"ULEZ Zone” by Matt Brown is licensed under CC BY 2.0
暑いですね!
夏は暑いものですが、今年の夏は異常な暑さですね。「異常」とは「常とは異なる」という意味ですが、この暑さが「常なるもの」になりつつあるようで、一刻も早く温暖化を止めなくては!
The Business of Doing Better"を掲げるウェブサイト「Triple Pundit」に、世界の都市の取り組みの記事がありました。参考になると思いますので、編集部の許可を得て、日本語でご紹介します。
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Net-Zero Cities: Local Approaches to a Global Problem
ネット・ゼロ都市:グローバルな課題に対するローカルな取り組み
ネット・ゼロ都市への動きは、「ゼロカーボン都市」や「カーボンフリー都市」など、異なるいくつかの名称やイニシアチブのカテゴリーに入るもので、多くの場合、世界の都市部の脱炭素化に向けた共同努力を指している。あらゆる規模の都市が、共有するさまざまな方法で、それぞれのニーズに応じた個別の計画を立てている。
いくつかの主要都市では、当初早ければ今年中にもネット・ゼロを達成するつもりであったが、現在は大半の都市が2030年から2050年のどこかの時点で達成する計画だ。遠い先の話に思えるかもしれないが、それを可能にするためのプロジェクトはすでに進行している。注目すべき取り組みをいくつか紹介しよう。
再生可能エネルギー100%の達成
今月初め、シカゴが2017年に立てた目標を達成したことで話題となった。その目標とは、「2025年までに市が所有するすべての建物を再生可能エネルギーで賄う」というものだ。1月1日の時点で、オヘア国際空港やミッドウェイ国際空港をはじめ、消防署、水処理工場、公立図書館に至るまで、すべての電力が100%再生可能エネルギーによって供給されている。
電力の大半は、市南部に新設された593MWの太陽光発電所から供給されている。残りはREC(再生可能エネルギー電力証書)の購入による。RECは、再生可能エネルギーの発電による環境価値を表しており、電力そのものとは別に販売され、組織が持続可能性の目標を達成する一助となっている。
すでに、市が地元の太陽光発電所と結んだ電力購入契約によって、送電網にはより多くの再生可能エネルギーが供給されており、環境メディアGristによれば、その量は全米における同様の大多数の契約の中でも、ヒューストンに次いで2位だとしている。それでもシカゴでは、市の電力需要によって、RECの購入ではなく、地元のクリーンエネルギー開発に拍車をかけたいとしている。
市はこの節目に年間29万トンの二酸化炭素の排出削減を期待している。この量は車道から62,000台の車を取り除くことに相当する。これは、「2035年までに市内で消費される全電力を再生可能エネルギーでまかない、2040年までに二酸化炭素排出量を62%削減する」という大計画の一環である。
100%再生可能エネルギーの達成は新しいことではない。2004年、コロラド州アスペンが初めてこの計画を採用し、目標の達成も1年前倒しの2014年であった。ただ、人口約270万人のシカゴと6,600人のアスペンでは規模が違う。シカゴはこれまでで、この課題に挑んでいる米国最大級の都市のひとつなのだ。
化石燃料フリーの道路への道筋
各都市は、自治体車両の電化、公共交通機関の改善、ウォーカビリティ(歩きたくなる街)の向上に努めながら、公共道路での温室効果ガス排出削減にも取り組んでいる。ロンドンが2019年に超低排出規制区域(ULEZ)を発表した際、賛否の渦が巻き起こったが、欧州のほかの多くの都市でも同様である。
ULEZとは、都市全体の空気質を改善するために策定された渋滞課金制度で、排ガス量の多い車に対して、指定区域を走行する際に1日あたり12.50ポンド(約15.50米ドル)の支払いを求めるものだ。この政策が施行されてから、市内の一般的な日において、排出基準を満たす車両の割合が96%に増加した。これにより当局は2023年にこの区域をロンドン全域に拡大するよう指示した。
ロンドン交通局によると、ULEZは有害な二酸化窒素の排出量を市中心部で53%、郊外で21%削減に貢献したとしている。最近では、研究者らの調査によりほかのメリットも確認されている。ULEZの導入前に比べて、より多くの子どもたちが徒歩や自転車、または公共交通機関を利用して登校するようになった。調査対象となったロンドン中心部の子どもたちのうち、42%が通学手段を自動車からこうした手段に切り替えた。ただし、切り替えた理由についての調査は行われておらず、自転車レーンの安全整備など補完的な改善が作用している可能性があるものの、住民の健康や環境衛生にとっては有望な進展である。
欧州の都市ではすでに300か所以上に低排出区域が設けられており、さらに今年中に500か所以上が計画中であると、支援組織Transport and Environmentの調査で示されている。この流れは欧州にとどまらず、ロサンゼルス、ケープタウン、メキシコシティ、東京、バンクーバーといった都市にも広がっている。
ニューヨークのように、大気質の改善や公共交通機関への資金提供を目的として、渋滞エリアでの運転に課金制度を導入しようとする都市もあり、ロンドンでは2003年以降この政策がうまく実施されている。したがって、今年さらに多くの主要都市が低排出区域に向けた取り組みを進めることになっても不思議ではないだろう。
よりクリーンな建設
地球上の人口の半数以上が都市に住んでおり、その数は2050年までに3分の2に達すると予測されている。都市の成長に伴い建設が進む中、建造環境は世界の炭素排出量の約40%を出している。ネット・ゼロに重点を置き、今最も急成長している都市のひとつであるノルウェーのオスロのような都市にとって、地元の建設業による温室効果ガスの排出をなくすことは極めて重要だ。
オスロは、すでに公共交通のゼロエミッション化の取り組みや大胆な排出削減目標で注目の都市として地位を確立しているが、2023年に、建設業界をより持続可能にすることに焦点をあてたグローバルネットワーク「C40 Cities」のイニシアチブに加盟した。C40(世界大都市気候先導グループ)とは、自治体首長らによる連合体で、各都市の排出量を半減するために協働している。
オスロでは、2019年に排出ゼロの建設機械の導入促進を始めた。地元市場の建設契約のうち5分の1(金額ベース)は、市役所による契約であるため、ここから比較的速やかに業界全体の変化が起きた。
C40の報告によると、現在オスロ市内の建設現場の77%が排出ゼロである。例えば、進行中の多目的ビルの改修プロジェクトでは、ゼロエミッションの建設機器のおかげで、二酸化炭素の排出はわずか17トンと予想されている。それとは対照的に、従来型の設備だと排出量がおよそ250トンに達するとされている。
今年から、オスロではすべての公共プロジェクトにおいて、ゼロエミッションの建設機器の使用が求められている。
ロンドンも、C40のコンストラクション・イニシアチブに加盟しており、このほど新たに建設現場に低排出区域を設けた。ここはNon-Road Mobile Machinery Low Emission Zoneと呼ばれ、2040年までに建設現場においてゼロエミッションの建設機器のみを使用することが求められている。
(訳者注)
Non-Road Mobile Machinery Low Emission Zone(NRMM LEZ)(仮訳:オフロード用移動機器低排出区域)
NRMMはオフロード用の移動機械のこと。特に建設業においてロンドンの大気汚染の主要な原因となっており、NRMM LEZはNRMMによる建設現場での排出を制限する区域を指す
https://www.london.gov.uk/programmes-and-strategies/environment-and-climate-change/pollution-and-air-quality/nrmm
もちろん、ネット・ゼロ都市への動きは完璧ではない。特に組織化されておらず、都市間で進捗を追跡したり比較したりすることも簡単ではない。「カーボンフリー」であることを都市が宣言できる定められた基準があるわけでもない。さらに、カーボンオフセットや再生可能エネルギーのクレジット、低排出区域といった、目標達成のための方法の中にも、議論を呼ぶものがある。
それでも、こうした動きから、ひとつの都市が世界に影響をもたらすローカルな変化をつくりだすことができる、ということがわかる。まさに、いくつも都市が力をあわせてそうすることができるように。グローバルな協力や進展はさまざまな形で起こるのだ、ということを気づかせてくれるのだ。
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日本の市町村も、「ゼロカーボン」「脱炭素」を掲げて取り組みを進めていますが、「どこから、何をやったらよいか、わからない」という声も聞きます。日本の市町村の良い取り組みもぜひ紹介したいと思いますので、良い事例がああったらぜひ教えてください~!