「エネルギー情勢懇談会」とは

日本のエネルギー政策の拠り所は、2002年6月に制定された「エネルギー政策基本法」です。このエネルギー政策基本法では、エネルギー基本計画を策定し、3年ごとに検討することが定められています。

現在のエネルギー基本計画(ギョーカイ用語で「エネ基」と呼ばれます)は、2014年に策定されたもので、2030年までの日本のエネルギーを対象としています。策定から3年が経過した今年、「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」が開催され、法律で定められた見直しの議論が進められています。

同時に、「そろそろ2030年後も考えに入れる必要がある。特にパリ協定の『2050年に温室効果ガス80%削減』という日本の目標を達成するために、2050年までのエネルギーを考えていかなくてはならない」ということで、2030年よりも遠い将来に向けての勉強と議論を始めるためにと立ち上げられたのが、 私の参加する「エネルギー情勢懇談会」です。

2050年視点での長期的なエネルギー政策の方向性を検討するため、経済産業大臣主催の「エネルギー情勢懇談会」を新たに設置します。

2014年に策定したエネルギー基本計画については、策定から3年が経過し、エネルギー政策基本法で定められている検討の時期にきています。このため、8月9日に総合資源エネルギー調査会基本政策分科会を開催し、議論を開始します。

我が国は、パリ協定を踏まえ「地球温暖化対策計画」において、全ての主要国が 参加する公平かつ実効性ある国際枠組みの下、主要排出国がその能力に応じた排出削減に取り組むよう国際社会を主導し、地球温暖化対策と経済成長を両立させながら、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すこととしています。

他方、この野心的な取組は従来の取組の延長では実現が困難であり、技術の革新や国際貢献での削減などが必要となります。このため、幅広い意見を集約し、あらゆる選択肢の追求を視野に議論を行って頂くため、経済産業大臣主催の「エネルギー情勢懇談会」を新たに設置し、検討を開始します(第1回は8月30日を予定)。  

(資源エネ庁のウェブより)

基本政策分科会は、「 3年に一度検討する」という法律に基づく正式な手続きとしての検討会であるのに対し、エネルギー情勢懇談会は、手続きとは関係なく、 大臣が私的に設置する懇談会です。 パリ協定に基づき、2050年に向けての産業・技術革新、海外の情勢などを勉強する場であり、いろいろなゲストスピーカーから話を聞いて学び、議論していきます。

エネルギー情勢懇談会設置の根底にあるのは、「現在のエネルギー政策や、従来 の議論の延長上では、パリ協定はとても到達できない」という問題意識だと考えています。パリ協定に向けて、政府としての方針をしっかりと固めていくことが大きな目的の一つでしょう。 原子力政策についてもあらゆる選択肢の一つとして議論の対象となると理解していますが、あくまでも「2050年の温室効果ガス80%削減」という極めて高い目標に向けてのエネルギー政策を、様々な観点から考えていくことになると理解しています。 海外の地政学的動向や技術革新など、不確実な要因があることを認めながらも、時間軸が長い分、さまざまな可能性を考えていくことができるのではないか、日本の今後のエネルギーの大きな方向性が議論できれば、とワクワクしています。

さて、このエネルギー情勢懇談会のメンバーは8人です。東大の五神総長、三井物産の飯島会長、日立製作所の中西会長、小松製作所の坂根相談役、アジア経済研究所の白石所長、アジア・パシフィック・イニシアティブの船橋理事長、そして女性が2人で、宇宙飛行士の山崎直子さんと私です。

委員名簿
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/001/pdf/001_003.pdf

このような委員会や懇談会では、事務局が議論のたたき台として、データや論点 の整理をしたものを提供します。今回のエネルギー情勢懇談会に関しても、参考資料として、「エネルギー選択の大きな流れ」がアップされています。

「主な情勢変化、今後その見極めが重要」として挙げられているのが、次の8つの観点です。

  1. 油価と再エネ価格の下落
  2. 蓄電池開発の本格化と現実
  3. 脱原発を宣言した国がある一方、多くの国が原子力を活用している状況
  4. 自由化と再エネ拡大、悪化する投資環境
  5. パリ協定、米国離脱もトレンド変わらず
  6. 拡大する世界のエネルギー・電力需要
  7. 新興企業の台頭、金融の存在感
  8. 高まる地政学リスク、求められる戦略

そのうえで、「パリ協定: 2050年の温室効果ガス削減について、先進国は極めて野心的な高い目標を共有」とし、各国の目標をいくつか紹介しています。

米国、カナダ、ドイツ、フランスの目標と並んで、日本についても「2050年に 2013年比80%削減」という目標が掲載されています。 日本の温暖化の長期目標をめぐっては、2008年、洞爺湖サミットを控えたタイミングで、福田総理のもと、首相官邸に「地球温暖化問題に関する懇談会」が設置され、議論を重ねました。 私も委員の一人でした。

企業の競争力への悪影響などを心配して、できるだけ低めの目標を設定しようという経済界代表の委員と、「温暖化を止めるために、あるべき削減目標をめざすべき」とする私たち市民派の委員とのバトルを思い出します。 最終的には、「日本は2050年までの長期目標として、現状から60~80%の削減を目指す」とする最終提言がまとまりました。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai05/05siryou1.pdf

その後、「2050年に80%減」という長期計画を閣議決定したのですが、正式な国の目標として国連に提出することができていません。経産省・環境省の意見の違いなど、政府内の調整ができていないためだそうです。

この点も、今回のエネルギー情勢懇談会での論点の1つになることと思います。ほかにも、省庁間で意見が違うため、先に進められない政策もあります。経産省と環境省のそれぞれの考え方や、その土台としているデータや見通しについて、よく教えてもらい、広く伝え、考えていきたいと思っています。

「2050年に温室効果ガス80%削減」を前提としたときの、日本のエネルギーのあり方について、その結論というよりも、それを考えるために、何を知り、何を考え、何を見ておく必要があるのか――しっかり学び、考え、発言していきたいと思います。