エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2016年06月23日

「挑戦し続ける島」海士町(2016年6月20日掲載)

 

 独創力あふれるまちづくりで全国に知られる島根県隠岐郡海士町(あまちょう)に、地方創生総合戦略や指標づくり、システム思考や「学習する組織」の研修などで、ほぼ隔月で通っています。

 海士町では、1980年からの30年で人口が3分の2ほどに減少、「このままでは無人島になってしまう」との危機感から、島の自立に向けた多くの挑戦が始まりました。

 その結果が、年4万食を売り上げる「島じゃ常識さざえカレー」、養殖事業化により基幹産業の1つに育った「いわがき春香」、地元建設会社の異業種参入により成功した「隠岐牛」など、地域資源を活用した特産品のブランド化です(7月末には銀座に隠岐牛のお店がオープンします!)。

 高校も全学年が1クラスとなり、「数年後には廃校」との瀬戸際に。しかし「離島だからできない」ではなく、「離島だからこそできる」という逆転の発想で、教育の魅力化を目指す「島前高校魅力化プロジェクト」を2008年に立ち上げました。
 島外の学生を積極的に呼び込む「島留学」 推進の結果、島外からの入学者も島内進学率も上がり、全学年2クラス化というV字回復!

 このような多くの挑戦が島外から数百人のU・Iターンを引き付け、人口減少に歯止めがかかりました。

 順調に見える海士町から私に「これまで町を引っ張ってきた町のリーダーたちがこの数年で世代交代を迎える。次世代育成に力を貸してほしい」と声がかかりました。

 海士町は地方創生総合戦略のプロセスを通して、次世代のリーダー育成や仲間づくりを進めることにしました。
「20~40歳代で、戦略策定だけでなく自ら成し遂げたいという強い思いをもつ者」という呼び掛けに応えた役場職員と住民20人からなる「明日の海士をつくる会」が13回の会議を重ね、私は外部アドバイザーとしてプロセス設計・運営を支援しました。

 プロセスの特徴の1つは、「バックキャスティング」手法を用いて、2050年のありたい海士町の姿を描くところから始めたこと。
 もう1つは、システム思考を活用して、ありたい未来の実現に影響を与える要因とそのつながりから、好循環を生み出す構造を考えたこと。

 このプロセスを通じて、次世代の中で、まちの未来や課題がワガコトとなり、覚悟と信頼が醸成できたことが一番の成果かもしれません。

 今後の海士町の展開に「乞うご期待!」です。

 

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