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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2005年06月21日

岡山・山田養蜂場-蜂の巣型集合風力発電システム (2000.06.13)

日本のありもの探し
 
山田養蜂場の山田英生社長との対談のために、岡山空港へ飛んだのは5月にレスター・ブラウン氏が来日していた1週間の最終日でした。 空港から車で約1時間、会社に着いた私たちを迎えてくださった山田社長は、深く澄んだ湖に対面しているような、これまで経験したことのない不思議な雰囲気の持ち主でいらっしゃいました。40台の若手社長でいらっしゃいますが、物静かで言葉を選びながら、真摯な思いを込めて、お話になる方でした。 山田養蜂場の創業者である先代社長は、体の弱い娘の健康を取り戻したいという思いから、ローヤルゼリーの研究をはじめられたそうで、「大切な人の健康を願う」が創業の精神だそうです。
http://www.3838.co.jp/yamada/index.html 200名を超える従業員で、ローヤルゼリーの全国シェアは20%を超えている(お話の中では出ませんでしたが、HPに書いてありました)同社の「グループの企業理念」は、以下のように書かれています。 一、 我々は、自社のルーツである養蜂業を通じ、ミツバチの「自然との調和の姿」に触れることができた。その姿から「自然環境の大切さ」を知り、謙虚に学ぶことが、我々の企業活動の規範である。 一、 我々は、ミツバチを通じて学んだ「自然への感謝と畏敬」の念、「社会に対する奉仕」の気持ちを常に心に刻み、「自然と人間社会との調和に貢献する」ことを目指す。 一、 我々は、まさにミツバチの様に「勤勉」に「創造的」に自分達の持ちうる限りの知恵と力を結集して、「自然の恵み」を人間社会における最大の価値である「心身の健康」に、広く役立てることを使命とする。 同社では、この企業理念に基づいて、さまざまな社会貢献活動を行っている様子をレスターに説明なさっていました。 たとえば、教育ボランティア「みつばち教室」の開催。同社の養蜂部のスタッフが地域の学校におもむき、ミツバチの生態や社会性を通じて自然の仕組みと大切さを知ってもらうという授業を「出前」しています。 また、「自然の大切さやすばらしさを伝えたい」「命のつながりについて考えて欲しい」という願いを込めて、開催している「みつばち文庫」作文コンクール。 「みつばち文庫」は、子どもたちへの教育支援活動として環境学習に役立つ書籍を選び、岡山県下の全小学校と、全国 178校の小学校に寄贈しています。 また、「みつばち文庫」で贈れる小学生向けの環境読本があまりに少ない、ということで、山田養蜂が自ら、「みつばちから学ぶ総合的な学習」を出版する運びです。全5巻からなる環境読本の内容は、第1巻「自然と環境」、第2巻「ゴミとリサイクル」、第3巻「エネルギーと資源」、第4巻「食べ物と健康」、第5巻「社会とボランティア」となる予定だそうで、レスターもサンプル本を見せてもらって、感心していました。 山田養蜂場のもうひとつの取り組みは、新エネルギーの利用です。 昨年11月に、駐車場の夜間照明用に小規模の風力と太陽光発電施設を導入するなど、これまでも新エネルギー利用に取り組んでいましたが、今年3月には本社工場棟に太陽光発電システムを設置しました。 太陽光発電システムは10kwユニット6基で構成された60kwシステムで、年間64,956kwhの電力を供給。これは当社事務所棟の照明に使用する電力量の約71.3%にあたり、年間95万円前後のコスト削減となります。 同社の玄関を入ったところに太陽光発電のパネルがあって、発電量などとともに、このソーラー発電を利用していることで、どのくらいの二酸化炭素が削減できたか、という数字も電光掲示されていました。社員や訪問者、出入りの業者などに対する環境コミュニケーションとしても有効だなぁ、と思いました。 そして、山田社長の取り組みは、自社への代替エネルギー導入にとどまるものではありませんでした。
http://www.3838.co.jp/yamada/toproom.html このHPの写真を見ていただきたいのですが、「え? 何だろう?」と思いませんか? これ、風力発電システムなのです。 「蜂の巣型集合風力発電システム」というもので、約120kwの発電容量があります。通常この規模だと費用は1億円かかるといわれましたが、この蜂の巣型集合風力発電システムだと、半分の5千万円ですむそうです。 「これまで見たことのない風力発電ですねぇ」と言いましたら、技術そのものは50年も前から日本にあったそうです。それを「発掘」された北海道大学の大友詔雄さんがシステムを設計・開発されて、一昨年北海道に試験機が完成したということです。 従来、風車の問題点は、発電の量を大きくするとプロペラが大きくなり、その風切り音がうるさいことでしたが、この風車は、風切り音の小さな小型の風車を組み合わせることによって、大きな電力を発電しようというものです。それで「蜂の巣型」です。 山田社長はたまたまこの試験機の存在を知り、大友さんに連絡をとってお話を聞かれたそうです。そして、原子力の仕事に携わっていた大友さんが、自然のエネルギーの開発へ夢を見い出した経緯、養蜂の仕事にも通じる自然利用のエネルギー開発の考え方、半世紀も前に日本人によって企画されていた「蜂の巣型集合風力発電システム」実現への期待等々、聞くほどに感動して、「自分の町にも!」と決意されたということでした。 この「蜂の巣型集合風力発電システム」の本機第一号は、今年の夏に山田養蜂場のある、鏡野町の男女山(おとめやま)公園に実現することが決定しました。 公園のこの風力発電システムは、公園内の照明や近隣にある公共施設の電力を供給することになるそうです。山田養蜂場から、町へのプレゼントだそうです。 みつばちの里鏡野に、みつばちに学んだ企業理念を静かに実践なさっている山田養蜂場が、日本で初めての「蜂の巣型集合風力発電システム」を実現する・・・ う〜ん、ビジョンって、ロマンなんだぁ〜、と、おふたりの撮影のため、風力発電システムの設置を待つ公園のそばを通りながら、雨の岡山・鏡野で思ったのでありました。
 

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