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2009年08月07日

第9回 Q&A

<質問>
どうしてもなりたい夢や目標があるのに意志が行動につながらないのはどうしてでしょうか?

<回答>
強い意志があってもなかなか行動に移すことができない――同じような悩みを抱えている方はたくさんいると思いますが、それは「仕組みがない」ことが原因のひとつではないでしょうか。

毎日の暮らしには、仕事や家事など「やるべきこと」がたくさんあります。その中で「夢や目標」を達成しようとしても、「時間がない」「なにから手を付ければよいのかわからない」ということも多いでしょう。「強い意志」があれば、熱意で少しは進めることができるかもしれませんが、他の事が忙しくなれば後回しになってしまって、結局現実に流されてしまいがちです。強い意志だけで事を進めるのは難しいですね。そのために、「いつ、何を、どのようにやるのか」という「仕組み」を作ることがとても大切になってきます。

まず初めの一歩として、その「夢や目標」を達成するために、具体的に「いつまでに何をどうしたいのか」を書き出してみましょう。進捗をはかれるように、最終目標にいたるまでの中間目標もいくつかおいてみます。そしてそのために毎日(あるいは一週間単位でも)どれだけの時間が確保できるかを考えます。

例えば、1日1時間使えるのであれば、それをあらかじめスケジュールに組み込んでしまいます。自分とアポイントメントをとるのです。そのときに具体的に「何をやるのか」まで、予定に組み込みます。その進行状況を定期的に振り返り、次に進むための検討資料とするのです。

このような夢を達成するための仕組みづくりについて、詳しくは「思えばそうなる」(新潮社)などの著書にまとめていますので、よろしければご参考にしてくださいね。

2009年08月06日

第10回 日本語リライト演習

こちらのファイルには、日本語リライト演習の課題文と、リライト文が2点入っています。ダウンロードして、それぞれ自分が作成したリライト文とくらべてみましょう。どの表現が自分の「腑」に落ちるか、感じながら読みくらべてみてください。

NS2Rewriting

第10回 質問(6)

<質問6>一番最後の "I don't think so."が2通りに取れると思います。
"I don't think he would advise me to do the same thing."
"I don't think I would do the same thing."
解説は前者の解釈でしたが、不確かな時はどういう訳にしたらいいでしょうか。

<回答>
"I don't think so."の前の文章をよく注意して読んでみましょう。
"What would his advice be for mo today; to do the same thing?"

この文章は、まず、「父が私にアドバイスしてくれるとしたら何だろうか?」と問いかけた後、自分から1つの答えを提示して、「アドバイスは、"to do the same thing"だろうか?」と重ねて問いかけています。つまり、提示した答えが正解か否か、という判断を求めていることになります。それに対して「そうではないと思う」と言っているのですから、「提示された答えは否」、つまり、「アドバイスは、『同じことをしろ』ではない」と解釈するのが、最も質問の意図に沿っていると思います。

「私はそうするつもりはない」と答えるのでしたら、その前の質問は少し違ったものになるでしょう。あるいは、「もし(アドバイスが)そうであったとしても」などのように、いったん質問に答えるような言葉が入らないと、つながりが悪いですね。この部分に関しては、直前の文章の意味をよく考えることが大切だと思います。

「不確かな時はどういう訳にしたらいいか」について、一般的な解決法は、残念ながらありません。単語の意味がわからない、構文がとれていない、文脈が理解できていない、背景知識がない……など、不確かになる原因はたくさんありますので、解決法もいろいろです。場合によっては、筆者に問い合わせることもあります。

正確な判断のための「カン」を養うには、日頃から英語の勉強を怠らず、多くの日本文、英文に親しみ、知識を増やすなどの努力を積み重ねることが大切です。やっただけ必ず進みますから、続けていきましょう。

第10回 質問(5)

<質問5>(パラグラフ8)Outsourcing is an ongoing issue today.という文章で、「ongoing issue」を「進行中の論点」と考え、「今話題になっている」と訳したのですが、エダヒロ訳と違っていました。ここは、どう解釈したら良いのでしょうか。

<回答>
ここは、微妙に訳が分かれるところですね。1.「現在、アウトソーシングは継続的に前進している問題である」とも解釈できますし、2.「アウトソーシングはずっと議論が続いている問題である」とも解釈できます。

このあと、「人材開発等は社外の組織に委託されるようになり、役に立たない人材はどんどん交替させられる時代になってきた。世の中は変わった」という話の流れになっています。「アウトソーシングが、ずっと議論されている」という解釈でも意味はつながりますが(議論されながら、実際に進んでいるとも考えられます)、「現実に進行している」といったほうが、すぐあとに続く文章とのつながりが良いと思われませんか? 実際に2つの訳文をくらべてみましょう。

1. 今日、アウトソーシング(外部委託)が進んでいます。人材開発や社員教育・研修といった業務は、社外の組織が提供するようになっているのです。顧客本位・顧客志向でない人材は、取って替わられてしまいます。

2. 今日、アウトソーシング(外部委託)が話題になっています。人材開発や社員教育・研修といった業務は、社外の組織が提供するようになっているのです。顧客本位・顧客志向でない人材は、取って替わられてしまいます。

翻訳していると、常に複数の解釈の選択に迫られます。力がつけばそれだけ考えつく選択肢が増えるので、迷うことも多くなりますが、そのような時、文章の流れも考えてみましょう。わかりやすい訳文をめざしてがんばってください!

第10回 質問(4)

<質問4>パラグラフ7)"Independent or full-time employees"について質問です。"independent employees"で「フリーランス」の意味になるのでしょうか? 

<回答>
そもそも、これは外国企業の話で、用語や定義をそのまま日本語の役職や雇用形態に当てはめるのには無理があるため、翻訳には骨が折れますね。一般的な言葉の中で、意味の近いもの(しかも講演ですから、聴衆にわかりやすい言葉)を訳語に選択していくことになります。

外国企業の中にはtraditional employee, independent employee, independent contactorと自社の労働者を区分しているところもあるようですね。

実際にアメリカのビジネス界で働いているアメリカ人の方に伺ったところ、一般的なビジネス社会の雇用契約では、フルタイムで勤務する労働者を示す「employee」か、契約条件次第で、さまざまな働き方が考えられる「contractor」かに分かれることが多いのですが、independent employeeという言葉は、independent contactorの同義語と認識されることが多いそうです。

このプロジェクト単位で雇われることが多い専門職の人々については、「独立業務請負人」や「自主裁量勤務の従業員」など、さまざまな日本語を当てはめることができます。ただ、このような形態での働き方については、まだ日本で一般化していないことも考え合わせなければなりません。また、講演の話し言葉の中で、耳になじんだ訳語を選択していくことも大切です。このような理由から、エダヒロ訳では「フリーランス」という表現を選びました。

将来、independent employeeという働き方が日本でも一般的になり、ぴったりの日本語がひろく行き渡るかもしれません。そうなれば、別の選択も検討しなければならないでしょう。言葉は時代とともに変化していきますので、その時どきで、一番良いと思われる選択をしていくという姿勢が大切だと思います。

第10回 質問(3)

<質問3>(パラグラフ6)"If today's leaders don't understand that they are working for the people who report to them, they do not understand the change process."の部分ですが、解説を読んでもよくわかりませんでした。they, whoは具体的に何をさしているのですか?

<回答>
If today's leaders don't understand that they are working for the people who report to them, they do not understand the change process.

この文章では、they are working のtheyも、report to themのthemも、they do not understandのtheyも、Ifで始まる節の主語today's leaders をさしています。

whoは、その直前のthe people を先行詞とする関係代名詞ですから、the peopleをさします。report to 〜は成句で、「〜に直属している」という意味ですから、the people who report to themは、「思想的リーダーに直属している人たち(=思想的リーダーの部下)」となります。

構文をこのように理解した上で、エダヒロ訳は「もし今日のリーダーたちが、『自分は部下のために働いているのだ』という意識を持っていないのなら、変革のプロセスを理解できないでしょう」としました。

英文を読んでも意味がしっくりこないときには、文法の知識を総動員して構文を理解することが大切です。学生時代に勉強した文法も、一度「翻訳のトレーニング」の視点を持って、おさらいしてみてはいかがでしょうか。思いがけない気づきが得られることもありますよ。

第10回 質問(2)

<質問2>アウトソーシングなどのように、日本語でカタカナで使われることの多い英語を訳す時には、どういう点に気をつけたらよいでしょうか。

<回答>
カタカナについては、その言葉がまだ広く一般に浸透していない可能性がある場合は、「アウトソーシング(外部委託)」のように日本語を補うか説明を加えるなどして、読み手の理解の流れを妨げないようにすることもあります。対象となる読者に合わせた判断が必要になりますので、実際の仕事では編集者との相談になります。

その言葉がどれぐらい浸透しているか判断がつかない場合は、インターネットなどでどのような場面で使われているか調べてみてください。

なお、新聞の投書欄、家庭欄など一般向けの紙面で、解説なしで使用されているかどうかも判断材料のひとつとなります。

第10回 質問(1)

<質問1>Proactive, Reactiveなど、辞書で調べてみましたが、しっくりくる日本語が見つかりません。どうしたらよいでしょうか?

<回答>
自然な日本語でわかりやすく伝えるためには、時には辞書にはない表現を使う必要があります。辞書の訳語にしっくりこなければ、別の表現で表現できないかを考えてみましょう。そのためには原語の意味を正確にとらえなければなりません。英和辞典だけではなく、英英辞典も使って細かなニュアンスや意味合いを必ず確認しましょう。

どのような意味かがわかったら、今度は自分の言葉で同じ内容を表現できないか考えてみましょう。ぴったりの表現がなければ、似たような分野の日本語文献を調べてみると、近い表現がみつかるかもしれません。その上で、さらに読みやすくわかりやすいかどうかを検討します。

時にはある表現が、その分野での「定訳」となっている場合もあります。可能な限りインターネットなどで確認してください。「メール講座Next Stage2」の内容であれば「社員」「変化」「人材育成」などのキーワードを入れると、同分野の資料が多数見つかりますし、図書館で関連の本を読んでみるのもよいでしょう。

語彙や表現は普段からアンテナを張って「これは」と思う表現に出会ったらメモをとっておいて、自分でも使ってみましょう。広辞苑などの国語辞典をまめにひいたり、表現の幅を広げる目的で本や新聞を読むのもいいですね。この講座では、同じ英文について他の方の訳文を読むことができますので、ぜひ活用してください。

第10回 課題文とエダヒロ訳

パート1〜パート3までの課題文とエダヒロ訳のファイルです。それぞれについて、こちらからご利用下さい。

Next Stage2 課題文
NS2English


Next Stage2 エダヒロ訳
NS2Edahiro