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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2005年05月17日

地球環境問題−その根本的原因と解決策(2)(2000.01.03)

大切なこと
 
もう少し詳しく書きます。 まず、地球環境問題の原因、 人口増加(X富裕層の増大) X 世界経済の拡大 → 地球が「つぶれちゃう」 という状況になったのはなぜか、についてです。 地球が誕生したのは46億年前といわれています。そして人類の祖先が地球に誕生したのは400万年前。農耕をはじめたのが1万年前。今日のような技術や生産に支えられた人間の生活が始まったのは、18世紀後半に起こった産業革命以後です。そして第2次世界大戦後、大量生産・大量消費の時代が始まりました。 長い「地球の歴史」のほとんど、そして人類が誕生した後も、「つい最近」までは、地球環境は人為的な破壊にさらされることはなく、「環境問題」など存在していませんでした。 地球環境が急速に悪化し、「地球環境問題」が台頭し脅威を増してきたのは1950年以降です。地球の歴史の「1億分の1」に過ぎないこの50年間が、地球を取り返しのつかないほど変えてしまおうとしているのです。 この20世紀後半の50年間に、何が起こったのでしょう? ひとつは、人口が爆発的に増加しました。1950年には25億だった世界の人口は、1999年には60億人に達し、わずか50年間に2.4倍になっています。 1万年前に農耕が始まって人間の生活は安定し、人口が増え始めました。紀元前後の世界人口は約3億人といわれています。その後も漸増し、18世紀後半に産業革命が始まるころには、約10億人でした。そして1950年以降に「人口爆発」が生じたのです。 1950年以後に大きく増大したのは、人口だけではありません。世界経済も、1950年の6.4兆ドルから、1998年には39兆ドルへと、6倍も拡大しています。 この世界経済の急激な増大と人口の急増とがあいまって、この50年間に、エネルギー使用量は爆発的に増大し、紙の使用量は6倍近くに、穀物消費量は3倍近くに、水の使用量は3倍に、漁獲量は5倍近くに増えています。 人口(単純な人口増X富裕層の増大)と世界経済(それに伴って資源を取り出す量や排出する廃棄物などの量)は、この50年間に何倍にもなりました。 でも! 地球は大きくなれません。 (この地球上に乗っかっている人の数の増大X経済の規模の拡大)に、地球が「もうつぶれちゃう・・・」というのが、現在の状況なのだと思います。 温暖化、環境ホルモン、ダイオキシン、砂漠化、オゾン層枯渇、森林消失等々、「地球環境問題」と呼ばれる様々な問題は、この「ひずみ」の兆候だと思います。まえに「もぐら叩き」と書きましたが、個々の問題の対処に走り回っていても、「地球がつぶれそう」な状況を解決しない限り、次から次へと「週替わりの環境問題」が登場してしまうのだと思います。 では、どうしてこの50年間、あらゆる分野で「倍々ゲーム」となったでしょうか?その出発点は、産業革命でした。 産業革命以前の人間の環境に及ぼす影響は、「身の丈」程度でした。つまり、どこかへ移動するにも、自分の足で歩くか、せいぜい馬の駆ける速さでしか移動できませんでした。地下資源を掘るにしても、地下水を汲み上げるにしても、さまざまな道具を使うようになりましたが、基本的に人力や家畜の力の及ぶ範囲やスピードでしか採掘・汲み上げはできませんでした。それを一変したのが、「産業革命」だったのです。 かつては徒歩や馬の速度でしか移動できなかった人間は、鉄道や汽船によって、何倍、何十倍もの速度や範囲に移動ができるようになりました。最初は鉱山で使われた蒸気機関は、人手とは比べものにならない能率で作業を行いました。 「地球環境」に対する産業革命の最大の意味は、エネルギーと機械を使用するようになった人間が「身の丈」の何倍もの影響を環境に与えるようになったことでしょう。そしてこの50年間、科学技術がさらに急進展したために、私たちひとり一人が「身の丈」の数倍どころか、数百、数千倍の影響を地球に与えるようになってきたのです。 そして、私たちひとり一人が「身の丈の数十倍、数百倍の影響を与えている」ことが自分たちから見えないことが、悪化を加速しているのではないかと思います。 たとえば、結婚式で交わされる「金の指輪」が幸せの象徴であることは皆知っていても、そのちっちゃな指輪1つが新郎・新婦の指に到着するためには、掘り返した鉱山、精製や処理に使った水、輸送に必要な燃料その他で3トンもの資源が消費されていることは知られていません。 かつてコンピュータやインターネットが流行り出した頃、at your fingertips という表現によくお目にかかりました。「あなたの指先で、クリックひとつで、こんなにスバラシイ世界が拡がるのですよ」という感じでしょう。 同じように、at our fingertips で「私たちの指先で、ボタンを押しても、スイッチを入れても、こんなに大きな影響を地球環境に与えているのですよ」ということになるはずなのですが、こちらの方は理解されていません。 かつて人間の数が少なく、経済規模も小さかった頃には、どれだけ木を切り、水を汲み上げても、「無限の自然や資源」はビクともしませんでした。何を燃やしても、何を川や海に流しても、自然の「無限の浄化能力」がまったく問題なく吸収してくれたのです。 しかし、60億を超える人間が、身の丈の何倍もの勢いで、これほどの経済活動を行うようになった今、森林は急速に消失します。植えたり木が育つより早く伐採しているのですから。川や地下水も枯渇します。雨が降って川に流れ、地下の帯 水層に貯えられるという水文サイクルを無視して、取水しているからです。経済から排出される二酸化炭素は、自然の炭素固定能力を超えてしまうので、大気中に蓄積されて温室効果をもたらし、地球の温暖化を進めています。 では、経済発展は悪なのでしょうか? 環境主義者の中には「経済発展が諸悪の根元、自動車を捨てよ、昔に戻れ」と主張する人もいます。私は少し違う考え方です。 経済発展は明らかに人類の生活向上に資してきました。世界経済が発展する中で、均等な形ではないにしろ、所得が上昇し、絶対貧困層は大きく減少し、世界の平均寿命は 1950年には46歳でしたが、1998年には 66歳に達しています。識字率も大きく改善しているのです。 しかし世界にはまだ、1日1ドル以下でやっと生きているという絶対貧困に苦しむ人々が13億人もいます。最低限の生活レベルをすべての人に保障するためには、これからも世界の経済を発展しつづける必要があると思います。 ただ「どのような経済を」「どこに」「どのレベルまで」発展させるか、を考えなくてはなりません。現在の世界経済の仕組みや進路のままでは、地球がつぶれてしまうのは時間の問題ですから。
 

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