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企業形態も進化を!「ベネフィット・コーポレーション」というあり方

2016年12月02日
企業形態も進化を!「ベネフィット・コーポレーション」というあり方

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https://www.flickr.com/photos/1percentfortheplanet/4477430988/

「時代が変われば社会の要請も変わってゆきます。そして、そのときの社会の要請に応えられる企業しか存続することはできないのです」

これは私が企業向けの講演でよく口にする言葉です。「ではこれからの時代が企業に突きつける、社会の要請とは何でしょうか? 御社はそれに応える準備ができているでしょうか?」とつづきます。

時代と社会の要請の変化に応じて変わるべきは、企業だけではありません。経済の仕組みや経済学もそうですし、「企業形態」もそうです。

現在、社会の主流である「株式会社」は、18世紀の産業革命の勃興とともに多額の資本を集める必要のある事業が急速に増加したことに対して、生み出され、発展した企業形態です。

株式会社という企業形態は、多額の資本を集めるために最もよく適した事業形態だといえるでしょう。資金を「株式」の購入・保有というカタチで出してくれる株主が、会社のオーナーになります。

株主は、会社の事業が成功して利益があがり、それを配当として受けとることを目的に、株式を購入し、保有します。したがって、「会社の目的は、株主の利益を最大化することにある」という考え方が主流です。

大航海時代に未知の大陸に乗り出していくために多額の資本が必要だった時代に対し、今の時代は、企業活動をどのように地球の限界との折り合いをつけながら行うかが問われ、営利企業といえども、貧困や格差、環境問題といった社会課題の解決の一助となることが求められています。

そこで、企業の社会貢献活動やCSR(企業の社会的責任)への取り組みが盛んになってきました。しかし、それらはあくまでも「株主の利益に抵触しない範囲で」行うことになります。環境問題や社会問題に取り組むために利益を減らしたりしたら、株式会社の法律上の存在根拠である「主たる目的は利益の追求」に反してしまうからです。

社会的課題の解決を進めたいと思えば思うほど、資本も必要になるでしょう。しかし、NGOや非上場の社会的企業が必要な資本を集めるのは難しいという現状があります。一方、資本を集めやすい株式会社という企業形態をとると、利益追求が目的とされているため、目先の利益につながらない社会的課題の解決に力を注ぐことが難しくなります。

この矛盾をどう解けばよいのか?

これまで、「本当はもっと社会的課題の解決に力を入れたいのですが、株主はそれを許してくれない。どうしたらよいのでしょう?」という企業の方に、「一番良いのは上場をやめちゃうことですよ」と申し上げてきました。もちろん、言うは易し......ですが。。。

このような時代や社会の要請の変化に対して、それぞれの企業が社会貢献活動やCSR活動のできる範囲で努力するだけではなく、「企業がもっと大手を振って、社会的課題の解決に取り組めるよう、企業形態を進化させればよい!」という動きが米国で広がっています。

「ベネフィット・コーポレーション」です。

幸せ経済社会研究所のサイトの「キーワード」を参考に紹介しましょう。
http://ishes.org/keywords/2016/kwd_id001927.html

ベネフィットとは公益のこと。営利企業でありながら、「利益追求」ではなく、「社会貢献」を法人存続の根拠にする!という企業形態なのです。

株式会社では主に利益を得る対象は株主ですが、ベネフィット・コーポレーションの場合、ベネフィット(公益)を受けるのは、社員、顧客、環境、社会全体といえます。

ベネフィット・コーポレーションは、州政府が定める法律上の企業形態です。2010年にメリーランド州で法制化されて以来、米国の31州に広がっており(2016年4月現在)、全米で3,000社以上あります。

法律の細部は州によって異なりますが、ベネフィット・コーポレーションは、
(1)経済的利益だけではなく、公益と持続可能な価値の創造を目指すこと、
(2)社会と環境に対する影響を考慮すること、
(3)ステークホルダーなどへの社会的・環境的影響についての進捗状況を報告
することが求められます

一般の株式会社では、株主は利益をあげない経営陣を訴えることができますが、ベネフィット・コーポレーションでは、株主は社会貢献をしていない経営陣を訴えることができるのです!

ベネフィット・コーポレーションなら、利益追求と相容れない社会的課題の解決に取り組んだとしても、法律上、株主から訴えられることはありません。株式会社としての資本の集めやすさはそのままで、安心して社会的課題の解決に注力することができるのです。

ベネフィット・コーポレーションの一例は、アウトドアウエアで有名なパタゴニア社です。パタゴニア社では、オーガニックコットンの使用 、環境影響の追跡と公表、 裁縫を担当する全従業員の労働条件と賃金の規定、売り上げの1%を環境保護のグループに寄付するといった取り組みが行なわれています。

ベネフィット・コーポレーションについて詳しくはこちら(英語)
http://benefitcorp.net/

なお、ベネフィット・コーポレーションは、しばしば「Bコーポレーション」と混同されますが、両者は異なるものです。ベネフィット・コーポレーションが州政府が定める法律上の企業形態であるのに対して、Bコーポレーションは、B-Lab(NPO)という非政府組織によって運営されている環境・社会に貢献する企業を認証する制度です。

日本でも早く企業形態が進化して、「株主のための利益追求の会社」とは別に、「社会的課題の解決を追求する会社」の存在も認められるようになれば、と思います。社会的な土壌は整ってきていると思いますので!

日本ではベネフィット・コーポレーションの議論はまだですが(法律上の議論となります)、もう1つのBコーポレーションについては、少しずつ動きが出てきています。現在、日本の3社が認証を得ているそうです。

 

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