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つながりを読む

東京オリンピック・パラリンピックの環境・持続可能性・エシカルな側面は?

2016年05月07日 |コラム

盗用疑惑でもめた五輪のエンブレムが決定されましたね。

私もオリンピック・パラリンピック委員会の組織図に位置づけられている専門委員会の委員として、五輪関係のニュースには注目しています。エンブレムももちろん大事だと思いますが、同じく(もっと?)大事な側面があります。

オリンピックはどの場所で開催されても"スポーツの祭典"であることは変わりませんが、「地球にとってどのようなオリンピックなのか」は、オリンピックの開催地がどのように考え、準備し、運営するかによって、大きく異なってきます。

かつて、地球環境問題が大きな社会的な問題になる前は、オリンピックと環境問題・持続可能性が結びつけられることはありませんでした。しかし、温暖化をはじめとする環境問題が大きくなるにつれ、その規模や影響力の大きさから、オリンピック開催方法への社会の視線が厳しくなってきました。

「持続可能なオリンピック」をはじめて大きく打ち出したのは、ロンドン五輪でした。

朝日新聞のサイトと、レスポンスアビリティの足立直樹さんの記事からご紹介します。

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持続可能な東京五輪は可能かロンドン五輪の独立監視委員会議長、マッカーシー氏に聞く

2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックは、「近代五輪史上、最も持続可能な大会」を目指した。メーンテーマは「地球1個分のオリンピック」だった。

この目的を実現するために、05年の招致成功後の07年につくられたのが、五輪史上初の独立の監視委員会「持続可能なロンドン2012委員会」である。

計画策定から実施に至るすべての過程で、「地球1個分のオリンピック」という約束がきちんと守られているかを、保証するのが役割である。環境NGOや大会運営機関の間に立って、担当大臣、大ロンドン市長、組織委員会のトップからなるオリンピック委員会に、直接、意見を言える権限を持っていた。

15年4月にシンポジウム「東京はロンドンを超えられるか-より持続可能なオリンピックをめざして-」(WWFジャパン、自然エネルギー財団主催)が開かれ、共同声明が発表された。この機に来日した持続可能なロンドン2012委員会元議長のショーン・マッカーシー氏に、持続可能な大会にするために2012委員会が果たした役割と独立した監視機関の必要性、2020年の東京大会への助言を聞いた。
(つづきはこちらへ)

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オリンピックもエシカルがいい。東京五輪はこのままで大丈夫?

2012年のロンドン・オリンピックではロンドン大会組織委員会(LOCOG)が「持続可能なオリンピック」を目指して、運営面はもちろん、調達においても厳密で包括的な調達基準(LOCOG Sustainable Sourcing Code)を作り、環境面、社会面に配慮した製品とサービスを用いるよう徹底しました。

具体的に言えば、会場を作る木材や、大会で使用する紙はすべてFSC認証を取得したもの、会場や選手村で供される食品や飲料はフェアトレード、有機栽培、持続可能な生産をされた認証のあるものなどとしたのです。

(つづきはこちらへ)

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~

上記で言及されているシンポジウムや共同声明はこちらにあります。

シンポジウム報告:持続可能なオリンピック・パラリンピック東京大会に向けて
http://www.wwf.or.jp/activities/2015/04/1258007.html

WWFジャパン・自然エネルギー財団 共同声明
「東京はロンドンを越えられるか、より持続可能なオリンピックを目指して」
http://www.renewable-ei.org/activities/reports_20150407.php

また、これまでのオリンピック・パラリンピックでは環境的な側面をどのように
考え、取り組んできたのかなどについて、わかりやすくまとめられたレポートも
あります。

「オリンピック・パラリンピックと環境リスクの管理」
(斉藤照夫氏、損保ジャパン日本興亜RMレポート、2014)

さて、では日本で開催される今回のオリンピックはどうでしょうか? ロンドンが大きく打ち出した方向性や成果をさらに超えることを期待されているのは間違いありません。

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の中に、いくつかの専門員会が設置されているのですが、そのうちの1つが「街づくり・持続可能性委員会」です。

組織図

○専門委員会
アスリート委員会
街づくり・持続可能性委員会
文化・教育委員会
経済・テクノロジー委員会
メディア委員会

街づくり・持続可能性委員会

上記に委員名簿がありますが、私も委員の1人となっています。

委員会議事要旨

また、組織委員会のウエブサイトには、「持続可能性」というコーナーがあります。こちらに、「持続可能性に配慮した運営計画・調達コードの基本原則」がアップされています。専門委員会の議論を経て、定められているものです。

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

持続可能性

オリンピック・パラリンピック競技大会は、世界最大規模のスポーツイベントであり、その開催はスポーツの分野だけでなく、社会経済等、多岐に渡る影響を及ぼす一大事業です。また、その影響は、開催都市である東京のみならず、日本全体、さらには世界にまで広く及ぶものです。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、東京2020大会を持続可能な大会とするため、「持続可能性に配慮した運営計画」を策定し、活動を推進していきます。

持続可能性に配慮した運営計画 
フレームワーク

本フレームワークは、持続可能性に配慮した運営計画の策定にあたり、大会運営における持続可能性の基本的な考え方や目指すべき方向等、今後計画の具体的な内容を検討していくための道筋や論点を示したものです。

また、本フレームワークは、今後様々なデリバリーパートナー(※)からアイデアやご意見、情報等を得ながら、計画段階から持続可能性への配慮を目指していくにあたり、その下敷きになるものです。

詳細については、以下をご覧ください。
(ファイルをダウンロード)持続可能性に配慮した運営計画 フレームワーク(PDF:379.7 KB)

※計画策定や大会開催に向けて、財政その他の支援を行う、政府や地方自治体、民間機関

持続可能性に配慮した調達コード 基本原則

本基本原則は、経済合理性のみならず、公平・公正性等に配慮して、大会開催のために真に必要な物品やサービスを調達していくと共に、持続可能性を十分に考慮した調達を行うためのもので、具体的な持続可能性に配慮した調達コードを検討していくための原則を示すものです。

詳細については、以下をご覧ください。(ファイルをダウンロード)持続可能性に配慮した調達コード 基本原則(PDF:210.4 KB)

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さらに、専門委員会は委員の人数も多く詳細な議論を尽くすことが難しいため、専門家委員会にたたき台を提出するなど、具体的な議論を行うためのワーキンググループが3つ設置されています。

○ワーキングループ
低炭素ワーキンググループ
資源管理ワーキンググループ
持続可能な調達ワーキンググループ

委員名簿を見ていただくとわかるように、私は「低炭素ワーキンググループ」のメンバーとなっています。

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

低炭素ワーキンググループ

組織委員会は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を持続可能な大会とするため、「持続可能性に配慮した運営計画」を策定します。

2014年11月に発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による第5次評価報告書の指摘や、2015年12月の気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)のパリ協定の採択といった国際的な潮流があります。

東京2020大会においても、気候変動問題について配慮し、ローカーボン化に取組む必要があり、組織委員会では、より具体的な検討を行う「低炭素ワーキンググループ」を設け、東京2020大会の低炭素に関する事項の検討を進めています。

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~

他のワーキンググループの議事要旨は掲載されているので、おそらく私たちのワーキンググループの議論の要旨も近いうちアップされると思います。

オリンピック・パラリンピックの開催に際して、興味深く大変大事な考え方が「レガシー」です。legacyは「遺産」という意味で、「あとに遺すもの」というイメージです。組織委員会のウエブサイトからご紹介します。

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

アクション&レガシー

アクション&レガシープランとは

東京2020大会は、単に2020年に東京で行われるスポーツの大会としてだけでなく、2020年以降も含め、日本や世界全体に対し、スポーツ以外も含めた様々な分野でポジティブなレガシーを残す大会として成功させなければいけません。

東京2020大会組織委員会は、多様なステークホルダーが連携して、レガシーを残すためのアクションを推進していくために、「スポーツ・健康」、「街づくり・持続可能性」、「文化・教育」、「経済・テクノロジー」、「復興・オールジャパン・世界への発信」の5本の柱ごとに、各ステークホルダーが一丸となって、計画当初の段階から包括的にアクションを進めていくこととしました。

様々な分野でのポジティブなレガシーを残すためには、東京2020組織委員会のみならず、政府や東京都を含む地方公共団体、日本オリンピック委員会(JOC)・日本パラリンピック委員会(JPC)等のスポーツ団体、経済団体等のステークホルダーが、東京2020大会の成功に向けて「オールジャパン」体制で様々なアクションに取り組む必要があります。

今後、2016年リオ大会までにアクション&レガシープランを策定し、2020年に向けて各種アクションを実施してきます。アクションの成果であるレガシーについては、大会後のフォロー体制も含め、後に「レガシーレポート」として取りまとめていく予定です。

各ステークホルダーがアクション&レガシープランに基づき、それぞれのアクションを推進し、大会運営を成功させた暁には、東京2020大会のレガシーが様々な分野で継承されることになります。

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ということで議論が進められ、現在、中間報告が掲載され、意見の受付を行っています。

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アクション&レガシープラン2016中間報告

中間報告では、これまでの専門委員会での意見と、現時点での東京都、政府、経済界、JOC、JPC等の検討内容に加え、アイデア段階のアクションを整理しています。本年夏のブラジルでのリオ大会の前に「アクション&レガシープラン2016」を策定する予定で、今後、アクションの具現化に向けて、東京都、政府、経済界、JOC、JPC等とさらに連携を深めながら、オールジャパン体制で検討を進める予定です。

(ファイルをダウンロード)アクション&レガシープラン中間報告概要(PDF:1.2 MB)
(ファイルをダウンロード)アクション&レガシープラン(中間報告)のPRについて(PDF:486.9 KB)
(ファイルをダウンロード)アクション&レガシープラン2016中間報告(PDF:1.8 MB)
(ファイルをダウンロード)付表 アクション例一覧表(PDF:685.8 KB)


ご意見の受付について
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は2016年7月に「アクション&レガシープラン2016」の最終版公表を予定しております。
つきましては、中間報告(2016年1月公表)の内容等をご参考に皆様からご意見等を頂戴して、「アクション&レガシープラン2016」の今後の検討に活用させて頂き、より良いプラン策定に繋げて参りたいと考えております。

ご意見の受付について 募集期間
2016年4月26日(火)~ 同年5月17日(火)

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提出方法や提出先・お問い合わせ先についてはこちらをごらんください。

また、私も設立発起人に名を連ねていますが、の山本良一先生が代表を務める日本エシカル推進協議会(JEI)では、2020年東京オリンピック・パラリンピックを環境のみならず社会面にも十分に配慮したエシカル(倫理的)なもの、すなわちエシカル・オリンピック・パラリンピックにすることを提言しています。
http://ethicaljp.com/blog/2015/03/31/19

エシカル五輪への提案

JEIでは、足立直樹さんを中心に、エシカル・オリンピック・パラリンピックに相応しい調達基準とガイドラインに含めるべきと考える「エシカル調達ガイドライン配慮項目リスト」(PDF)をとりまとめて策定し、世に問うています。
https://drive.google.com/file/d/0B_zLph_pU4bYWG9NdFgydkplX00/view

せっかく日本で開催されるオリンピック・パラリンピックが、日本と世界の持続可能性を損なうのではなく強化しながら準備・運営されるように、持続可能性という観点からもあとに続く人々や組織、街づくりなどにとってのお手本となるように、オリンピック・パラリンピック後の日本の持続可能性に資するものになるように、ぜひ今後の展開をウォッチしていてください!

とくに、調達基準は東京オリンピック・パラリンピックの環境負荷を大きく左右するうえ、今後の日本企業の環境配慮にとっても大きな影響を与えるものになるでしょう。省エネや再エネなどの温暖化対策やその他の環境対策の面で、十分に高い基準を目指そうとしているか? 木材調達など、途上国の環境・社会的側面に十分配慮しているか?

現時点では、調達に関する基本原則が発表されているだけです。

持続可能性に配慮した調達コード 基本原則

<4つの原則>
(1)どのように供給されているのかを重視する
(2)どこから採り、何を使って作られているのかを重視する
(3)サプライチェーンへの働きかけを重視する
(4)資源の有効活用を重視する

このあと、具体的な調達品目ごとに調達基準が定められていくことになります。

私は調達ワーキングのメンバーではないので、具体的な議論には参加していませんが、しっかりウォッチしていきたいと思います。ぜひみなさんも!

 

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