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2009年09月17日

第6回 Q&A

<質問>
原文が間違っていると思う場合も、原文の通り訳さなければならないのでしょうか。書かれていることが明らかに自分の「常識」と違う場合は、とても迷います。とくに、著者に確認できない場合はどうしたらよいでしょうか。

<回答>

訳した結果が自分の持っている常識と違ってしまう場合は、

1)原文が間違っている
2)訳が間違っている
3)背景、文化の違いから「常識」そのものが違う可能性がある
4)作者があえて「常識」とは違う指摘をしている

これらのケースが考えられます。原文が間違っている可能性ももちろんありますが、その前に、自分の解釈が間違っていないことを確認しましょう。

原文、及び解釈が間違っていないようであれば、翻訳者の仕事は、作者の主張を過不足なく丁寧に訳すことです。そこに翻訳者の判断をはさんでしまうと、作者の意図を十分に伝えられない危険性があります。

「常識」も文化や環境、背景が違えば変ります。また、技術が発展したり、時代が変ると、それまでの常識が通用しなくなることもあります。作者の意図を正確にくみ取りましょう。

このように、訳してみて「あれ? おかしいな?」 と思ったら、いろいろな角度から分析してみましょう。それでも納得できる説明がつかなければ、原文が間違いである可能性も残りますので、自分の解釈に原文や理由を添えて、仕事の場合はクライアントに申し送りをします。

第6回 パート2解説

パート2の解説です。こちらのURLからダウンロードしてください。

NS3-6kaisetsu.pdf

第5回 Q&A

<質問>
今回の課題では、「読者層を意識した訳文作り」がテーマとしてあったと思います。さまざまな読者層を想定した文体が書けるようなくふうとして、どんなコツがありますか? 30代独身女性向け、シルバー向け、などの文体を書き分けるには、どうすれば良いでしょうか?

<回答>
さまざまな文体で書く力をつけるには、日頃から、そのことを意識してたくさんの日本文に触れること、そして自分でも文章を書いてみることが効果的です。

具体的には、新聞・雑誌・小説・エッセイなど、様々なジャンルの文章をたくさん読みましょう。また、30代女性向け、シルバー向けなど、想定される読者に対して実際に出版されている本や雑誌を読んでみて、どのような文体や表現が好まれているかチェックしましょう。「これ」と思う言葉や表現を見つけたら、ノートに書きとめておくことも忘れずに。

その一方で、日記をつける、エッセイを書く、読んだ本の読後感を書く、など、文章を書く習慣をつけましょう。今はやりのブログをやるのも文章を書く機会を自然に増やすことになりますね。どのような人を対象に書いているのか、はっきりとイメージしながら書くと良い練習になります。その時、ノートに書きとめてあった言葉や表現を使ってみましょう。これと思う文体をまねて書いてみるのもおもしろいですよ。

このように、インプットとアウトプットを繰り返していけば、自分の中の蓄えが増えますし、さらに「いざ」というときに使いこなせるよう、練習をすることができます。

また、自分が書いたり訳したりした文章は、できれば時々人に読んでもらって感想を聞かせてもらうといいでしょう。あるいは、声に出して読んだものを録音して聞いてみると、自分でもある程度客観的に評価することができます。

豊富な表現力を身につけるには、時間と努力が必要です。がんばってください!

第5回 パート2 5つの訳文

次のファイルはパート2の5つの訳文です。PDFファイルになっていますので、ファイル名をクリックして表示させ、プリントアウトしたものをご用意下さい。

NS3-5yakubun.pdf


2009年09月11日

第4回 Q&A

<質問>
漢字とひらがなの比率について質問です。漢字は文章中にどれくらいであれば読みやすいのでしょうか? 対象とする読者層によって違うと思いますが、どうやって判断すればよいのでしょうか。

<回答>

まず、子ども向けの読み物でしたら、対象となる子どもの年齢に合わせて漢字を使っていくことになりますので、一般の読み物よりは漢字の割合は低くなりますね。それ以外の大人を対象にした翻訳の場合、ビジネス翻訳でしたら、とくに依頼主からの要望がない限り、文中の漢字の比率を変える必要はないでしょう。

一般に表記に迷う場合は、共同通信社の『記者ハンドブック』を参考にする翻訳者も多いようです。「メール講座Next Stage1」でも、表記に関する参考資料をいくつかご紹介していますので、参考になさってください。

出版翻訳の場合は、想定している読者層にどのような印象を与えたいかによって、漢字の使い方を意識して変えることもあります。漢字の多い文章はかたい感じがしますし、ひらがなの多い文章はやわらかい感じを与えるからです。ですから、編集者と相談して決めていくことになると思います。

この講座では、課題の内容と自分が与えたい印象をもとに、どういう表現がよいか自分で考えてみましょう。漢字とひらがなの比率も含め、いろいろと試してみて、自分の腑に落ちる表現を探してみてください。