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プラスチック汚染に歯止めはかかる?

2023年03月10日
プラスチック汚染に歯止めはかかる?

Photo by Naja Bertolt Jensen on Unsplash.

https://unsplash.com/photos/FxnqdmKBJps

海洋プラスチック汚染は、気候変動に次ぐと言われるほど大きな地球環境問題となっています。

人工物であるプラスチックは、「ある生物の不要物・廃棄物は、別の生物の養分となる」という自然の循環の外にあるため、これまで生産・消費されたプラスチックのほぼすべてが(焼却されていないとしたら)環境中のどこかに存在していることになります。生分解性プラスチックの開発・実用化も進められていますが、まだ全体の中ではわずかな割合に過ぎません。

今ですらプラスチック汚染は大きな問題であるのに、このままでは、2050年までに世界の先進国におけるプラスチック消費量は、2019年の2倍近くにまで増え、2050年までの間、毎年4億5100万トンのプラスチックが新たに消費されることになる。そして、その消費量は今世紀中にピークに達して減り始めるという見込みもない――エコノミスト・インパクトと日本財団が共同で進めている「Back to Blue」が最近出した報告書ではこのように警鐘を鳴らしています。

"Peak Plastics: Bending the Consumption Curve "
https://backtoblueinitiative.com/plastics-consumption/

今、国連で、プラスチック汚染に歯止めを掛けるための国際条約についての検討が始まっているのをご存じでしたか? (やっと・・・ですね!)

2022年3月の第5回国連環境総会再開セッションにおいて、「プラスチック汚染を終わらせる:法的拘束力のある国際約束に向けて」が採択され、政府間交渉委員会(Intergovernmental Negotiating Committee、「INC」)を設置することが決まりました。
INCは、2022年11月から2024年末までに5回開催され、国際文書(条約)の策定に係る作業の完了を目指すとのこと、2024年の年末には国際条約が策定される、というスケジュール感です。

プラスチック汚染に関する国連条約に盛り込むことが検討されている政策がいくつかありますが、Back to Blueの研究者たちは、プラスチックの総消費量に最も影響を与える可能性があると考えられる3種類の政策を取り上げ、それらの政策が実施された場合、どのくらいの効果があるかをモデルを用いて分析しました。(対象国はG20のうちの19カ国)

研究で取り上げた3種類の政策とは、
(1)プラスチック用の樹脂生産への課税
(2)プラスチック包装容器に対する拡大生産者責任
(3)使い捨てプラスチックの段階的禁止
です。

何も対策を取らない場合、2050年のプラスチック消費量は、2019年の1.73倍となります。

3つの政策の中では、使い捨てプラスチックの禁止が最も有効であることがわかりました。した。しかし、それでも、2050年のプラスチック消費量は2019年の約1.5倍となってしまいます(たしかに、1.73倍よりはマシですが......)

新規プラスチック生産への課税が実施された場合は、1.57倍
「拡大生産者責任」の適用では、1.66倍

どの政策を採っても、どのみち増えてしまいます! では3種類の政策を全部用いたらどうでしょうか?

それでも、2019年の1.25倍に増えてしまい、減るどころではない状況なのです。

Back to Blueの研究者たちは、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある条約には、もっと強力な政策を盛り込まなければ、「条約ができても実際には減らない」状況は変えられない、と強く主張しています。

第1回政府間交渉委員会は、2022年11月28日から12月2日(金曜日)まで、ウルグアイのプンタ・デル・エステにおいて開催され、150カ国以上の国連加盟国、関係国際機関、NGO等約2300名が参加。日本からは、外務省、経済産業省及び環境省から構成される政府代表団が出席しました。

第2回政府間交渉委員会は、今年5月にフランスで開催されることが決まっています。

プラスチックの生産や消費が減ると困る人々・業界のロビー活動も活発化していくでしょう。交渉の行方を見守りつつ、条約成立を待たずに、できること・すべきことを進めていきましょう!


最近、企業研修などの機会に、実際にビーチでマイクロプラスチックの実験やビーチクリーンをしていただいた上で、プラスチック問題についてのレクチャーを聞いていただき、何ができるか、自分たちで考える、という現場体験+講義を提供しています。おかげさまで、「考え方や見えるものが変わった!」と実感と気づきにつながる時間だと好評をいただいています。

企業研修や、学校向けの教育研修など、機会があればぜひ体験いただけたらと思います(これも私たちができることの1つだと思っています!)
https://mirai-sozo.work/program/index.html

 

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