悪いのか?」「人口増加で食料のためにどうしても土地が必要になる。熱帯雨林の保全と食料確保をどう両立させられるのか?」など、興味深い質問の数々。私も最近、講演をさせてもらう機会が増えているので、特にその答えと答え方に興味津々でした。 「あらら」と思った質問がありました。「最近、米国の環境関係のメールリストで、『ブラジル政府は近々、アマゾンの新規開発を許可する法律を通す動きで、これは環境破壊につながる。ストップしなくてはならない』というニュースが駆け巡っていますが、どういう状況なのですか?」 あらら、と思ったのは、まったく同じ内容のメールや「ストップさせるための」署名お願いのメールが日本でも駆け巡っているからです。日本語のメールリストでも受け取ったことがあります。 ブラジル大使も、ワールドウォッチ・イン・ブラジルの活動をしているNGO理事長も、「そんな動きはまったく聞いていません」という答えでした。大使は、アマゾンの開発に関する法律はここ数年、まったく聞いたこともありません、というお返事。政府側の返事だけでは疑念が晴れませんが、環境NGOの人も「そういうゴシップメールがけっこうあるんですよねぇ」と。「知っていますか? いまブラジルのメールリストを駆け巡っている情報は、『米国政府は、アマゾンをブラジルから取り上げて世界の共有地にすると動き始めている』というものなんですよ」。 帰りの車中でレスターに「あのメールの話は日本でも駆け巡っているのよ」というと、「難しいよね、大使やNGOの代表が『違う』といったからといって、本当ではないという結論にもならないし」と。最近、電子署名は通常の署名と同じ意味を持つのかどうか、疑問に思ったりしていたのですが、「IT時代に考えるべきこと」のひとつでしょう。 研究所でレスターとおしゃべりしているときに、以下の質問も直接聞きました。 今回の課題で面白い議論になったのが、最初に出てくる「industrial and developing countries」という言葉でした。後者は「発展途上国」ですが、前者を「工業国」と訳す人と「先進国」と訳す人と分かれ、とても興味深い議論がなされました。特にレスターはほとんど advanced countries(ふつう先進国と訳す英語)という表現を使わないので、これを書いた彼は industrial = advanced と同意に使っているように思いますが、いま確認中です。 「同じことだよ」とレスター。「でも advanced という言葉は偏見が入っているようにも受け取れる。advanced でなければ、unadvanced だと。だからadvanced とか First World という言い方はしないんだ」。 「確かにこれまでは、"工業的な"先進国が"先進国"だったから、advanced とindustrial は同意に使えたのだと思うけど、これからは、"工業的な"先進国は、先進国じゃなくなるかもね」というと、「You're right.(そうだね)」と。 もうひとつ、環境英語MLで出ていた質問も聞いてみました。「Environment とEcology はどう違うの?」。またまたにっこりと「同じ」。 日本語では、「環境」と「生態系」とわざわざ訳し分けることもあるのですが、だいたいは同じ意味で、生態系というのは日常語ではないので、私はたいていはecology も「環境」としています。強いていえば、ecology は自然環境でしょうか。environment には人や人の関わりも含まれているイメージがあります。 たとえば、environmental tax(環境税)や environmental revolution(環境革命)とはいうけど、ecological taxとか ecological revolution とはいいませんものねぇ。 さて、今日はいよいよブリーフィング・ミーティングの日です。日本以外にもブラジルの彼ともうひとり、海外からの参加者がいるので、3人で5分ずつ発表させてもらえるようです。 日本の動きの全体的なイメージぐらいしか伝えることができないので、個々の団体についてはご紹介できませんが、いただいたいろいろな情報を背景に、お話してこようと思います。
 

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