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つながりを読む

世界の原発を3倍に???

2023年12月05日

アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中のCOP28(第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議)から、いろいろなニュースや発表がありましたね。

日本が4年連続で、不名誉な「化石賞」
https://www.alterna.co.jp/107229/

政府はこの受賞について、「日本政府が進める温室効果ガスの排出削減対策が講じられていない石炭火力発電所の新規建設は行わないという日本の脱炭素の取り組みを世界に発信していきたい」と述べているとのこと。

この発言が化石賞をもらっちゃったのですが......。
「温室効果ガスの排出削減対策が講じられていない石炭火力発電所の新規建設は行わない」ということは、
(1) 温室効果ガスの排出削減対策が講じられている石炭火力発電所の新規建設は行う
(2) 温室効果ガスの排出削減対策が講じられていない石炭火力発電所も継続稼働する
ということ???

もう1つ、びっくりしたのは、「2050年までに世界の原子力発電所の発電容量を3倍に増やす」という宣言が出され、日本も含めて、22カ国が賛同したとの報道です。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231202/k10014275921000.html

こちらについて、NPO法人原子力資料情報室がわかりやすく、現状や見通し、意味合いなどを解説してくれているので、共有させていただきます。

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~

【原子力資料情報室声明】
人のふんどしで相撲を取る原子力業界
ー米国など22か国の原発3倍宣言についてー

https://cnic.jp/50240 (掲載したグラフはウェブサイトをご確認ください)

2023年12月5日

NPO法人原子力資料情報室

ドバイで開催中のCOP28において、米国や英国が主導して2050年までに世界の原発設備容量を3倍にするという宣言を発表した[i]。参加国は、米国、ブルガリア、カナダ、チェコ、フィンランド、フランス、ガーナ、ハンガリー、日本、韓国、モルドバ、モンゴル、モロッコ、オランダ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、ウクライナ、アラブ首長国連邦、英国の22か国である。

 IEA(国際エネルギー機関)が今年10月に発表したWorld Energy Outlook 2023のAnnounced Pledge Scenario(APS、各国の公約実現シナリオ、2100年に1.7℃の気温上昇に相当)によれば、これらの国々が帰属する地域のうち、原発の発電電力量が3倍以上になるエリアは中東、アフリカのみだ。それらも全体から見れば微々たる量であり、大幅な伸びが期待されているのは中国およびインドである(図1)[ii]。今回の宣言は設備容量であり、発電電力量とまったくイコールになるわけではないが、概ね比例関係にある。日本も含め、宣言国の多くは自国では増やすつもりのあまりない原発を世界では3倍にするのだという。まったくあきれるほかない宣言だ。 

 ところで、この宣言では原発設備容量を3倍にするための環境整備として、現在、原発関連プロジェクトを融資対象としていない世界銀行やその他の金融機関に対して、原発を融資対象とするよう働きかけるという。では、どのような国が原発を導入しようしているのか。

 COP28に先立ちパリで開催されたWorld Nuclear Exhibitionで11月28日、IAEA(国際原子力機関)のグロッシー事務局長は数年以内に12~13か国が新しく原子力諸国の仲間入りをするだろうとし、ガーナ、ケニア、モロッコ、ナイジェリア、ナミビア、フィリピン、カザフスタン、ウズベキスタンがその候補であると発言した[iii]。

 図2にIAEAが名前を挙げた候補国と今回の宣言に参加した国で原発未導入の国の国家歳出額と近年の原発導入コストを示した。大半の国で原発の導入コストが国家歳出額を上回っていることがわかる。比較的導入コストが低いとされる小型モジュール炉であるNuScaleのプロジェクトでさえ100億ドル近い。なお、このプロジェクトのコストは出力比で考えれば他の大型軽水炉の足元にも及ばない。

 この候補国のうち、ガーナは2022年に債務不履行に陥った。またIMFによれば世界の70の低所得国のうち、ケニアを含む26か国が過剰債務に陥るリスクが高いとされている[iv]。その他の国でも、国家の歳出規模に匹敵または上回るようなプロジェクトに支出すれば、当然、財政はひっ迫する。

 原発はその本質的な危険性から導入国の社会・経済が安定している必要がある。しかし、財政基盤がそれほど大きくない国に原発を導入しようとすれば、巨額の債務を抱えることになる。そして過剰な債務が国家を不安定化させた事例は枚挙にいとまがない。

 原発は初期投資が高すぎて自国で増加させるあてがあまりない。そこで財務基盤のそれほど大きくない国へも輸出したい。その際、世銀などが比較的低利で融資するよう圧力をかける。というのが今回の宣言である。

 図3にIPCCのシナリオに基づく原発と再生可能エネルギーの発電ミックスに占める比率をIAEAが分析したグラフを示した[v]。これによれば、1.5℃目標を達成できるシナリオは大きく3パターンあることがわかる。すなわち(1)再エネ80~100%程度・原子力0~10%程度、(2)再エネ60~70%程度・原子力10%程度、(3)再エネ35~45%程度、原子力25~30%程度、である。IAEAが自ら認めている通り、原発の比率を高めれば再エネの比率が下がるのだ。IAEAは原子力の出力調整運転を推している[vi]。しかし理論的・技術的に可能であることと、それが経済的に可能であるかは全く別の問題だ。

原発は初期投資が極めて高く、燃料費が安い。その高い初期投資を長期に安定運転できてようやく回収できる電源だ。つまり頻繁に出力調整運転していては採算が合わない。だが、再エネ比率が高まった世界では頻繁に出力調整が必要になる。だから原子力と再エネはそもそも相性が悪い。そして、再エネ比率が高い方が1.5℃シナリオや2℃シナリオの点が明らかに多い。原発と再エネは相反する関係性にあるうえ、原発を増やすことは気候危機対策としてリスクが高い。

 今回の原発3倍宣言以外に、COP28では、EU主導で118か国が参加した、再エネの設備容量を3倍、エネルギー効率改善率を現在の2%から4%に倍増するという誓約も発表された[vii]。この目標年は2030年である。原発は計画から運転開始まで20年、場合によってはもっと長時間かかることもある電源だ。今、必要とされる脱炭素の役には立たない。原発3倍宣言が目標年を2050年としてことからも明らかなとおり、原発は脱炭素を遅らせる。

 World Energy Outlook 2023によれば、今回の宣言に参加しなかった中国とインドは、2022年はそれぞれ418TWh、50TWhだったのが、APSシナリオで1,483TWh、355TWhへとそれぞれ3倍以上増加すると見込まれている。しかし、これも大きな疑問だ。中国の原発は急増しているとされているものの、その増加スピードは減少している。インドは多くの建設計画があるもののほとんどは遅延しているか、着工にもたどり着いていない。

 今回の宣言はきわめて無責任かつ非倫理的だといえる。気候変動対策の名の元、自国の原子力産業の生き残りのために、コスト高で導入に時間がかかり、気候変動対策にもならない原発を比較的ぜい弱な国に売りつけようとしている。しかも宣言した国の多くは日本も含め自国に導入する余地もほとんどないのだ。3倍にするのは宣言に参加していない別の国なのだ。「人のふんどしで相撲を取る」を絵にかいたようだ。そしてその絵に実現可能性はない。

以上

[i] www.energy.gov/articles/cop28-countries-launch-declaration-triple-nuclear-energy-capacity-2050-recognizing-key
[ii] www.iea.org/reports/world-energy-outlook-2023
[iii] www.reuters.com/business/energy/iaea-says-dozen-countries-be-equipped-with-nuclear-power-2023-11-28/
[iv] www.imf.org/external/pubs/ft/dsa/dsalist.pdf
[v] www.iaea.org/sites/default/files/iaea-ccnp2022-body-web.pdf
[vi] www.iaea.org/publications/15098/nuclear-renewable-hybrid-energy-systems
[vii] ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_6053

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2023年12月8日 15時~16時

原子力資料情報室ウェビナー
「原発の気候変動脆弱性研究会報告書 原発は気候危機に耐えられるか」

https://cnic.jp/50235

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現在開催中のCOP28では、原発を気候変動対策にという主張が原子力利用国を中心に発信されています。

一方で、気候変動の深刻化とともに、気候変動の長期に渡る影響がある程度見えてきました。そして、気候変動による異常気象が原発に与える影響についても、多くの学術論文が発表されるようになっています。

しかし日本では、原発のCO2排出量の低さには着目されるものの、気候変動が原発に与える影響についてはほぼ関心がもたれていません。

そこで、NPO法人原子力資料情報室は、原発の気候変動脆弱性研究会を立ち上げ、気候変動対策として原発が本当に使えるシステムなのかを検討するため、原発の気候変動脆弱性に関して、現時点の状況の取りまとめを行いました。

本報告書の内容について報告会を開きます。

ぜひご参加ください。

※報告書はこちらからダウンロードいただけます。https://cnic.jp/50004
※本研究は一般社団法人アクト・ビヨンド・トラストの2022年度企画助成事業を受けて実施しました。

■ 日時:2023年12月8日(金)15:00~16:00
■ 報告:松久保肇(原子力資料情報室)
■ 参加費:無料(ご寄付歓迎 https://cnic.jp/support/donation

■ ご参加お申し込み:ご参加方法:Zoomを用いて開催します。以下のURLから事前のご登録をお願いいたします。

https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_ngpD8hSWRK6D3hc6vVhVlw

■ 主催・お問合せ:原子力資料情報室(CNIC)

https://cnic.jp/contact / TEL.03-6821-3211

 

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