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その水素は何色?

2023年07月30日
その水素は何色?

Photo by Pawel Czerwinski on Unsplash

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気候変動対策や"未来のエネルギー"として、「水素」の名をよく聞くようになりましたね。

日本政府は2017年に「水素基本戦略」(2023年改訂)を策定しました。2020年には「グリーン成長戦略」を出し、水素産業の発展を支援し、世界をリードする、と打ち出しています。

世界の他の国でも、それぞれの水素戦略を策定し、"水素産業"の支援に力を入れ、「エネルギー源としての水素」が世界的な脚光を浴びるようになっています。

日本では、「第6次エネルギー基本計画(2021年10月)」で、2030年度における電源構成のうち、「水素・アンモニアの割合が1%」と初めて明記されました。「たったの1%?」と思うかもしれませんが、これは換算すると、約90億kWhと、平均的な原子力発電所1基分と同程度ですから、かなり規模です!

また、水素は発電用だけではなく、製鉄など電化が困難な産業や、輸送部門の燃料としても重要な役割を果たす可能性があり、さまざまな業界から注目されています。

しかし、水素については気をつけなくてはならないことがあります。水素は「エネルギー・キャリア」(エネルギーを運ぶもの)であるので、そのエネルギーが何で作られたかによって、その水素は環境に良いのか良くないのかが決まってくる、ということです。

電気と同じですね! 再エネで発電した電気も、火力発電所で発電した電気も、「電気は電気」ですが、その発電方式によって、CO2排出量などの環境負荷はかなり異なりますよね。

というわけで、「水素」がすべて「良い!」わけではないということです。水素の話を聞いたら、「その水素はどうやって作ったの?」と聞き返さないといけない、ということです!

「水素のつくり方」を区別するために、「グレー水素」だの「グリーン水素」だの「ブルー水素」だの、という言葉が飛び交っています。水素自体に色はついていないのですが、つくり方(そしてCO2排出)を区別するための色分けです。

現在、製造されている水素の主流は「グレー水素」です。

「グレー水素」とは、天然ガスやメタンを用いるもので、触媒を用いてメタンガスを水素と一酸化炭素に変換する水蒸気メタン改質を行って水素を取り出すものです。その過程で発生するCO2はそのまま大気中に放出されてしまうため、環境には良くない、つまり、「グレー」と名づけられています。残念ながら、現在一般的な水素の製造方法は「グレー」なのです。

その過程で発生するCO2をそのまま大気中に排出するのはよくないので、そのCO2を回収して、地中に埋めることで、実質的なCO2排出量をゼロにしよう、というのが「ブルー水素」です。CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)技術などを活用します。

では、「グリーン水素」とは? いちばん環境に良さそうな色ですね? グリーン水素は、再生可能エネルギーで発電した電力を用いて、水を電気分解することで得られる水素のことです。製造過程からのCO2排出がありません!

グリーン水素は、再エネ電力で水を分解する方法なので、化石燃料を使用しません。現在、世界的に再エネのコストが下がってきているため、今後の脱炭素エネルギー源として大きな期待がかかっています。

まず押さえておくべき「水素カラー」は、いま説明した「グレー」、「ブルー」、「グリーン」ですが、ほかのオプションも含めて、虹のような「水素スペクトル」が提示されることもあります。万国共通の定義が決まっているわけではないのですが、どんなものがあるのか、ちょっと見てみましょう!

●ブラック水素・ブラウン水素
天然ガスではなく、黒炭や褐炭を用いて製造された水素のこと。グリーンの対極にあり、グレー水素より環境負荷が大きい

●ピンク水素
原発で発言した電力で水を電気分解してつくる水素のこと。「パープル」「レッド」と呼ばれることもあります。

●ターコイズ(青緑色)水素
新しく登場した製造方法で、実用規模での生産はまだ確立されていませんが、メタン分解と呼ばれるプロセスを使用して水素と固体炭素を生成するものです。将来的には、再エネで動力を供給し、炭素を永久的に固定化することで、低CO2排出の水素として評価される可能性がある、とされています。

●イエロー水素
これも比較的新しい用語で、太陽光を利用した電気分解によって生成される水素を指します。太陽=黄色はわかりやすいですね!

●ホワイト水素
地下の堆積物中に存在している天然由来の地質学的な水素です。フラッキング(頁岩ガス・石油の採掘技術)によって得ることができる、とされていますが、現在のところ、この水素を利用しようという戦略はありません。

いろいろあって面白いですね! 「水素」と聞いたら、「何色の水素なんだろう?」と確認するクセをつけたいですね。水素については、「つづき」も書こうと思っているので、お楽しみに。

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