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つながりを読む

日本の2030年の温暖化目標に向けて

2021年04月05日

日本でもようやく、2030年の目標に関する議論が始まりました。

今年の年初に出したNo. 2776 (2021.1.5)で、このように書きました。

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~

さて、2020年は「脱炭素競争!」の号砲がようやく日本にも鳴り響いた年となりましたね。管首相のカーボンニュートラル宣言が、各省庁にも企業や産業界にも、「ルールが変わった!」ことを高らかに告げることになりました。それまでの「80%削減」だと、「それは必要だよねー、でもわが社は残りの20%だから」というスタンスを許しましたが、「ゼロ」となると「例外はない」ということです。新聞を見ていても、毎日のように各企業が競って「脱炭素」「再エネ100%」を打ち出していますよね。

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

そして、全体としてあるべき方向が2050年という年限をもって打ち出された現在、大事なことが5つあると挙げた2つめが、「2050年という先の目標だけでなく、2030年にはどうしておくべきか、という中間地点の目標を打ち出すように働きかける」でした。

2050年にゼロに持っていくためには、2030年にはどこまで進めておく必要があるか、というバックキャスティングの観点と、あと9年後ですから、現在まだ芽の出ていない画期的な大発見や技術革新が効果を発揮することにはあまり期待できないため、現在実用化されている技術と数年間のうちに実用化できそうな技術をどこまで伸ばせるか、また普及して、実際の削減につなげるか、という現実的な観点の両方が必要であり、その2つの観点のせめぎ合いのなかで、2030年の目標が決められることになることでしょう。

日本でもようやく、2030年の目標に関する議論が始まりそうです。

3月23日付けの日本経済新聞によると、「30年の目標を重視する米欧の動きを意識し、遅くとも主要7カ国首脳会議(G7サミット)がある6月までに固める」とのこと。

日本の現在の2030年目標は、「13年度比で26%減」で、2050年の脱炭素に向けてはまったく足りないと批判されています。EUはすでに「90年比55%減」、英国は「同68%減」という高い目標を掲げており、4月には米国やカナダも30年の目途を打ち出すとのこと。しかも、米国が4月22日に気候変動に関する首脳会議を開き、6月のG7サミット(英国が議長国)でも脱炭素が主要議題になります。この流れに取り残されないよう、急いで議論し、目標を打ち出さなくてはならない状況なのです。

つい先日、内閣官房が「気候変動対策推進のための有識者会議」を立ち上げました。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kikouhendoutaisaku/

設置の趣旨には、このように書いてあります。

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~

地球温暖化対策推進本部の下、本年11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)をはじめとする一連の国際会議等が予定されていることを踏まえ、気候変動対策を分野横断的に議論し、経済と環境の好循環の観点からグリーン社会の実現に向けた方針の検討を行うため、「気候変動対策推進のための有識者会議」(以下「会議」という)を設置する。

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

第1回の会議は3月31日とのこと、委員会のメンバーは以下の方々です。

<気候変動対策推進のための有識者会議構成員名簿> (五十音順、敬称略)

石井 菜穂子 東京大学理事、未来ビジョン研究センター教授、グローバル・コ モンズ・センター ダイレクター

伊藤 元重 学習院大学国際社会科学部教授

國部 毅 株式会社三井住友フィナンシャルグループ取締役会長

黒崎 美穂 ブルームバーグNEF在日代表

高村 ゆかり 東京大学未来ビジョン研究センター教授

中西 宏明 一般社団法人日本経済団体連合会会長

三宅 香 イオン株式会社環境・社会貢献担当責任者、日本気候リーダーズ・パートナーシップ共同代表

山地 憲治 公益財団法人地球環境産業技術研究機構副理事長・研究所長

吉田 憲一郎 ソニー株式会社 代表執行役 会長 兼 社長 CEO

吉高 まり 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社プリンシパル・サス テナビリティ・ストラテジスト


私も何度かこのような政府の委員会のメンバーになったことがありますが、この名簿を見て、時代の移り変わりを感じますね! 「有識者+産業界代表+NGOなど市民セクター」という構成はほぼ変わっていないものの、産業界の代表がかつてはほぼ必ず電力会社や鉄鋼会社の社長・会長がいらしたのが、ソニーと金融機関の方になっています。顔ぶれをみると、とくに金融や投資の動向や考えを重視していることがわかりますね。また、今回唯一のNGOセクターといえる「日本気候リーダーズ・パートナーシップ」も、企業NGOです。

日本の現在の目標「13年度比で26%減」に対して、世界の研究者による組織「クライメート・アクション・トラッカー」はパリ協定が掲げる気温1.5度以内の上昇抑制の目標達成には13年比60%以上の削減が必要としているとのこと。

この委員会でどのような議論が展開され、どのような目標が提示されるのでしょうか。しっかりと見守っていきたいと思います。


気候変動に関して、投資家の動向や考えは非常に大きな影響力を持っているため、注視しておく必要があります。その思いで、4月16日に、「ESG投資最前線」~投資家が考える、長期的に価値を生む強い企業とは というタイトルで異業種勉強会を開催します。
https://www.es-inc.jp/network/forum/2021/nwk_id010907.html

ゲストスピーカーはなんと、上記の委員会のメンバーにも選ばれた吉高まりさんです! 委員会の議論も始まっているタイミングなので、そのあたりのお話も聞けるのではないかと楽しみにしています。フォーラムメンバーでなくてもお試し参加もできますので、貴重な機会、ぜひご参加下さい。

~~~~~~~~~~~~~ここからご案内~~~~~~~~~~~~~~~

第66回 吉高まりさんから学ぶ「ESG投資最前線」
~投資家が考える、長期的に価値を生む強い企業とは(2021年4月16日(金)開催)


コロナ禍で経済状況が厳しいと言われるなかでも、これだけESG投資が伸びているということは、投資家のこれまでの意識や「ものさし」が大きく変化していると言えます。それでは、「ものさし」が変わったことで、実際に企業が「真の持続可能な経営」に向けて、長期的に価値を生み出す能力を持っているのか、投資家は何を、どのように見極めているのでしょうか。

今回、政府の委員会や投資家、企業等、世界・日本とさまざまな金融の現場で活躍されているスペシャリスト、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 経営企画部副部長プリンシパル・サステナビリティ・ストラテジストの吉高まりさまをお招きします。

吉高さまからはESG投資の最前線をご紹介いただくほか、投資家が企業のESGに何をポイントとして、判断しているのかをお話いただきます。また、投資される側である企業の視点として、企業のあるべき姿「真の持続可能な経営」をどう目指し、どう実現していけばよいのかについても伺います。投資家だけでなく、財務やIR、サステナビリティなどさまざまな部門の企業の担当者をご覧になってきた豊富なご経験からの見立てを伺える貴重な機会となります。 奮ってのご参加をお待ちしています。

詳細やお申し込みはこちらをご覧下さい。
https://www.es-inc.jp/network/forum/2021/nwk_id010907.html

 

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