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産業政策としての「パリ協定」の早期批准

2016年10月10日
産業政策としての「パリ協定」の早期批准

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https://commons.wikimedia.org/wiki/File:COP21_participants_-_30_Nov_2015_(23430273715).jpg

日本の経済界はこの危機感を認識できているのでしょうか。

EUの「一括批准」という異例のプロセスで、2020年以降の地球温暖化対策「パリ協定」が 11月初旬に発効する運びとなりました。

日本政府は批准手続きが遅れていて、このままでは来月モロッコで開催されるCOP22でのパリ協定批准国の会合に参加できない見通しです。

10月2日、Yahoo!のオーサーコーナーに、短い記事を投稿しました。

「パリ協定」発効目前の今、経団連のすべきこと

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「パリ協定」発効目前の今、経団連のすべきこと

日本の経済界はこの危機感を認識できているのでしょうか。

EUの「一括批准」という異例のプロセスで、2020年以降の地球温暖化対策「パリ協定」が 11月初旬にも発効する運びとなりました。

日本政府は批准手続きが遅れていて、このままでは来月モロッコで開催されるCOP22でのパリ協定批准国の会合に参加できない見通しです。

そのニュースを読んだとき、「なぜ経団連など日本の経済界は、『早く批准せよ!』と政府に圧力を掛けないのかなあ?」と思いました。

経団連や従来型の経済界が温暖化政策に乗り気でないことは明らかですが、そうだとしても、パリ協定後の世界のビジネスに大きな影響を与える「ルールづくり」には参加すべきではないでしょうか? 

日本が批准を遅らせても、パリ協定は発効し、世界は先へ進みます。日本企業もそのグローバルな土俵で戦わざるを得ません。

だとしたら、一刻も早く、そのルールづくりに参加して、自国に不利にならないようにすべきではないでしょうか?

私は安倍政権の「何をおいても経済政策を最優先する」という政治の考え方には賛成ではありません。しかし、百歩譲って、経済政策の最優先をめざすとしても、パリ協定を早く批准し、企業に大きな影響を与えるルールづくりに参加することこそ、将来を見越しての大事な経済政策の1つではないか、と思うのです。

皆さんはどう思われますか?

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この記事を投稿した3日後、10月5日に、オーストリア、ボリビア、カナダ、EU、フランス、ドイツ、ハンガリー、マルタ、ネパール、ポルトガル、スロバキアが批准書を寄託し、発効要件が満たされました。

パリ協定は11月4日に発効することが決まったのです! 11月7日からモロッコ・マラケシュで開催されるCOP22がパリ協定の最初の会合となります。

このような環境条約が採択から1年足らずで発効することは初めてではないかと言われており、世界各国の問題意識や関心を感じることができます。

日本が世界の時流に乗り遅れているのは、パリ協定だけではありません。レスポンスアビリティの「サステナブルCSRレター 2016/10/07(No.298)」から、足立直樹さんのお書きになったものを、快諾を得て、ご紹介します。

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《月の便り》「パリ協定が発効します」

              サステナビリティプランナー 足立直樹

 こんにちはレスポンスアビリティの足立です。昨年12月のCOP21で合意されたパリ協定が、いよいよ来月4日に発効することになりました。10月2日にインドが批准したのに続き、EU議会も10月4日に批准を決定するなどし、発効の要件である世界の排出量の55%以上がカバーされることになったからです。

 中国、アメリカなど大排出国が軒並み批准する中、世界第5位の排出量である日本はまだ批准の準備ができていません。なので、来月はじめに開催される第1回締約国会議には、日本は締約国としては参加できそうにありません。

 パリ協定の発効要件はけっして緩くはありません。むしろハードルは高いと言ってもよいぐらいです。それにもかかわらず、合意から11ヶ月と大変早く発効することになります。こうした協定の中で史上もっとも短期間での発効になるそうですが、それだけ世界の危機感は強いのです。出遅れたことで日本の評判がどうなるのかちょっと心配ですが、一応日本政府も年内には批准するとのことですので、これはまだ良しとしましょう。

 しかし実はこれ以外にも、日本が批准できていないものがあります。例えば2010年に名古屋で開催された生物多様性条約COP10で合意された名古屋議定書は、2年前の2014年10月に既に発効しています。ところが日本は、2015年中には批准すると公言していたにもかかわらず、今もって批准していないのです。海外の専門家にこの話をすると、「えっ、日本はまだなのか?」と皆一様に驚きの声を上げます。

 これとはまた少し性格が異なりますが、ワシントン条約の締約国会議はつい先日、象牙の国内取引禁止を各国に求める決議をしました。中国やアメリカは既に国内市場を閉鎖する方針を発表していますが、日本は国内市場は厳格に管理されており、閉鎖対象にはならないと決議に反対しました。しかし海外のNGOなどからは、日本の国内市場で違法な取引があると指摘しています。

 水産資源の管理についても、同様の問題が起きそうです。マグロ、ウナギをはじめとするいくつかの魚種について規制を求める声が国際的に大きくなる中、日本はこれに反対しています。

 ここでは個々の問題を論じるつもりはありませんし、もちろん正当な反論もあるでしょう。しかし問題は、このようなことが積み重なったとき、海外から日本はどのように見えるのかということです。はたしてそれは、日本企業が国際的なビジネスを行う上でプラスに作用するのでしょうか?

 「長い物には巻かれろ」とか、「何でも国際的なルールに従え」と言うつもりはまったくありません。当然ながら、是々非々で良いのです。しかし、単にこれまでのやり方を続けたいというだけの理由で、新たな努力もせずに、ただ「嫌だ」ということには、ビジネス上のメリットはありません。

 新しいルールに合わせるのは、ましてやそれが規制的なものであれば、大変なのは理解できます。けれども、自分たちが大変だからというだけでは、正当な理由になり得ないのは明らかでしょう。たとえそれが高いハードルだったとしても、新しい国際ルールはイノベーションを起こすための起爆剤である、そのぐらい積極的に捉えてみてはどうでしょうか。

 パリ協定も、問題はいつ批准するかではありません。本当の問題は、ここからいよいよ脱炭素、すなわちカーボンゼロを目指す国際的な流れが始まるということです。こうした国際的な流れには、ゆめゆめ乗り遅れないように注意したいものです。

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~

レスポンスアビリティの「サステナブルCSRレター」、とても勉強になります。登録は、こちらのページからどうぞ。
http://www.responseability.jp/mailmagazine

足立さんが動画でポイントを紹介してくれるコーナーもあります。今回の件に関連する動画はこちらです。

「サスナビ!」から関連動画のご紹介COP21に参加した世界の先進企業が共通していて唱えていた3つのこととは...

■サスナビ!527 なぜ海外企業はゼロ炭素社会に向かって走り始めたのか? 3つのポイント 
https://youtu.be/V0A_GvwgJQ4

日本の「名古屋」の名前を冠した「名古屋議定書」も、まだ日本は批准していない......。「エネルギーと環境」が企業や産業、国の競争優位性の源泉になりつつある時代においては、こういった環境条約も産業政策の一環として考えていく必要があります。今後、ますますその傾向が強くなっていくことでしょう。

 

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