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第2回エネルギー情勢懇談会レポ!印象に残った発言と考えたこと

2018年01月01日
第2回エネルギー情勢懇談会レポ!印象に残った発言と考えたこと

新年明けましておめでとうございます。2018年。どんな年になるのでしょうか。温暖化やエネルギーをめぐる動きは今年も大きく展開していくことでしょう。第2回エネルギー情勢懇談会のレポ!をお届けします。

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~

<最初に、うれしかったこと>第1回の会合の最後に、横長の机に一列に委員が並ぶ席の配置になっていたため、「これでは、お互いが見えません。委員の間でもやりとりをしたいので、机の配置をちょっと斜めにしていただいて、お互いの顔が見えるようにしていただけるとありがたい」とお願いしたところ、さっそく、座席をラウンドテーブル型にしてくれました! こんな感じです。
https://www.es-inc.jp/energysituation/report/2017/009307.html

(第1回の私の発言はこちらにあります)

<第2回の学びをひと言で言うと>
このセッションを通しての私の学びは、このエネルギー情勢懇談会の目的である「2050年のエネルギーを考える」ことは、もっと近い将来を考えるのとはまったく異なるアプローチが必要だということです。

短中期的な将来であれば、現状をベースに「これがこうなるだろう」「あれがああなるかもしれない」と予測を立てて、「ではどうしたらよいだろう」と考えることができます。

しかし、2050年という、30年以上先をにらんで、日本のエネルギー政策を考えるとしたら、「中東がどうなっているだろうか」「油価がどう動くだろうか」といった、現状をベースにした予測や推測に頼ることはできない、ということが、今回英米から招聘したエネルギー地政学の第一人者から学びでした。2人の専門家が招聘されましたが、この点についての見方は一致していました。

2人の発表には、discontinuity(不連続)、disruption(途絶・混乱・崩壊)、uncertainty(不確実性)ということばが繰り返し出てきました。2050年を考えると、地政学的にも、おそらく技術的にも、現状とは不連続の状況が出現し、その過程には数々の途絶や混乱、崩壊が生じ、しかも、何がいつ起こるか、起こるか起こらないかさえ、不確実である、というのがお二人の感覚でした。「2050年のエネルギー政策を考えようなんて、スゴイですね(そんなこと、できるんですか?)」「2050年を予測するのはimpossible(不可能)だ」といったコメントすらあったほどです。

ではどうしたらよいのか? この点については、情勢懇後の立ち話でも確認させていただいたのですが、お二人とも「大事なのはレジリエンスのあるエネルギー政策にしておくことです」。

「レジリエンス」とは、外的な衝撃に対して、ぽきっと折れずに、しなやかに立ち直る力のことです。これからの不安定で不確実な時代を生きていく上で、個人から組織・社会まで、あらゆる次元でレジリエンスが重要だ!と『レジエンスとは何か』という本を出している私にとっては、「やっぱり、そうですよね~!」でした。つまり、「どのような状況になろうとも、折れないエネルギー体制」にしておくことです。いつなにが起こるかわからないのだとしたら、「いつなにが起こっても大丈夫なしくみ」にしておくしかありません!

レジリエンスをつくり出す要素はいくつかありますが、重要なのは「多様性」(すべて1つに頼ってしまうともろい)、「モジュール性」(いざというとき、全体から切り離してスタンドアロンで機能できるようにしておくこと)、「緊密なフィードバック」(状況の変化や兆しをすばやく必要なところに伝える)です。

エネルギーでいえば、短期的なコストなどに縛られずに、多様なエネルギー源を使えるようにしておくこと、通常はグローバル経済の一部であっても、いざというときには、日本としてまたは地域として、エネルギーをまかなえる自立分散型にしておくこと、そして、エネルギーを巡る状況の変化をすばやく政策策定者や意思決定者に伝えること、となります。

この「多様性」「モジュール性」「緊密なフィードバック」という3つのレジリエンスを高める要素のすべてを邪魔するのが、「○○は~というものだ」「~あるべき」「~のはず」という思い込みです。「日本は再エネに恵まれていない」「コストの点から石炭火力も使うべき」「原発は安全なはず」といった思い込みが強いと、これら3つの要素を強化していくことができません。これまでの「思い込み」の棚卸しを含め、そのあたりの振り返りから、エネルギー政策を考えなくては、と改めて思ったのでした。

(私のゲストへの質問とそれへの回答は、このメールニュースの下のほうにあります)

第2回の配付資料はこちらにあります。

最初に、ここにある事務局の用意した「参考資料(資源、地政学、国家戦略)」の概要を事務局が説明しました。
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/002/pdf/002_008_02.pdf

その後、ここにある事務局の準備した質問事項を参考に
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/002/pdf/002_007_02.pdf

説明資料を準備してきてくれたゲスト・スピーカーが説明をし、私たちとの質疑応答、という流れでした。

以下の議事次第はこちらです。テーマは、「地政学的リスクのトレンド等について」。
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/002/pdf/002_002.pdf

ゲスト・スピーカーは、英国と米国から、この分野の第一人者のおふたりでした。
ポール・スティーブンス氏 (英国王立国際問題研究所特別上席フェロー)
アダム・シミンスキー氏 (米国戦略国際問題研究所エネルギー地政学議長)

事務局がゲストに依頼した質問事項(以下)からも明らかなように、主に、化石エネルギーの価格やそれらをめぐる地政学的なリスクなどをめぐる議論でした。

1:原油・ガス・石炭価格の見通しとその要因

⇒Q1. 2050 年という長期の視点で、供給面と需要面の将来変化をどう予測し、長期的な価格トレンド(原油・ガス・石炭)をどう考えているか。その際の重要なファクターは何か。

2:地政学(中東、中露)

⇒Q2. 長期の地政学的な構造変化を考える上で、軍事力(例:軍事費)の他、(マクロ的な)経済力(例:GDP の世界シェア)や(ミクロの)産業競争力(例:グローバルサプライチェーンに占める当該国企業の位置づけ)といった要素が重要であると考えられるが、どう評価するか。⇒Q3. 中東地域においては、地政学的な構造変化をもたらす要素として、石油需要の減少、スンニ派 vs シーア派の対立激化、米国の中東戦略の変更(軍事的コミットの低下)、サウジアラビアの経済改革(皇太子(Mbs)主導)といった要素が重要であると考えられるが、どう評価するか。

⇒Q4. 世界の地政学的な構造変化を考える上では、中東情勢だけではなく、中露関係も重要であると考えられるが、中露の地政学的緊張関係が高まる可能性がある中で(例:北極海航路をめぐる争い)、エネルギー面での関係強化の本気度・持続可能性をどう見るか。※例:ヤマル開発への中国からの投資、ガス取引 40 年契約、パイプライン整備 等

3:各国の長期戦略の評価と足下状況

⇒Q5. トランプ政権によるパリ協定離脱後の米国のエネルギー・環境戦略をどう見るか。また、米国の離脱後も低炭素対応の国際競争のトレンドが変わらない中で、その他の先進各国(独・加・仏)や新興国(中・印)の低炭素対応に向けたエネルギー・環境戦略をどう評価するか。

⇒Q6. 高い削減目標の実現の鍵は何か(技術、インフラ、規制等の社会制度等)

おふたりの説明や質疑応答など、会合全体の議事録はこちらをどうぞ。
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/002/pdf/002_012.pdf

会合の動画を見ることもできます。
(最初からお二人のプレゼンテーションまで)
https://www.youtube.com/watch?v=je87vpJ0QIs&feature=youtu.be
(自由討議)
https://www.youtube.com/watch?v=khxhvz1Ot7M&feature=youtu.be

ゲスト・スピーカーの資料はこちらにあります。ポール・スティーブンス氏 (英国王立国際問題研究所特別上席フェロー)
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/002/pdf/002_005.pdf

アダム・シミンスキー氏 (米国戦略国際問題研究所エネルギー地政学議長)
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/002/pdf/002_006.pdf

お二方からのプレゼンテーションの後、委員からの質問に答える質疑応答となりました。私は、以下のように質問させてもらいました。

~~~~~~~~~~~ここから抜粋引用~~~~~~~~~~~~

▼枝廣委員 3つ質問をさせてください。

1つは、EV、電気自動車についてです。非常に広がっていますが、運輸を変えるだけではなく、蓄電池として役割が大きいだろうというお話がありました。そのEVが広がって、蓄電池としての役割を果たすことで、再生可能エネルギーをどれぐらい加速できるとお考えでしょうか? 

日本では、再エネは、特にソーラーや風力は間欠性という問題があって、なかなか広がらないと考えられています。そこに蓄電池が入ることで、もっと再エネが広がると思っているのですが、そのEVの普及による再エネの加速の可能性について、これが1つ目の質問です。

もう一つは、2050年を考えている私たちとして、お二人が繰り返しおっしゃ っているdiscontinuity(不連続)とか、disruption(途絶、混乱)とか、uncertainty(不確実性)などを織り込んだらいいのかなと考えていました。「2050年を予測するのはimpossible(不可能)だ」というお話もあったので、2050年まで旅していく上で、どのようなコンパスやツールキットを私たちは持っていればいいのか? アドバイスをいただければと思います。

3つ目は、私はエネルギーの専門家ではないのでナイーブな考え方かもしれませんが、外で何が起こるかわからない状況です。お話ししてくださったように、中東やアメリカなどいろいろなところで、外で何が起こるかわからないとしたら、何が起こってもできるだけ大丈夫なように日本のエネルギーをつくっておくのが一番賢明ではないかと考えます。

そうしたときに、日本はご案内のように輸入に大きく頼っているので、できるだけ輸入ではない形にしていく必要がある。おそらく産業用のエネルギーは、大量で安価で安定した電力が必要なので、ある程度、大規模に発電もしくはエネルギー供給する必要があると思うのですが、例えば家庭や地域であれば、できるだけ自分たちのエネルギーを地元にある再生可能エネルギーでつくり、もしくは地域内で融通して、エネルギーの自立もしくは自給率向上を図っていくことが大事だと考えています。このような考え方についてどのようにお考えでしょうか。

▼ポール・スティーブンス特別上席フェロー

非常に興味深いご質問をいただきました。EVの蓄電池の話ですが、たくさん大きなEVのグリッドがあると、それだけでたくさんの貯蔵ができます。蓄電ですね。特にメーター技術がどんどん変化しています。

EVのイメージは、まず自宅のガレージに入れたらプラグインして、電力を貯蔵する。でも、ヨーロッ パ等を見ていても、平均走行距離は20~30kmです。ということは、まだまだ未使用の蓄電能力がいっぱいあるということですから、ガレージに行ってプラグインして、今度はグリッドに使わない電力を入れる。すると売電できるわけです。道路を走りながら再充電できる技術もあるので、余った電力は売電できて、収入が入るというシステムになる。そうすると間欠性の問題はかなり解決できるのではないかと思います。

不連続性の問題の話がありました。不足で予測できないという話もあります。1つ私が心配しているのはーー長年の心配なのですがーー、例えばLNGで大きなアクシデントが起こったらどうなるのか、ということです。大型の事故が起こったらどうするのだ、ということです。いつも考えています。専門家は「そんなことあり得ないから」と必ず言うのですが。

1974年以前でしたら、「大きなガスの爆発なんてあり得ない」と言っていた。でも1974年、米国のフレキシブールという小さな村で、ガス爆発で村がなくなってしまったぐらいの大事故があったのです。ということで、解決策を考えなくてはならない。システムのロバストネス(頑強性)を確保しなくてはいけない、そういう事故が起こらないように、です。

それから、最後におっしゃった点ですが、私もずっと持論として言い続けていたことです。エネルギーの自給自足の発想です。エネルギーの自給自足というのは、輸入を減らせばできるという通説がありますが、これは単なる通説であって、根拠がないんです。国産のエネルギーがいいといっても、脆弱性は輸入モノと同じぐらい高い。

だから、多様性、分散化するということです。多角化するということです。エネルギーの多様化です。もちろん、省エネも入ります。これが第5番目のエネルギーで、ここに一番大きな可能性があると思います。

▼アダム・シミンスキーエネルギー地政学議長

ご質問ありがとうございます。おっしゃるとおりです。ダイバーシティが重要です、多様性を確保するということです。そして省エネ。消費についても考え、効率アップですね。そうすると、トータルでリスクにさらされる割合が減るでしょう。

エネルギー貯蔵について興味深いのは、最大のエネルギー貯蔵システムは揚水発電だということです。 夜間に、丘の上まで水を引っ張り上げて、昼間にその水を落として発電し、電力を日中使うという仕組みですね。 これも、ある程度、貯蔵・蓄電池として捉えることができると思います。

蓄電池がより広範に普及するためには、現在のリチウムイオン電池以外も考えなくてはならないと思います。例えば、固体リチウム電池。こちらのほうが安全性も高いですし、安価になるのではないかと思います。 地政学的な要因も入ってきます。コバルトはどこから来るのでしょうか? リチウムはどこから購入するのでしょうか? 誰がバッテリーをつくるのでしょうか? ここにも地政学的な含みがあります。

さらに、モノは陳腐化していきます。ずっと未来永劫、今の状態が続くと思いがちだけれども、現実はそうではないのですよね。10年前、15年前に、携帯にカメラがつくなんて誰が考えたでしょうか。でも、みんな携帯カメラで撮っていますよね。動画だってすぐにネットでアップしたり、友達に送ることもできます。私も、娘と孫がシカゴに住んでいます、インターネッ トでつながっていますから、いつでも連絡がとれる。これは新しいことですよね。

イノベーションは大好きです。私は全然心配していません。政策をつくる側として何ができるのかというと、環境づくりだと思うのです。イノベーションがちゃんと進むように、そして伸びるように、環境を設定することではないでしょうか。

忘れてならないのは、多様性の重要性です。 需給両面で多様性を確保しなくてはいけないということです。それから最後の点、このレジリエンスがますます重要になってくると感じています。強靱性ということで。ハリケーンのことを考えてください。アメリカでヒューストンやフロリダ、カリブ海も襲ったハリケーンによって、電力系統が大きな被害を受けた。ヒューストンの製油所自体は全くダメージを受けなかったのですが、従業員が仕事場に行けなかった。洪水や冠水のせいです。

ですからエネルギー系統のレジリンスを、洪水や風害、突風が吹いたときにも耐え得るようにしておかなくてはいけない。分散電源という話では、先ほども話に出ましたが、特にインドにチャンスがある。即、分散電源に移行できるのではないかと思います。小型で、村単位で発電するのです。大きな送電網をつくる代わりに。これによって、重要な前向きの変化が出ると思います。

~~~~~~~~~~~~ここまで~~~~~~~~~~~~~

質問の時にも触れたのですが、2050年まで33年あります。33年前はどんな状況だったのでしょう?少し調べてみました。

33年前あたりの新商品やヒット商品は「世界で初めてのCDプレイヤー」「電子手帳」「ワードプロセッサー」。これらが33年前の新しい技術だったのです。そう思うと、33年後、2050年の世の中や技術は、とてもではないですが今、想定できないでしょう。

その想定できないものを考えに入れながら、2050年に向けてどう考えていくことができるのか。それが2つめの質問だったのですが、世界の第一人者からも、「レジリエンスを大事にせよ」という指針以外には、その旅路に有用なコンパスやツールキットは出てきませんでした。この意味するところをしっかりと認識したいと思います。

 

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