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つながりを読む

アニマルウェルフェアへの日本企業の取り組みは進展しているか?

2018年11月27日

最近、テレビや新聞などでアニマルウェルフェアについての報道を目にするようになりましたが、日本企業の取り組みは進んでいるのでしょうか。

2016年度に東京都市大学枝廣研究室(当時)では、アニマルウェルフェアについての調査を行いました。

9割の人が知らない「アニマルウェルフェア」 ~消費者の意識と行動が企業の動物福祉の取り組みを変える~

今回は、2016年度の調査の際に対象とした48社について、googleのサイト内検索(「Site:」というコマンドを利用することで、特定のサイト内の情報だけを検索する方法です)を用いて、「アニマルウェルフェア」という単語が使われているかどうかを調べてみました(「動物福祉」など関連する語での検索は今回は行いませんでした)。

その結果、1社がアニマルウェルフェア対応の鶏肉を販売しているという情報を掲載していたほか、3社が、会社の取り組みとして「アニマルウェルフェア」という言葉を使用していました。ただし、そのうちの2社は、CSRレポートの中で一言使われているだけで、具体的な取り組み内容まではわかりませんでした(URLは下に記載)。

1社だけ、アニマルウェルフェアについてウェブサイトで具体的な情報発信を行っていた組織があります。パルシステム生活協同組合連合会です。

同連合会は2018年6月発行の『SDGsレポート』の中で、2018年の重点プロモーションとして、アニマルウェルフェアを取り上げ、「家畜のストレスを減らすことで動物用医薬品の使用が減り、肉質の改善にもつながることが期待されます。パルシステムは家畜本来の姿や生き方を尊重し、持続できる食生産のしくみを構築していきます」という姿勢を示しています。ウェブサイトによると、取引先には、アニマルウェルフェア認証を取得している農家もあります。

また、パルステム生活協同組合連合会は、2008年の段階で、社会貢献活動レポートに、「アニマルウェルフェアとパルシステムの畜産事業の取り組み」という記事を掲載しています。

このレポートの中では、「2006年度からは、パルシステム独自の『畜産生産指標』で生産管理の評価の取り組みが始まっています。これは、生産者と組合員、どちらにも安全を確保する目的で、生産者・組合員・獣医・畜産関係者が一緒に話し合ってつくりました。アニマルウェルフェアに関する項目も、指標の一つとして入っています」と、非常に早い段階から、アニマルウェルフェアに注目していたことがわかります。

言い換えれば、パルシステムのように、長年にわたり地道な取り組みを行っている企業や団体以外は、まだ日本の企業の取り組みや情報公開は遅れているといえそうです。

海外では企業のアニマルウェルフェアの取り組みや情報公開は進んでいます。特に最近は卵について、「ケージフリー(檻に入れずに飼養すること)」宣言をする企業が増えています。

例えば、オーストラリアのマクドナルドは「2017年までにケージフリーにする」と宣言、米国とカナダのマクドナルドは「今後10年間でケージ卵を廃止する」と発表しています。サブウェイも、米国、カナダ、メキシコで2025年までにケージフリーにすると発表しています。米国では、このほかに、スターバックスがケージ飼育の卵の段階的削減を発表しているほか、ネスレが2020年までに、デニーズが2026年までに、世界最大の小売店であるウォルマートが2025年までに、ケージフリーにすると宣言しています。

それに対して、日本では92%の採卵鶏が「バタリーケージ」と呼ばれるB5用紙サイズほどの大きさのケージで飼養されています(2015年畜産技術協会調べ)。

企業の「ケージフリー宣言」も、マクドナルドのような、日本にもチェーン店がたくさんある企業でも、これまでは日本については対象外とされることがほとんどでした。ただ、最近は日本でも、西洋コンパスグループ、インターコンチネンタルホテル、ネスレ、ユニリーバがケージフリーを宣言するなど、多国籍企業を中心に取り組みが広がりつつあります。

東京五輪を控えて、選手村での食事に供される畜産物はアニマルウェルフェア対応しているのか?という課題が出てきそうです。東京五輪が強力なプッシュとなって、日本企業の取り組みが進むのではないかと思っていたのですが......まだその動きは大きなものとはなっていないようです。ひきつづきウォッチし、報告していきたいと考えています。

私が見つけられていない情報や動きもあることと思います。何か情報がありましたら、自社の取り組みでの他社のものでも、ぜひお知らせください~!

パルシステム生活協同組合連合会「SDGsレポート」

パルシステム生活協同組合連合会「アニマルウェルフェアとパルシステムの畜産事業の取り組み」

日本マクドナルド株式会社 CSRレポート

明治グループ CSRレポート

 

 

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