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岩波新書『好循環のまちづくり!』が出版されます!

2021年04月15日
岩波新書『好循環のまちづくり!』が出版されます!

『好循環のまちづくり!』

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前から出したい、出したいと願っていた本がようやく刊行されます。まちづくりのホップ・ステップ・ジャンプのプロセスを踏みながら、悪循環から抜け出して好循環を回していこう! 無関心やあきらめから脱却して、小さな成功事例を試し、作り出し、お祝いし、広げていこう! 

これまであちこちのまちづくりのお手伝いをしてきた経験から得た学びやつくりだしてきたノウハウをすべて盛り込みました。

『好循環のまちづくり!』 枝廣淳子・著(岩波新書) 4月20日刊行

目次と「はじめに」をご紹介します。

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~

目 次


はじめに

第1章 まちづくりのホップ・ステップ・ジャンプ!

第2章 まちづくりのホップ
1 バックキャスティングでビジョンをつくる
2 共有ビジョンの描き方のコツ

第3章 まちづくりのステップ
1 システム思考で構造を見える化する
2 ループ図の作り方

第4章 まちづくりのジャンプ
1 構造を変えるプロジェクトとは?
2 多くのまちに役立つ、いくつかの"基本形"
3 プロジェクトを測るモノサシが大事

第5章 プロセスから生まれるもの
   1 まちづくりのチーム
   2 希望の好循環へ

終章 まちの持続可能性と幸福度を考える

おわりに


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はじめに


近年、まちづくりのお手伝いや取材で日本の各地を見ていて、思うことがあります。それは「二極化が進みつつある」ということです。

元気で勢いの感じられる、生き生きとしたまちもあります。そういった地域では、新しい動きが次々と起こり、移住者もどんどんと入ってきます。訪れるたびに新しいお店ができていたり、新しいプロジェクトが始まっていたり。私も話を聞きながらわくわくしてきます。

その一方で、よどみ感の広がる、活力の感じられないまちも増えています。久しぶりに訪れて、前回から変わったことといえば、駅前のシャッター通りがさらに長くなったかな......。

こういったまちでは、住民の間にあきらめ感が漂っていることもあります。「駅前の商店街を元気にしましょうよ、大学のゼミの若者を連れて来ますよ、一緒に考えましょう!」と言っても、「この店はどのみち自分の代でおしまいにするので、ほっといてください」と言われてしまう。こういった地域では、若い世代は出て行ったきり戻ってきません。移住者も入ってきません。なぜなら人は、「動きのあるところ」に惹きつけられるからです。

人口減少は日本全体にとっても国家的な課題ですが、まさに「わがまちの存続の危機につながる」と焦っている地域も少なくありません。「なんとか人口減少に手を打たなければ、まちが機能しなくなる」――そんな思いから、多くの自治体が人口政策に力を入れています。
自治体では子育て支援や移住政策など様々な手を打ちます。うまくいくものもあれば、そうでないものもあります。まちにとって人口減少にどう取り組むかは非常に重要な課題ですが(終章で詳しく述べます)、「人口は、様々な取り組みの結果の"遅行指標"の1つでしかないんだけどなぁ」と思うこともよくあります(指標については第4章で述べます)。まるで「人口」だけが最重要指標であるかのように、「人口を増やすにはどうしたら良いか」にあまりにもとらわれているように思える自治体もあります。

日本では、各地の地方創生を支援しようという取り組みも様々に展開されています。コンサルティング会社はもちろんのこと、その他一見関係のなさそうな業種の企業にも、新たなビジネスチャンスとして取り組みを始めているところもあります。

そして、いろいろな地域へ出向いていって、まちづくりの支援を仕事にしている人も少なからずいます(私もその1人です)。なかには、"必殺まちづくり請負人"のような素晴らしい方もいて、各地で様々な成功事例が生まれていることもあります。でも、"必殺まちづくり請負人"は数えるほどしかいません。彼らだけに頼っていては、日本中の数多くの地域をカバーすることはできません。

私はこれまで、島根県海士町、北海道下川町、熊本県南小国町、徳島県上勝町などいくつかの自治体からの依頼を受け、一ヶ月か二ヶ月に一度ずつ定期的に訪問しながら、まちづくりのお手伝いをしてきました。その他にも、不定期に訪問しながらまちづくりのアドバイスや支援をしている地域もいくつかあります。2011年の東日本大震災後には、3年にわたって原発密集地である新潟県柏崎市でまちづくりのお手伝いをするという貴重な経験も積みました。

それぞれのまちづくりのお手伝いが実際の変化にもつながっていて、自分自身、手応えややり甲斐を感じています。「もっと多くの地域でお手伝いしたい!」と思います。でも、私の時間は有限ですから、お手伝いできる地域には限りがあります。そのような経験から、「私が訪問して手伝わなくても、まちづくりが進むしくみができないか」と考えるようになりました。「枝廣さんでなければできない」という属人的なまちづくりでは、広がりが制限されてしまうからです。

幸いこれまで定期的に訪問してまちづくりをお手伝いしてきた地域からは、「まちのビジョンができ、まちづくりのチームが生まれ、具体的な取り組みが進むようになってきた」とうれしい評価をいただいています。この経験とそこからの学びを、より多くのまちで使っていただけるようにしたい、と思うようになったのです。

私は20年以上前から環境問題に取り組む中で、また10年ほど前から地域の活性化や地方創生に取り組む中で、私なりの「まちづくりのプロセス」を作り上げてきました。それは「ホップ、ステップ、ジャンプ!」と、3つのステップを踏んでいくプロセスで、どのまちのお手伝いをする時にも、基本的にこの3ステップからなるプロセスをベースにお手伝いをしています。

この3ステップは、本質的な変化を創り出すためのシステム思考や、コミュニケーション手法、社会的合意形成などの考え方を土台に組み立てたものです。そして、大学・大学院時代に専攻していた教育心理学・臨床心理学がその根底にあります。「ビジョンのつくり方」「方向性を示し、進捗をはかるための物差し(指標)」などは、自分のこれまでの人生で自分なりに試行錯誤してきたものでもあります。

この3つのステップをわかりやすく紹介し、「それぞれの地域で使ってもらえるようにしたい!」と書いたのが本書です。これまで自分が勉強・実践してきたこと、そして様々な地域でのお手伝いの経験から、基本的な進め方、大事なポイントやコツ、留意すべきところなどを盛り込みました。

大小問わず、日本各地のまちが、行政も住民も一緒になって、まちの今後について、悲観的でなく現実的に考え、信頼関係に基づく仲間や取り組みが自己組織的に生まれ、新しい動きが次々と始まり、笑顔と会話が広がる、元気と勢いの感じられるまちになっていったらいいなあ!

本書が、持続可能で幸せなまちづくりの小さなお手伝いの1つになれば、これ以上うれしいことはありません。


~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~


・バックキャスティングでのビジョンのつくり方
・まちの構造を見える化するループ図のつくり方
・構造を変えるためのプロジェクトのつくり方
・進捗を測る指標のつくり方
・まちづくり委員会の効果的な構成や進め方
・まちづくりのプロセスから生まれる大事なもの
・今後のまちづくりを進めるにあたって考えておくべき重要な観点

などなど、私が試行錯誤の中で学んだことをできるだけたくさん盛り込みました。

私が各地にお邪魔しなくても、この本をガイドの1つに、まちづくりのステップがあちこちで広がっていったらうれしいなあ!と願っています。

よろしければ、ご興味のある部分だけでも、お目通しいただけたらうれしいです。また、地方創生やまちづくりに関心のある方々、関わっておられる方々にもご紹介いただけたら幸せです。よろしくお願いします!

『好循環のまちづくり!』 枝廣淳子・著(岩波新書)

 

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