エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2017年06月26日

モノでなくサービスを売る (2017年6月26日掲載)

 

 資源のひっ迫や廃棄物・CO2の排出削減の必要性を背景に、世界中でサーキュラー ・エコノミー(循環経済)への取り組みが加速中です。

 欧州連合は「サーキュラーエコノミー・パッケージ」を出し、生産者責任の見直しや廃棄物法令の改正を進めています。オランダやフィンランドなど、循環経済の国家ビジョンやロードマップを発表している国もあります。中国も国家アクションプランを策定し、サーキュラー・エコノミー推進法の取り組みを進めるなど、アジアでの先進的な存在となっています。

 このように各国が熱心なのは、単なる環境政策ではなく、産業・雇用政策でもあるためです。総合コンサルティング企業のアクセンチュアは、サーキュラー・エコノミーへの転換は2030年までに4兆5000億ドルもの経済価値を生むとしています。

 サーキュラー・エコノミーには様々なアプローチがあり、その1つは「製品ではなくサービスを売る」というビジネスモデルです。カーシェアリングは、車を売るのではなく、車が提供する「移動性」を売っています。

 このサービスを売るというビジネスモデルを15年前から採用しているガス会社があります。日本海ガス株式会社です。機器販売の一環として販売するガスファンヒーターについて、01年9月、「お客様がほしいのは、ガスファンヒーターではなくて冬の間の暖かさだ」と冬季のレンタルサービスを始めました。料金は、1シーズン当たり8~10畳用で3,000円、 10~12畳用で4,500円。大変手頃な料金です。

 ユーザーは、初期投資も手入れも冬以外の保管場所もいりません。故障したら機器を無償で取り換えてもらえるのも魅力で、リピート率も高いそうです。専門家の手入れで機器の寿命も伸び、資源の有効活用にもつながっています。初年度に272台から始まったサービスは、現在ではその10倍の利用があります。

 新田八郎社長が15年間続けて分かったメリットを三つ教えてくれました。一つ目は機器のメンテナンス業務でシニア世代の雇用を生み出せたこと。二つ目は機器を設置・回収する顧客訪問がリフォーム受注など新たな収益にもつながること。三つ目は全社員で設置・回収を行うようになったため、間接部門の社員も顧客の生の声を聞く良い機会となっていることです。

 お客様にも環境にも自社のビジネスにも良いという、ウィン-ウィン-ウィンの好事例です。

 

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