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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2005年06月20日

タンク(戦車)よりタンク(雨水タンク)を! (2002.01.12)

水・資源のこと
 
No more tanks for war, Tanks for peace!
タンク(戦車)よりタンク(雨水タンク)を! 「日本の空は世界につながり、雨は地球の大地と空の間を循環しています。人類はこの循環の中でしか生きていけません。 私達は先人達が雨と共に築き上げてきた暮らしの知恵と文化に学びながら、21世紀に雨水循環社会を創造し、次代にかけがいのない地球を伝えていきたいと思います」 このような言葉で迎えてくれる、世界初の「雨水資料館」(すみだ環境ふれあい館)に出かけてきました。とってもゆったりした時間の流れる中、胸躍る楽しい見学でした。 「雨水循環社会」! そうですよねぇ。資料館の展示にはこのように書いてあります。 「地球では、年間平均1020mmの水が蒸発しており、その一方で、年間1020mmの降水があって、均衡が取れている。世界の空はつながっているので、どこかで異常豪雨が起こっていれば、どこかに異常渇水が起こっていることになる」。 ついでに、「地球の水の量は、約14億平方キロメートルあるが、そのうち、淡水は2.5%。しかもその多くは氷山や氷河の水なので、人間が利用できる水は、0.3%しかない。そして、大気中の水(水蒸気や雨)は、0.001%」だそうです。 何とも稀少なものが、何ともいえないバランスを取りながら、地球上の生きとし生けるものを潤してくれているのですね。 しかし、「温暖化や人口増加によって、現在、アジアやアフリカなど31ヶ国が水の絶対的不足に苦しみ、2050年にはその数は48ヶ国に増えるだろう」とのこと。レスター・ブラウン氏は、「世界で最も過小評価されている環境・資源問題」は「水である」と「水貧困」という言葉を使っていますが、まさにそういう国が増加しているということです。 展示の中には、「水不足の危険マップ」という地図がありました。色の濃い「高危険」地域は、リビアからバングラデシュまでの北アフリカ、中東、アジアの国々。「問題なし」というのは、たったの3ヶ国。カナダとフィンランド、スウェーデンでした。日本は「危険は低い」区分に属していて、その他のアジア諸国は「中程度の危険」でした。 水不足の一方、洪水の害が激増しています。国際赤十字の調べによると、1973年から97年の間、洪水による被害者は、年平均6600万人を超え、地震や干ばつなどの自然災害のなかでも第一位だそうです。 しかも、5年ごとにみたときに、73〜77年は1900万人、88〜92年は1億1100万人、93〜97年は1億3100万人と激増中。98年に3万人近くが洪水によって亡くなっているそうです。 そして、次の展示では、阪神・淡路大震災の際に、水道が復旧するのに1ヶ月以上かかった地域もあった、と、「ライフラインから、ライフポイントへ」というキーコンセプトを打ち出しています。 この災害緊急時用として、そして、降雨時の洪水対策、水資源の自立を求めて、ここ墨田区では、20年まえから、雨水利用を進めているのです。(信濃毎日新聞に子ども向けに書いている環境連載で「水」の有効利用を何回か続けて書いている私は、「雨水利用先進自治体」である墨田区の具体的な取り組みを勉強するために、今日出かけていったのでした!) 雨水資料館には、内外の雨水利用技術の実例がたくさん紹介されていて、それはそれはおもしろかったです。雨が降らない(年間3ミリ!)ので、霧を集めるネットを使って1日10リットルの水を得ているペルーの話、などなど。 国内の事例では、国技館をはじめ、やはり墨田区の先進的な取り組みが光っています。私がとってもいいな〜と思ったのは、「路地尊」という、町内の雨水タンクのしくみです。 そして、何冊かの参考書も紹介してありました。『雨の辞典』『やってみよう雨水利用』(両書とも北斗出版)の後者の扉より。 >> 世界には
数滴の雨水で命をつないでいる人たちがいる。
雨水を売って暮らす人たちがいる。 日本では、
世界平均の倍の雨が降り
大都市では降るはしから、海へと棄てている。
かたや、散水や洗濯、洗浄水に飲み水を用いて惜しみなく、
かたや、水不足に苦慮している。
ほかの世界の人たちには、不思議な日本である。 << この雨水資料館は、廃校になった小学校を改修して、2001年5月にオープンした資料館です。真っ白なコンクリートの壁ではなく、ずっと人がいたんだな〜という温かい雰囲気が、落ち着かせてくれます(トイレへ行ったら、ガリバーになった気分でしたよ! だって、洗面所は腰をかがめるほど低く小さいんだもの!) そして、展示されている資料は、その写真といい、統計やグラフの説得力といい、楽しいエピソードといい、ウ〜ンとうなるものばかりでした。すばらしいです。私がとっても気に入った展示をふたつ、ご紹介しましょう。 ◇◇◇◇ ボツワナの通貨は、プラといいます。プラとは、雨水のことです。そして、平和を意味する言葉でもあります。ボツワナの砂漠地帯では、雨は年に数日しか降りません。雨水は本当に貴重なものなのです。 ボツワナの国旗をご存じですか。青地は雨水を表しています。そして、青地の上を走る黒と白の線は、黒人と白人が仲良く暮らす、という意味です。雨水は平和を表しているのです。 ◇◇◇◇ 折れてしまったコルク栓(本当にそのコルクの折れたボトルが展示されています) それは2000年3月のオランダのハーグで行われた世界雨水フォーラムでの出来事だった。会場ロビーのテーブルには、数十本ずつ飲料水ボトルが並べられていた。ボトルは高級ワインを入れるような素敵なボトルである。ボトルはコルクでしっかりと栓がされていた。ボトルのラベルの上には、「この水は飲み水です」とあるが、栓抜きが無い。ウェイトレスに栓抜きを頼んだものの生返事だけでらちがあかない。で、勢いこじ開けようとしたら、ポキッと先がへし折れて、このありさまである。 ラベルには縦方向に白字で、食料と思考のための水とあった。「食料をつくるための水も飲み水のための水も、世界では簡単に手に入らない地域がある。」コルク栓は、そのメッセージだった。そして、飲み水をワインビンに詰めたのは、「水の方が高級ワインよりも高価な地域がある」というメッセージだった。 ◇◇◇◇ 「雨水利用を進める全国市民の会」があります。ここにも、内外の取り組みが紹介されています。「路地尊」などの個別の事例はこちらにも載っています。
http://www.rain-water.org/index_j.html 私はこの資料館でたっぷりと2時間近く愉しんできました。このニュースで様子が分かったからいいや、というワケにはいかないんですよ〜。信濃毎日新聞で書こうと思っていることは、このニュースには書いていないし、それから、絶対に行かなくては味わえない「至福の音」があります。 ひとつは(最近隠れたブームだそうですが)「水琴窟」。土に埋めたカメに落ちる水音を竹筒に耳をあてて聞きます。本当に不思議な、それこそ琴線に触れる「響き」です。 もう一つはアフリカの「レイン・スティック」です。80センチ〜1メートルほどの筒を傾けると、本当に雨の降る音がするのです! それもいろいろな雨の音が!いまは楽器として使われると書いてありましたが、アフリカでは雨乞いで使ったとのこと。この音や水琴窟の響きは、文字では伝えられません! 雨水資料館は、亀戸から東武亀戸線で3つ目「小村井」駅下車、徒歩10分。
住所は墨田区文花1-32-9。開館日は、火、木、金、土、日の10〜4時。
問い合わせは、区環境保全か雨水利用担当(01-5608-6209)。 東武亀戸線って、今日はじめて乗りました〜。土曜日の昼間のせいでしょうか、2両編成の電車がのどかに連れていってくれました。「雨粒」のことをえいごでは「raindrops」といいます。ドロップですね。ときたら、自然に「ドロップスの歌」が浮かんできます。 ♪ むかし、泣き虫かみさまが
うれしくて 泣いて ♪
かなしくて 泣いて ♪ 雨水資料館で、もうひとつ気に入ったのは、「雨水利用技術のポイントは、エネルギーもお金もかけずに、いかにきれいな水を集めて溜めるかである」ということです。いろいろな雨水利用タンクや設備の展示(手で触れられる)がありますが、どれも下町の町工場がつくっています、という感じ。「エネルギーもお金もかけずに」となると、儲け至上の企業の出る幕はないのでしょう。 天からのドロップスを、大事に受けとめて大事に使わせてもらおうね、それも楽しみながらね!という、のんびり大らかな気分になって、またまた2両編成の電車に揺られて帰路についたのでした。
 

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