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IPCC「第6次統合報告書」政策決定者向け要約(SPM)より

2023年03月24日
IPCC「第6次統合報告書」政策決定者向け要約(SPM)より

IPCC 第6次統合報告書

https://www.ipcc.ch/report/ar6/syr/

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が3月20日、気候変動について、科学的知見に基づき、現状の評価や対策をまとめた「第6次統合報告書」の政策決定者向け要約(SPM)を公表しました。

この第6次統合報告書は、2021年と2022年に公表された3つの作業部会の報告書をもとにしたもので、9年ぶりの統合報告書となります。3つの作業部会とは、「自然科学的根拠」「影響・適応・脆弱性」「緩和」です。

報告書のキーポイントはこのあと紹介しますが、世界の平均気温は産業革命以前と比べて、2011年~2020年に1.1℃上昇しており、このままでは、近いうち1.5℃に達する可能性が高いと警鐘を鳴らしています。

温暖化を1.5℃に抑えるためには、2019年レベルと比べて、2030年にCO2は48%、GHGは43%の削減、2050年にはCO2は99%、GHGは84%の削減が必要として、現在の各国の削減目標や削減実績では足りないと強調しています。そして、「この10年が勝負!」と繰り返し述べています。

統合報告書のSPMの概要(各セクション冒頭のヘッドライン・ステートメントの暫定訳)はこちらからご覧になれます。
https://www.env.go.jp/press/press_01347.html

「第6次統合報告書」政策決定者向け要約(SPM)の原文はこちらからどうぞ。
https://www.ipcc.ch/report/ar6/syr/


「第6次統合報告書」政策決定者向け要約(SPM)から、私が大事だと思うポイントを抜粋して紹介します。分量は多いですが、ざーっと目を通していただくと、報告書の伝えたいメッセージがわかると思います。

(早く伝えることを優先したため、翻訳や理解に誤りがあったらゴメンナサイ!お知らせいただけたらありがたいです)


<観測された温暖化とその原因>
・2011年から2020年にかけて、世界の表面温度は1850年~1900年を1.1℃上回った

・地球の表面温度は、1970年以降、少なくとも過去2000年間の他のどの50年間よりも速く上昇した

・世界の温室効果ガス排出量は増加し続けている

・1850年から2019年までの170年間の累積純CO2排出量は2400±240GtCO2であり、そのうち、約42%は最後の30年間(1990年~2019年)の間に出ている

・2019年、大気中のCO2濃度(410ppm)は少なくとも200万年前のどの時期よりも高く、メタン(1866ppm)と亜酸化窒素(332ppm)の濃度は少なくとも80万年前のどの時期よりも高い

・2019年、世界のGHG排出量の約79%は、エネルギー、産業、輸送、建築物を合わせたセクターから、22%は農業、林業、その他の土地利用(AFOLU)からもたらされた

・GDPのエネルギー原単位とエネルギーの炭素原単位の改善によって化石燃料の燃焼および工業プロセス由来の由来のCO2排出量は減っているものの、産業、エネルギー供給、輸送、農業、建物における世界の活動レベルの上昇による排出量の増加のほうが大きい

・2019年、世界人口の約35%は、1人当たり9tCO2-eq以上排出する国(CO2-LULUCF:土地利用、土地利用変化. 及び林業由来の正味のCO2排出量を除く)に住み、41%は一人当たり3tCO2-eq未満しか排出しない国に住んでいる。後者のうちかなりの割合が近代エネルギーサービスへのアクセスを欠いている

・後発開発途上国(LDC)と小島嶼開発途上国(SIDS)の1人当たりの排出量は、CO2-LULUCFを除く世界平均(6.9tCO2-eq)よりもはるかに少ない(それぞれ1.7tCO2-eqと4.6tCO2-eq)

・1人当たりの排出量が最も多い10%の世帯は、世界の消費に基づく家庭からの温室効果ガス排出量の34〜45%を占めており、下位50%の世帯は13〜15%を占めている。

<観測された変化と影響>
・大気、海洋、雪氷圏、生物圏に広範かつ急速な変化が生じている

・人為的な気候変動は、すでに地球上のあらゆる地域で多くの気象・気候の極端な変化に影響を与えている

・これにより、自然や人への悪影響や関連する損失・損害が広範囲に及んでいる

・現在の気候変動に対してこれまで最も寄与していない脆弱なコミュニティが、不釣り合いに大きな影響を受けている

・約33億〜36億人の人々が、気候変動に対して非常に脆弱な状況で暮らしている

・2010年~2020年、脆弱性の高い地域における洪水、干ばつ、暴風雨による死亡率は、脆弱性が非常に低い地域の15倍だった

・氷河の後退による水循環の変化や、永久凍土の融解による一部の山岳生態系および北極生態系の変化など、一部の生態系への影響は不可逆的なものとなりつつある

・気候変動は、食料安全保障を低下させ、水の安全保障に影響を与え、持続可能な開発目標を達成する努力を妨げている

・全般的な農業生産性は向上しているが、気候変動は過去50年間、世界的にこの成長を鈍化させており、関連する負の影響は主に中・低緯度地域で見られる

・海洋温暖化と海洋酸性化は、一部の海洋地域で漁業と貝類養殖の食糧生産に悪影響を及ぼしている

・現在、世界人口の約半数が、気候および気候以外の要因の組み合わせにより、1年の少なくともある時期に深刻な水不足に見舞われている

・すべての地域において、極端な高温事象の増加により、死亡率や罹患率が増加している

・気候に関連した食品媒介疾患や水媒介疾患の発生が増加している

・アフリカ、アジア、北米、中南米において、極端な気候や天候により移住せざるをえない人がますます増えている

・カリブ海と南太平洋の小さな島国は、その小さな人口規模に比して不釣り合いに大きな影響を受けている

・気候変動による経済的な被害は、農業、林業、漁業、エネルギー、観光など、気候変動の影響を受けるセクターで確認されている

・個人の生活も、例えば、家やインフラの破壊、財産や収入の喪失、人間の健康や食料安全保障などを通じて影響を受けており、ジェンダーや社会的公平性に悪影響を及ぼしている

<適応について>
・気候の影響やリスクに対する国民や政治の意識が高まり、少なくとも170カ国と多くの都市が、気候政策や計画プロセスに適応を含めるようになった

・効果的な適応策の例としては、品種改良、農場での水管理・貯水、土壌水分保持、灌漑、アグロフォレストリー、コミュニティベースの適応、農場・景観レベルでの農業の多様化、持続可能な土地管理アプローチ、農業生態学の原則と実践の利用、その他自然プロセスに働きかけるアプローチなど

・都市緑化、湿地帯や森林上流の生態系の回復など、生態系に基づく適応のアプローチは、洪水リスクや都市の暑さを軽減するのに有効である

・早期警報システムのような非構造的対策と堤防のような構造的対策の組み合わせは、内陸洪水の場合の人命損失を減少させている

・災害リスク管理、早期警報システム、気候サービス、社会的セーフティネットなどの適応オプションは、複数のセクターにわたって幅広く適用可能である

・進展があったとはいえ、分野や地域によって適応のギャップが存在し、現在の実施レベルでは今後も拡大し続けると思われる

・適応への主な障壁は、限られた資源、民間企業や市民の関与の欠如、(研究費を含む)資金の不十分な動員、低い気候リテラシー、政治的コミットメントの欠如、限られた研究・適応科学の取り込みが遅く少ないこと、および緊急性の低さなど

・適応に必要と推定される費用と適応に割り当てられた資金との間にある差は拡大しつつある

・公的及び民間資金源を含む現在の世界的な適応のための資金フローは不十分であり、特に途上国における適応オプションの実施の制約となっている

・気候の悪影響は、損失や損害の発生、国の経済成長の阻害を通じて、資金源の利用可能性を低下させ、それにより、特に途上国や後発開発途上国において、適応のための資金制約をさらに増大させることがある(悪循環)

<緩和について>
・緩和に取り組むための政策や法律は、前回の第5回報告書(AR5)以降一貫して拡大している

・2021年10月までに発表された各国の「国が決定する貢献」(NDC)では、2030年の世界のGHG排出量は、21世紀中に温暖化が1.5℃を超え、温暖化を2℃未満に抑えることが難しくなる可能性を示している

・資金フローはすべてのセクターおよび地域において、気候変動の目標達成に必要なレベルに達していない

・パリ協定は、ほぼ全世界の参加を得て、特に緩和に関して、国や地方レベルでの政策立案や目標設定につながり、気候変動対策や支援の透明性も向上した

・多くの規制・経済的手段が既に成功裏に展開されている

・多くの国において、政策によりエネルギー効率が向上し、森林破壊の割合が減少し、技術開発が促進された結果、排出が回避され、場合によっては削減または除去された

・少なくとも18カ国は、生産に基づくGHGと消費に基づくCO2の排出量を10年以上にわたって削減しつづけている

・いくつかの緩和策、特に太陽エネルギー、風力エネルギー、都市システムの電化、都市グリーンインフラ、エネルギー効率、需要側管理、森林や作物・草地管理の改善、食品廃棄物や損失の削減は、技術的に実行可能で、費用対効果が高まっており、一般の人々にも支持されている

・2010年から2019年にかけて、太陽光発電(85%)、風力発電(55%)、リチウムイオン電池(85%)の単価が持続的に低下し、地域によって大きく異なるが、太陽光発電では10倍以上、電気自動車(EV)では100倍以上というように、その普及が大幅に進んだ

・コストを削減し、導入を促進する政策手段には、公的研究開発、実証実験やパイロットプロジェクトへの資金提供、規模拡大のための導入補助金などの需要喚起手段などがある

・COP26前に発表されたNDCが実施された場合の2030年の世界のGHG排出量と、オーバーシュートがないか限定的で温暖化を1.5℃に抑える(50%以上)、または即時対策を想定し温暖化を2℃に抑える(67%以上)緩和経路のモデル化に伴う排出量の間には、かなりの「排出ギャップ」が存在し、21世紀中に温暖化が1.5℃を超える可能性が高くなる

・温暖化を1.5℃に抑えるためには、この10年間に世界 のGHG排出量を大幅に削減する必要がある

・2030年まではCOP26前に発表されたNDCに沿った形で、それ以降はさらに厳しい目標を設定しない場合のモデル経路では、排出量が増加し、2100年までの地球温暖化の中央値は2.8 (2.1-3.4) ℃となる

・多くの国が、今世紀半ば頃までに温室効果ガス(GHG)ゼロまたはCO2ゼロを達成する意向を示しているが、誓約の範囲や具体性は国によって異なり、それを実現するための政策は現在までに限定的である

・2020年末までに実施された政策では、2030年の世界のGHG排出量はNDCが示す排出量より多くなると予測され、「実施ギャップ」がある

・政策の強化がなければ、2100年までに3.2(2.2-3.5)℃の温暖化が予測される

・低排出技術の採用は、資金、技術開発・移転、人的能力が限られていることもあり、ほとんどの途上国、特に後発開発途上国において遅れている

・気候変動資金の流れの規模は過去10年間で増加し、資金調達チャネルも広がったが、2018年以降は成長が鈍化している

・化石燃料に対する公的および私的な資金フローは、気候適応および緩和のための資金フローよりも依然として大きい

・2018年、先進国から途上国への公的及び公的に動員された民間の気候資金の流れは、2020年までに年間1000億米ドルを動員するという気候変動枠組み条約及びパリ協定の下での目標額に達していない

<今後の気候変動>
・温室効果ガスの排出が続くと、近い将来に1.5℃に達すると推定される

・地球温暖化は、ほぼすべての検討シナリオとモデル化された経路において、主にCO2累積排出量の増加により、短期(2021-2040年)において進行し続けるだろう

・近い将来、地球温暖化は、非常に低いGHG排出シナリオ(SSP1-1.9)でも1.5℃に達する可能性が高く、より高い排出シナリオでは1.5℃を超える可能性が高いか非常に高い

・2081~2100年の温暖化の最適推定値は、非常に低いGHG排出シナリオ(SSP1~1.9)の1.4℃から、中間のGHG排出シナリオ(SSP2 ~4.5)の2.7℃、 および非常に高いGHG排出シナリオ(SSP5~8.5)の4.4℃にわたっている

・さらなる温暖化により、すべての地域で、気候の影響をもたらす要因の同時多発的な変化がますます起こると予測される

・複合的な熱波や干ばつは、複数の場所で同時に発生するなど、より頻度が高くなると予測される

・相対的な海面上昇により、現在の100年に1度の異常海面現象は、すべての検討シナリオにおいて、2100年までに全潮位計の半数以上の地点で少なくとも毎年発生すると予測される

・その他の地域的な変化としては、熱帯低気圧や亜熱帯性暴風雨の増加、乾燥度や火災気象の増加などが予測される

<影響とリスク>
・どの将来の温暖化レベルにおいても、多くの気候関連リスクはAR5で評価されたよりも高く、予測される長期的影響は、現在観測されているよりも最大で数倍高い

・気候変動によるリスクや予測される悪影響、関連する損失や損害は、地球温暖化が進むごとにエスカレートする

・気候変動リスクと気候変動以外のリスクはますます相互作用し、複合リスクやカスケードリスクを生み出し、より複雑で管理しにくいものになる

<不可逆的変化の確率とリスク>
・地球の表面温度を抑えられたとしても、数十年またはそれ以上の応答時間スケールを持つ気候システム構成要素の継続的な変化を防ぐことはできない

・深海の温暖化と氷床の融解が続くため、数世紀~数千年にわたる海面上昇は避けられず、海面は数千年にわたり上昇したままとなる

・1995-2014年と比較して、SSP1-1.9GHG排出シナリオでは、世界平均海面上昇は2050年までに0.15-0.23m、2100年までに0.28-0.55m、SSP5-8.5GHG排出シナリオでは、2050年までに0.20-0.29m、2100年に0.63-1.01mと考えられる

・今後2000年間で、温暖化が1.5℃に抑えられた場合、世界の平均海面は約2~3m、2℃に抑えられた場合、2~6m上昇する

・気候システムにおける突然の変化や不可逆的な変化の可能性と影響は、ティッピングポイントに達したときに引き起こされる変化を含め、さらなる地球温暖化によって増加する

・2℃~3℃の温暖化が持続した場合、グリーンランドと西南極の氷床は、数千年かけてほぼ完全に、かつ不可逆的に失われ、数メートルの海面上昇を引き起こす

・氷床プロセスに関連する深い不確実性のため、世界平均海面上昇は、非常に高いGHG排出シナリオ(SSP5-8.5)では、2100年までに2mに近づき、2300年までに15mを超える可能性も排除できない

・地球温暖化が1.5℃を超えると、小さな島々や氷河や雪解け水に依存する地域にとって、限られた淡水資源が、適応の厳しい限界となる可能性がある。このレベルを超えると、一部の暖流サンゴ礁、沿岸湿地、熱帯雨林、極地や山の生態系などの生態系は、物理的な適応の限界に達するかそれを超えることになり、結果として、一部の生態系に基づく適応策もその効果を失うだろう

・セクターやリスクを単独で取り上げ、短期的な利益に焦点を当てた行動は、長期的には不適応を招き、脆弱性、暴露、リスクの固定化を生み、変更することが困難な場合が多い。例えば、防潮堤は、短期的には人や資産への影響を効果的に軽減するが、長期的な適応計画に組み込まれない限り、長期的には気候リスクへの曝露を増加させ、固定化させる結果となりうる

・人為的な地球温暖化を抑制するためには、CO2排出量を正味ゼロにする必要がある。CO2排出量がゼロになるまでの累積炭素排出量と、この10年間の温室効果ガス排出削減のレベルによって、温暖化を1.5℃または2℃に抑えられるかどうかがほぼ決まる

・既存の化石燃料インフラから排出されるCO2は、追加的な削減を行わなければ、1.5℃のための炭素収支(気温上昇をあるレベルまでに抑えようとするときの、温室効果ガスの過去および今後の累積排出量の上限)の残りを超えてしまう

・物理科学の観点から、人類が引き起こす地球温暖化を特定のレベルに抑えるには、累積CO2排出量を制限し、少なくともCO2排出量を正味ゼロにし、さらに他の温室効果ガス排出量を大幅に削減する必要がある

・温室効果ガス排出量を正味ゼロにするには、主にCO2、メタン、その他の温室効果ガス排出量を大幅に削減する必要があり、CO2排出量を正味マイナスにする必要がある

・CO2排出量が正味マイナスになるためには、二酸化炭素の除去(CDR)が必要となる

・GHG排出量が正味ゼロを維持した場合、地球の表面温度は、早期にピークに達した後、徐々に低下すると予測される

・人間活動によって排出される1000GtCO2あたり、地球の表面温度は0.45℃上昇する

・2020年初頭からの残りの炭素収支の最良推定値は、地球温暖化を1.5℃に抑える可能性が50%の場合は500GtCO2、2℃に抑える可能性が67%の場合は1150GtCO2である

・2020-2030年の年間CO2排出量が平均して2019年と同じレベルにとどまった場合、結果として生じる累積排出量は、1.5℃に対する残りの炭素予算をほぼ使い果たし、2℃に対する残りの炭素予算の3分の1以上を使ってしまう

・中央の推定値のみに基づくと、1850年~2019年までの累積CO2純排出量は、地球温暖化を1.5℃に抑える確率が50%の場合の炭素収支全体の約5分の4、地球温暖化を2℃に抑える確率が67%の場合の炭素予算全体の約3分の2に相当する

<緩和の経路>
・オーバーシュートを起こさないか限定的で温暖化を1.5℃に抑える(50%以上)経路と、温暖化を2℃に抑える(67%以上)経路には、いずれもこの10年間にすべてのセクターで急速かつ深く、ほとんどの場合直ちに、温室効果ガス排出を削減する必要がある。これらの経路では、それぞれ2050年代前半と2070年代前半に、グローバルなCO2排出量ゼロに到達する

・オーバーシュートを起こさないか限定的で温暖化を1.5℃に抑える(50%以上)ためには、2019年レベルと比べて、2030年にCO2は48%、GHGは43%の削減、2050年にはCO2は99%、GHGは84%の削減が必要

・緩和の選択肢は、持続可能な開発の他の側面と相乗効果を持つことが多いが、選択肢によっては、トレードオフの関係になることもある

・持続可能な開発と、例えば、エネルギー効率や再生可能エネルギーとの間には、潜在的な相乗効果がある。同様に、森林再生、森林管理の改善、土壌炭素貯留、泥炭地の復元、沿岸部のブルーカーボン管理などの生物学的 CDR 手法は、生物多様性と生態系機能、雇用と地域の生計を強化できる

・植林やバイオマス作物の生産は、特に大規模で土地所有権が不安定な場所で実施された場合、生物多様性、食料と水の安全保障、地域の暮らし、先住民族の権利など、社会経済や環境に悪影響を及ぼす可能性がある

<オーバーシュート:行きすぎ>
・温暖化が1.5℃などのレベルを超えた場合、地球全体のCO2排出量が正味でマイナスになることを達成・維持することで、温暖化を再び徐々に抑制することができるが、オーバーシュートを起こさない経路と比較して、二酸化炭素除去のための追加的な展開が必要となり、実現可能性と持続可能性に大きな懸念が生じる

・オーバーシュートには、人間や自然のシステムに対して、いくつかの不可逆的な悪影響やさらなるリスクが伴い、これらはすべてオーバーシュートの規模や期間とともに大きくなる

・このオーバーシュートの期間に発生し、フィードバックメカニズムによってさらなる温暖化を引き起こす悪影響、例えば、山火事の増加、樹木の大量死、泥炭地の乾燥、永久凍土の融解などが、自然の土地の炭素吸収源を弱め、GHGsの放出を増加させると、復帰はより困難になる

・オーバーシュートが大きいほど、2100年までに1.5℃に戻すためには、より多くの正味マイナスCO2排出が必要になる

<対応>
・気候変動は、人類の幸福と地球の健康に対する脅威である

・すべての人にとって住みやすく持続可能な未来を確保するための機会の窓は急速に狭まっている

・この10年間に実施される選択と行動は、現在および数千年にわたり影響を及ぼすだろう

・この10年間で、深く、迅速かつ持続的な緩和を行い、適応策を加速的に実施すれば、気候変動に関連する人間や生態系の将来の損失や損害を軽減できる

・適応策には長い実施期間がかかることが多いため、この10年間に適応策を加速的に実施することは、適応のギャップを埋めるために重要である

・適応と緩和を統合した包括的、効果的、革新的な対応により、相乗効果を発揮し、適応と緩和の間のトレードオフを減らすことができる


(以上)

 

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