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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2005年05月17日

環境マーケティングのススメ

コミュニケーション
 
「学習スタイル」「認知スタイル」は人によってずいぶん違います。視覚的なインプットが得意な人、聴覚が得意な人、運動的(手や体を動かすとか)に学ぶ人。 また、事実や数字が"効く"人、イメージが効く人、情に訴えられると弱い人、「○○さんも・・・」と有名人や知人の名が出ると動く人。じっくり積み上げて考えて結論を出す人、直感的に決める人・・・などなど意思決定スタイルもいろいろあります。 最近、私はあちこちで「環境マーケティング」ということをいうのですが、あるメッセージをどう伝えるか、というのも、マーケティング的視点で考えるべきことのひとつです。「どう伝えるか」を考えるには、「どういうタイプの人にはどう伝えるか」とセグメントに分けて考えなくてはなりません。 人はだれでも、自分の得意なタイプやアプローチを前提にしています。しかし、「自分に効くアプローチ(=自分が無意識にとるアプローチ)は、いろいろなタイプのひとつだ」と認識すれば、アプローチのバリエーションも効果も高くなると思います。 学生時代アルバイトをして以来、ずっとおつきあいのあるウィルソン・ラーニング・ワールドワイドという企業内教育専門の会社があります。「人と組織がその持てる力を最大限発揮できるように」お手伝いしている企業です。 ここでいろいろなおもしろいプログラムに関わったり触れてきたのですが(企業向けです)、NGOにもぜひ採り入れてほしいなぁ、という見方やアプローチもたくさんあります。たとえば、営業担当者向けのプログラム。 何をもとにどのように決定をするか、ということに注目して人間をいくつかのタイプに分け、自分のタイプを知ると共に、顧客のタイプの見分け方を学ぶ。そして、相手のタイプに自分のタイプをあわせて話を進める、というソーシャル・スタイルというプログラムは、だれかを説得したいときにも、不特定多数の人を動かそうとするときも、ヒントにもなります。 余談ですが、ウィルソン・ラーニング・ワールドワイドは、グローバルに展開している会社なので、このタイプ分けを国で比較すると、国民性も出ちゃう、というおもしろい話を聞いたこともあります。グローバルに展開しているNGOにも参考になりませんか? また、上記HPに載っているカウンセラー・セールスというプログラムは、セールスのプロセスに注目したものです。顧客の心理状態に沿って 「不信」:コイツ(営業担当者)は本当に信じられるのか? →信頼関係の構築 「不要」:別に困っていないから。 →問題を認めあう 「不適」:問題は認めるけど、よい解決策はない。 →解決策を示す 「不急」:今はまだ要らないかもしれない。 →決断を促す という具合に進めていきます。「不信」状態の顧客にいかに有効な解決策を示しても聞く耳を持たないでしょうし、「不要」状態の顧客に決断を促しても逆効果になるばかりですよね。このような見方は、環境マーケティングにもとても役立つと思います。 環境NGOも、いってみれば「自分たちの伝えたいメッセージや情報」をセールスしているのですよね。相手が「買って」(受け入れて動いて)くれないと、その活動は報われません。だからこそ、セールスプログラムやマーケティングの考え方に学ぶところが多い、と思うのです。 ウィルソンのこの2つのプログラムを組み合わせれば、「どういうタイプの人が」「プロセスのどこにいるか」、そして「自分はどういうタイプか」をわかって、いちばん有効な働きかけができるのだろうなぁ、と思います。 そこまでしなくても、少なくとも「メッセージを伝えたい不特定多数の人々には、いろいろな受け取り方のタイプがある」ことを認識していれば、(自分が得意でないものも含めて)いろいろなアプローチを工夫しよう、と考えられるでしょう。 というわけで、先に紹介したアメリカの環境NGOのアニメ付きHPは、あまりこれまで日本では見なかったバリエーションの一つとして参考になるかな、と思ったのでした。 とはいっても、ひとつの団体や組織ですべてをカバーすることは難しいですよね。そこで、いちばん有効で楽しいのは、「自分は綿密な統計資料を整えるのが得意」「自分はイラストでイメージを刺激するのが得意」「自分は喋って説得するのが得意」などなど、同じ目的を持って集った個人や団体が自分の「得意技」を出し合って、協働(コラボレーション)することでしょうね。 これを「ジャズのように」という方もいます。それぞれ独立しているけど、合わさったときに、何倍もの効果を生み出すのですね(そしてきっと、楽しい!)。 同じメッセージをいろいろな楽器で演奏したとき、何重唱かでハモったとき、より強くより美しく、多くの人の心に届くのだと思います。
 

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