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エネルギー基本計画政府案、原発「重要」の文言削除されず

2014年02月27日
エネルギー基本計画政府案、原発「重要」の文言削除されず

Image by Ayumu Kawazoe. Some rights reserved.

http://www.flickr.com/photos/kazeiro/3262208610/

1月25日にアップした「一日一題」で、報道記事に基づき「 エネルギー基本計画、原発「重要」の文言削除へ」、 調整する理由として「約1万9千件も寄せられた国民の声や、与党内の慎重な意見を反映して表現に修正を加える必要があると判断した」とあります、とお伝えしました。

2月25日にエネルギー基本計画の政府案が発表されました。くだんの箇所を見てみると、あれれ?

エネルギー基本計画の政府案には

「原子力 (前略) エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である」とあります。

「重要な」が入ったままですね。1万9千件も寄せられた国民の声を反映するのをやめたのでしょうか???

(ちなみに、「ベース電源」と「ベースロード電源」という表記の違いがありますが、両方とも、電力需要の変化に対応して、ピーク時に必要量を発電する「ピーク電源」に対して、「安定した一定の出力で発電を行うもの」の意味で、同じ意味だと考えられます)

エネルギー基本計画の政府原案はこちらにあります。
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/kihonkeikaku/140225_1.pdf

また、パブコメ(パブリックコメント)については、このようにあります。

新しい「エネルギー基本計画」策定に向け、下記要領にてパブリックコメントを実施いたしました。御意見の概要及び御意見に対する考え方は別紙のとおりです。

到達件数:18,663件
御意見の概要と御意見に対する考え方:別紙のとおり(全95ページ)

パブリック・コメントと回答(考え方)
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/kihonkeikaku/140225_2.pdf

パブリックコメントの資料を読むと、どんな意見があったのか、その幅や重点が伝わってきます。もっとも、私の出した意見は、項目として取り上げられていな
かったので、すべて取り上げたわけではなさそうです。

多くの意見が寄せられたであろうポイントへの、「考え方」を見てみました。(読みやすさのため、改行を入れています)

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~

●(原子力は即時ゼロにすべきである/再稼働をすべきでない) というコメントに対して


福島県においては、今なお約14万人の方が厳しい避難生活を送っておられます。国がこれまで原子力政策を担ってきたことに伴う社会的責任については、被災者の皆様に心からお詫びしたいと考えています。

原発に対する多様な意見があることについては、エネルギー基本計画の政府の原案の第3章第4節1.において「事故前に比べ、我が国におけるエネルギー問題
への関心は極めて高くなっており、原子力の利用は即刻やめるべき、できればいつかは原子力発電を全廃したい、我が国に原子力等の大規模集中電源は不要であ
る、原子力発電を続ける場合にも規模は最小限にすべき、原子力発電は引き続き必要であるなど、様々な立場からあらゆる意見が表明され、議論が行われてきて
いる。政府は、こうした様々な議論を正面から真摯に受け止めなければならない」という形で記載しております。

エネルギー基本計画の政府の原案の第1章第2節2.に記載しておりますとおり、原子力発電所が停止した結果、「原子力を代替するために石油、天然ガスの海外からの輸入が拡大することとなり、電源として化石燃料に依存する割合が震災前の6割から9割に急増」しております。

「原子力発電の停止分の発電電力量を火力発電の焚き増しにより代替していると推計すると、2013年度に海外に流出する輸入燃料費は、東日本大震災前並
(2008年度~2010年度の平均)にベースロード電源として原子力を利用した場合と比べ、約3.6兆円増加すると試算され」ています。

さらに、「海外からの化石燃料への依存の増大は、資源供給国の偏りというもう一つの問題も深刻化させて」います。「現在、原油の83%、LNGの29%を
中東地域に依存しており(2012年)、中東地域が不安定化すると、日本のエネルギー供給構造は直接かつ甚大な影響を受ける可能性があ」ります。

こうした中、エネルギー基本計画の政府の原案の第2章第1節2.に記載しておりますとおり、「国内資源の限られた我が国が、社会的・経済的な活動が安定的
に営まれる環境を実現していくためには、エネルギーの需要と供給が安定的にバランスした状態を継続的に確保していくことができるエネルギー需給構造を確立
しなければならない」と考えており、「各エネルギー源は、それぞれサプライチェーン上の強みと弱みを持っており、安定的かつ効率的なエネルギー需給構造を一手に支えられるような単独のエネルギー源は存在しない」中で、「危機時であっても安定供給が確保される需給構造を実現するため」には、原子力も含め、「エネルギー源ごとの強みが最大限に発揮され、弱みが他のエネルギー源によって適切に補完されるような組み合わせを持つ、多層的な供給構造を実現することが必要である」と考えております。

このため、エネルギー基本計画の政府の原案の第2章第2節1.に記載しておりますとおり、「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導
入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」方針の下で、「我が国の今後のエネルギー制約を踏まえ、安定供給、コスト低減、温暖化対策、安
全確保のために必要な技術・人材の維持の観点から、確保していく規模を見極める」こととしております。

また、エネルギー基本計画の政府の原案の第2章第2節1.及び第3章第4節1.において記載しているとおり、「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」こととしています。その際、いただいたコメントを踏まえ、「国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」旨を記載しています。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(脱原発を目指すべきである) というコメントに対して

エネルギー基本計画の政府の原案の第2章第1節2.に記載しておりますとおり、「国内資源の限られた我が国が、社会的・経済的な活動が安定的に営まれる環境を実現していくためには、エネルギーの需要と供給が安定的にバランスした状態を継続的に確保していくことができるエネルギー需給構造を確立しなければならない」と考えており、「各エネルギー源は、それぞれサプライチェーン上の強みと弱みを持っており、安定的かつ効率的なエネルギー需給構造を一手に支えられるような単独のエネルギー源は存在しない」中で、「危機時であっても安定供給が確保される需給構造を実現するため」には、原子力も含め、「エネルギー源ごとの強みが最大限に発揮され、弱みが他のエネルギー源によって適切に補完されるような組み合わせを持つ、多層的な供給構造を実現することが必要である」と考えております。

このため、エネルギー基本計画の政府の原案の第2章第2節1..に記載しておりますとおり、「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの
導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」方針の下で、「我が国の今後のエネルギー制約を踏まえ、安定供給、コスト低減、温暖化対策、
安全確保のために必要な技術・人材の維持の観点から、確保していく規模を見極める」こととしております。

なお、エネルギー基本計画の政府の原案の第4章2.に記載しておりますとおり、「海外からの化石燃料に過度に依存するエネルギー需給構造を長期的視点に基づいて変革していくため」、原子力の安全性、信頼性、効率性を高める技術のほか、「再生可能エネルギー熱利用の低コスト化・高効率化や多様な用途の開拓に資する研究開発」、「我が国の排他的経済水域に豊富に眠ると見られているメタンハイドレートや金属鉱物を商業ベースで開発が進められるようにするための技術開発」、「国産エネルギー源を有効に利活用できる二次エネルギーである水素エネルギー」を実装化するための技術開発や「将来の革新的なエネルギーに関する中長期的な技術開発」などを推進することとしております。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(パブリックコメントの意見をきちんと反映させるべきである)というコメントに対して

パブリックコメントの意見をきちんと反映させるべきとの御指摘を踏まえて本資料を作成しております。また、寄せられた意見について、丁寧に精査し、エネル
ギー基本計画の政府の原案をとりまとめました。

~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~

また、私の意見でもありますが、「そもそもどのくらいのエネルギーがいるか」から考えるべき、という意味で、

(経済成長を最優先とせず、エネルギーの需要を抑える持続可能な社会を目指すべきである)というコメントがいくつも寄せられていることがわかります。

しかし、これへの「考え方」は......

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(経済成長を最優先とせず、エネルギーの需要を抑える持続可能な社会を目指すべきである)というコメントに対して


調査会意見第2章第1節1.に記載されているとおり、エネルギーは人間の「あらゆる活動を支える基盤」であると考えております。政策の基本的な視点として、経済成長の視点も重要であり、「経済負担の最小化を図りつつ、エネルギーの安定供給と環境負荷の低減を実現していくことは、既存の事業拠点を国内に留
め、我が国が更なる経済成長を実現していく上での前提条件」だと考えております。このため、こうした点をエネルギー基本計画の政府の原案の第2章第1節1.に記載しています。

~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~

経済成長の位置づけについて問うているのに、「経済成長を実現していく上での前提条件」と、経済成長は所与のものになってしまっていて、まったくかみ合っ
ていませんね。。。

このエネルギー基本計画、与党の了解を経て、来月にも閣議決定され、確定することになるようです。


なお、ご参考までに、私が提出したパブリックコメントはこちらの下のほうにあります。特に、

> 「広報」「情報発信」だけではなく、双方向型のコミュニケーションや対話を進めてもらいたい。

> 原発の新増設をどうするのか、つまり、日本はこれから原発をどうしていくのか、エネルギーをどうしていくのか、という本質的な方向性の話を、時間がかかることを前提に、先送りせずに、しっかりと議論し、対話し、進めていってほしい。

強く強く望んでいます。よかったらそのやり方も一緒に考えます!

 

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