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ゼロ・ウェイストタウンの実現を目指して~徳島県上勝町のチャレンジ

2021年03月01日
ゼロ・ウェイストタウンの実現を目指して~徳島県上勝町のチャレンジ

昨年12月下旬に、ゼロ・ウェイストタウン・徳島県上勝町でゼロウェイストの取り組みについて詳しく取材をさせてもらいました。1月末に世界に向けて、幸せ経済社会研究所の英語ニュースレタ-として発信した同町の取り組みをお届けします。

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~


ゼロ・ウェイストタウンの実現を目指して
~徳島県上勝町のチャレンジ

「ゴミを減らすこと」や「リユースやリサイクルを進めること」が、地球の有限な資源を使用していく上で、重要であることは間違いありません。日本には2003年に「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、この問題に取り組んでいる町があります。徳島県上勝町(人口約1500人)です。

ISHESの2019年3月号のニュースレターでも、同町の「ゴミゼロ」の達成に向けた取り組みをお伝えしましたが、今月号のISHESニュースレターでは、さらに同町がゼロ・ウェイスト宣言を行うに至った経緯と、ゼロ・ウェイストが上勝町のビジネスなどに与えている影響などについてお伝えします。

<ゼロ・ウェイスト宣言>
未来の子どもたちにきれいな空気やおいしい水、豊かな大地を継承するため、2020年までに上勝町のごみをゼロにすることを決意し、上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)を宣言します。
1.地球を汚さない人づくりに努めます。
2.ごみの再利用・再資源化を進め、2020年までに焼却・埋め立て処分をなくす最善の努力をします。
3.地球環境をよくするため世界中に多くの仲間をつくります!

上勝町には、ゼロ・ウェイストの取り組みを自分の目で確かめようと、年間1,000人を超える視察者が国内外から訪れます。なぜ、そんなにも多くの人がこの町にやってくるのでしょうか? それは、世界中で重要視されている、ごみ問題解決の糸口となる取り組みが、ここで行われているからです。

●リサイクル率の向上
上勝町の取り組みは、ゼロ・ウェイスト宣言よりも前に始まっていました。リサイクル率向上に本格的に取り組み始めたのは、「リサイクルタウン計画」を策定した1994年。当時、最も多く排出されていたごみは「生ごみ」で、重量比で3割を占めていました。まずは生ごみを減らすことから始めようと、上勝町は1995年、全国に先駆けて家庭用生ごみ処理機の購入補助制度を導入、町内で排出される生ごみは全て、各家庭で処理されるようになりました。

次に取り組んだのは、資源再生の流れを作ること。1997年に容器包装リサイクル法が制定されたことがきっかけでした。上勝町では、資源を引き取ってリサイクルしてくれる業者を職員が探し、分別回収を9品目からスタート。その後も新たなリサイクル業者を探す努力は続けており、その結果2015年からは13品目、45種類の分別に増えています。

分別したごみは、町民が自ら日比ヶ谷ごみステーションに運びます。持ち込んだごみがどの分別に当てはまるか迷う時などは、現場のスタッフがサポートしてくれます。スタッフとの会話や、他の町民との交流を楽しみにしている人も少なくありません。リサイクルによる有価資源売却の収入は年間250~300万円あり、ごみ処理費用の削減につながっています。分別ごとのボックスには、リサイクル業者が引き取る際の単価が記載されていて、ごみを分別する町民もその効果を実感することができる仕組みです。このような工夫もあって、リサイクルにつながる行動が、町民の暮らしに根付いていきました。

●リサイクルからリユース・リデュースへ
上勝町における一般廃棄物のリサイクル率は、2016年度には全国平均(約20%)を大きく上回る81%に達しました。ここから更に前に進み、「ゼロ・ウェイストを実現するには、リユース・リデュースが必要」と、取り組みを進めているのが、NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーです。2005年の設立以来、上勝町のゼロ・ウェイストの理念に基づいた活動を、住民や行政と一緒に町内で推進しています。

徹底してリサイクルを進めることで、リサイクル率は81%まで高まりましたが、ここからリサイクル率を更に上げることは困難です。なぜなら、残りの19%のほとんどはリサイクル技術が未発達だったり、設備が高額だったりと、上勝町としては実施が難しく、焼却処分せざるをえないものだからです。その中で20%を占めているのが紙おむつでした。

ゼロ・ウェイストアカデミーが企画とコーディネートを行い、上勝町では2017年から、1歳未満の乳児がいる家庭に「布おむつスターターキット」を贈る事業を始めました。紙おむつは1回使うと焼却処分しなければなりませんが、布おむつは洗濯すれば繰り返し使えます。

紙おむつを布おむつに切り替えるためには費用がかかりますが、そこで登場するのが、先に述べたリサイクルによる有価資源売却の収入です。暮らしに根付いた取り組みで生み出された資金は、こうして新たに「暮らしに根付かせたい」取り組みに活かされています。

不用品の持ち込み、無料での持ち帰りができる「くるくるショップ」の活用も、ごみの削減に貢献しています。持ち込みは町民に限られますが、持ち帰りは町外の人もOK。年間約15トンの資源が、「くるくるショップ」を通じて、使わなくなった人の手から使いたい人の手へと渡されていきます。

ユニークな取り組みとして、「ゼロ・ウェイスト・ウエディング」の企画・サポートを行った例もあります。使い捨て食器を使わないための「リユース食器」のレンタル、回収拠点の運営、資源の分別指導、布のリメイクによる装飾品制作などを実施。200人以上の来客がありましたが、実際に出たごみはリサイクルできる数品のみでした。

●人づくり・仲間づくり
ここまでご紹介した取り組みは、生活者の行動を変えることでごみを削減するものでしたが、それだけでゼロ・ウェイストを実現することはできません。町内で発生するごみをなくすだけでなく、町外から入ってくるごみやごみの素をなくさなければなりません。そのためには、ごみとなる製品をつくるかどうかの鍵を握る生産者、ごみとなる可能性がある「もの」を多量に扱う事業者における取り組みも必要ですし、それをどう実践していくかは大きな課題です。

ゼロ・ウェイストに取り組む事業所を独自の基準で公的に認証する「ゼロ・ウェイスト認証制度」は、そんな事業者へアプローチするための取り組みのひとつです。

各事業所は、
‐ 従業員がゼロ・ウェイストの研修を受けていること
‐ 自治体の制度に則り、適切な分別・リサイクルに取り組んでいること
‐ ゼロ・ウェイスト活動に目標を設定して計画的に取り組むこと
以上3つの条件をクリアしたうえで、以下6種類の基準で審査されます。

◇LOCAL FOOD
地域の食材を活用し、地産地消に努め、ごみの発生抑制に取り組んでいる
例)地元農家から直接仕入れを行うことで、容器包装を使わず仕入れている

◇RETURNABLE
食材や資材の調達において、ごみの発生抑制に取り組んでいる
例)仕入れの際にマイコンテナやクーラーボックス等を持参し、仕入れ容器ごみを削減している

◇IDEA
おしぼり等の無料サービスにおいて、ごみの発生抑制に取り組んでいる
例)おしぼりはリユース、シュガースティックではなく角砂糖をポットで出すなど使い捨て製品を使わない

◇OPEN for ACTION
利用者がごみの削減あるいは分別に取り組める工夫をしている
例)顧客へゼロ・ウェイストに取り組んでいることを情報発信し、参加できる仕掛けを設けている

◇BYO(Bring Your Own)
利用者が食器や容器ごみなどの代用品を持ち込むことで、ごみの発生抑制に繋がる仕組みを導入・周知している
例)マイボトルを持参すれば割引があり、コーヒーを使い捨て容器無しでテイクアウトできる

◇LOCAL REUSE
再利用を通じ、地域内のごみの発生抑制・資源循環に取り組んでいる
例)古民家や建具など置いておくと廃材としてごみになってしまう地域資源を活用し、店舗に活かしている

2019年2月時点で、上勝町内の7店舗に加え、長崎県、高知県、大阪府の飲食店でもこの認証を取得しており、町外への広がりも出てきています。お店が仕入れを変えることで生産者への影響もありますし、認証を起点にした会話でお店に来るお客さんの意識・行動を変えていく効果も期待できます。認証を取得する店舗がいろいろな地域に増えることでゼロ・ウェイストへの取り組みの輪が広がっていくよう、認証店舗は随時募集中です。

町民の暮らしにゼロ・ウェイストへの行動を根付かせるとともに、生産者や事業者を巻き込み、ゼロ・ウェイストへの行動を実践する仲間の輪を広げていこうとする上勝町の取り組みは、一歩ずつ着実に進み続けています。今後どのような展開が待っているのか、上勝町のチャレンジから目が離せません。

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【参考資料】
ゼロ・ウェイストアカデミー
http://zwa.jp/
「ゼロ・ウェイスト認証制度」開始と項目公開のお知らせ
http://blog.zwa.jp/?eid=1189
「平成28年度一般廃棄物実態調査」環境省
http://www.env.go.jp/recycle/waste_tech/ippan/index.html

 

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