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資源エネ庁の「エネルギー情勢懇談会」に参加します

2017年08月30日
資源エネ庁の「エネルギー情勢懇談会」に参加します

Image by MikesPhotos.

http://bit.ly/2wLh2ec

エネルギー庁では、エネルギー基本計画について、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会を開催し、議論を開始しました。また、2050年視点での長期的なエネルギー政策の方向性を検討するため、経済産業大臣主催の「エネルギー情勢懇談会」が新たに設置されました。

私はこの「情勢懇」こと、エネルギー情勢懇談会に参加することになりました。本当によい機会をいただいたと思っているので、できるだけ勉強し、考え、伝えていきたいと思っています。

情勢懇の位置づけと、参加するに当たっての私の視点をお伝えします。

まず、並行して開催されるエネルギー関連の2つの会の位置づけについて説明しましょう。

日本のエネルギー政策基本法では、エネルギー基本計画を策定し、3年ごとに検討することを定めています。現在のエネルギー基本計画(ギョーカイ用語で「エネ基」と呼ばれます)は、2014年に策定しされたものなので、策定から3年が経過しています。そこで、エネルギー政策基本法で定められている検討を行うため開催されるのが「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」です。8月9日に議論が開始されました。

この「基本政策分科会」には18名の委員がいらっしゃいます。委員名簿はこちらにあります。(かつて「基本問題委員会」でご一緒していた委員の懐かしい?お顔もたくさん!)http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/021/pdf/021_003.pdf

ちなみに8月9日の会合の座席表も見ることができます。こんなふうに委員がずらりと一列に並び、向かい側には、世耕大臣、坂根分科会長のほか、エネ庁の担当トップが並び、脇に外務省や環境省の関連トップが座ります。
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/021/pdf/021_004.pdf

ここで配布された資料はこちらにあります。また、もう少しすると議事録もアップされるはずです。
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/021/

当日のようすの動画はアップされています。
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/

このように、基本政策分科会は、エネルギー基本計画の実現を重視し、課題を抽出しながら議論をしていく位置づけです。

それに対して、もう少し遠い将来に向けての勉強と議論を始めよう、というのが、私の参加する「エネルギー情勢懇談会」です。

~~~~~~~~~~~~~~~資源エネ庁のウェブより~~~~~~~~~~~~~~~

我が国は、パリ協定を踏まえ「地球温暖化対策計画」において、全ての主要国が参加する公平かつ実効性ある国際枠組みの下、主要排出国がその能力に応じた排出削減に取り組むよう国際社会を主導し、地球温暖化対策と経済成長を両立させながら、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すこととしています。

他方、この野心的な取組は従来の取組の延長では実現が困難であり、技術の革新や国際貢献での削減などが必要となります。このため、幅広い意見を集約し、あらゆる選択肢の追求を視野に議論を行って頂くため、経済産業大臣主催の「エネルギー情勢懇談会」を新たに設置し、検討を開始します(第1回は8月30日を予定)。
http://www.meti.go.jp/press/2017/08/20170801002/20170801002.html

~~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

基本政策分科会は、「 3年に一度検討する」という法律に基づく正式な手続きとしての検討会であるのに対し、エネルギー情勢懇談会は、手続きとは関係なく、大臣が私的に設置する懇談会です。

パリ協定に基づき、2050年に向けての産業・技術革新、海外の情勢などを勉強する場であり、いろいろなゲストスピーカーから話を聞いて学び、議論していきます。

エネルギー情勢懇談会設置の根底にあるのは、「現在のエネルギー政策や、従来の議論の延長上では、パリ協定はとても到達できない」という問題意識だと考えています。パリ協定に向けて、政府としての方針をしっかりと固めていくことが大きな目的の一つでしょう。

原子力政策についてもあらゆる選択肢の一つとして議論の対象となると理解していますが、あくまでも「2050年の温室効果ガス80%削減」という極めて高い目標に向けてのエネルギー政策を、様々な観点から考えていくことになると理解しています。

海外の地政学的動向や技術革新など、不確実な要因があることを認めながらも、時間軸が長い分、様々な可能性を考えていくことができるのではないか、日本の今後のエネルギーの大きな方向性が議論できれば、とワクワクしています。

さて、このエネルギー情勢懇談会のメンバーは8人です。東大の五神総長、三井物産の飯島会長、日立製作所の中西会長、小松製作所の坂根相談役、アジア経済研究所の白石所長、アジア・パシフィック・イニシアティブの船橋理事長、そして女性が2人で、宇宙飛行士の山崎直子さんと私です。

このような委員会や懇談会では、事務局が議論のたたき台として、データや論点の整理をしたものを提供します。今回のエネルギー情勢懇談会に関しても、参考資料として、「エネルギー選択の大きな流れ」がアップされています。
http://www.meti.go.jp/press/2017/08/20170801002/20170801002-2.pdf

「主な情勢変化、今後その見極めが重要」として挙げられているのが、次の8つの観点です。○ 油価と再エネ価格の下落○ 蓄電池開発の本格化と現実○ 脱原発を宣言した国がある一方、多くの国が原子力を活用している状況○ 自由化と再エネ拡大、悪化する投資環境○ パリ協定、米国離脱もトレンド変わらず○ 拡大する世界のエネルギー・電力需要○ 新興企業の台頭、金融の存在感○ 高まる地政学リスク、求められる戦略

そのうえで、「パリ協定 ? 2050年の温室効果ガス削減について、先進国は極めて野心的な高い目標を共有」とし、各国の目標をいくつか紹介しています。

米国、カナダ、ドイツ、フランスの目標と並んで、日本についても「2050年に2013年比80%削減」という目標が掲載されています。

日本の温暖化の長期目標をめぐっては、2008年、洞爺湖サミットを控えたタイミングで、福田総理のもと、首相官邸に「地球温暖化問題に関する懇談会」が設置され、議論を重ねました。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/index.html

私も委員の一人でした。委員名簿はこちらにあります。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai01/01siryou2.pdf

企業の競争力への悪影響などを心配して、できるだけ低めの目標を設定しようという経済界代表の委員と、「温暖化を止めるために、あるべき削減目標をめざすべき」とする私たち市民派の委員とのバトルを思い出します。

最終的には、「日本は2050年までの長期目標として、現状から60~80%の削減を目指す」とする最終提言がまとまりました。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai05/05siryou1.pdf

その後、「2050年に80%減」という長期計画を閣議決定したのですが、正式な国の目標として国連に提出することができていません。経産省・環境省の意見の違いなど、政府内の調整ができていないためだそうです。

この点については、今回のエネルギー情勢懇談会での大きな論点の1つになることと思います。経産省と環境省のそれぞれの考え方や、その土台としているデータや見通しについて、よく教えてもらい、広く伝え、考えていきたいと思っています。

今回私は、この懇談会の議論に、3つの視点をもって参加したいと考えています。

1つめは、「環境」の視点です。

この情勢懇自体、パリ協定の野心的な目標を前提としていますから、温室効果ガス排出量については十分に議論されるはずですが、その議論が世界的にどのように位置づけられるのか、世界の動向も見ながら考えていきます。また、エネルギーは、温暖化以外にもさまざまな環境問題につながっていますから、そういった視点も忘れないようにします。

2つめは、「地域」の視点です。

人口減少と高齢化が進む日本では、地域のエネルギーをどのようにまかなうかが今後ますます重要になってきます。

2050年になっても、今と同じように、大型の発電所から全国津々浦々の家庭まで長い送電網で送電しているとは思えません。大容量の安定した電力を必要とする工業用途は2050年にも大規模発電所に依存しているかもしれませんが、家庭では屋根上の太陽光発電とその頃には安価になっているであろう充電池、または電気自動車を電池代わりに利用することで、多くの家庭がエネルギーの自給自足を実現しているのではないでしょうか。

そして、それぞれの地域が、地域内で発電した電力を地域内で融通する仕組みを持っていて、送電ロスもなく、海外情勢による輸入エネルギーの途絶があっても地域の暮らしや経済が混乱することもなく、レジリエンスの高い地域になっている(いてほしい)と思うのです。

しかし、そのような地域のエネルギー自立をめざす技術や法的な枠組みは、これまで余り重視されていませんでした。参考資料の8つの視点には、「地域」の視点が欠如しています。地域作りのお手伝いをあちこちでさせていただいている自分だからこそ、情勢懇でぜひ問題提起し、技術や法的な専門家の話を聞き、議論したいと思っています。

3つめは、「市民」の視点です。

原発事故から6年以上たち、エネルギーに関する意識や、市民が議論する場も減っているのが現状かと思います。日本では、環境意識もエネルギーへの関心も減ってきているという世論調査もあります。

今回せっかくの機会を得たので、できるだけわかりやすく情報や情勢を伝え、みんなで考え、議論するきっかけを提供したいと考えています。

望ましいエネルギーの未来を創り出すためには、専門家だけに頼るのではなく、私たち一人一人が知り、考え、議論し、発言することが何よりも大事だと思うからです。

事前に出されている参考資料には、「50年=あらゆる可能性を追求」とあります。現状の延長線上にない、不連続の未来を創り出すために、何を知っておく必要があるのか、何を考えるべきなのか。

懇談会での情報をお伝えしつつ、みんなで考えていける場も創りたいと思っています。ぜひいろいろなご意見やご感想をお寄せいただけたらうれしいです!

 

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