エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2015年10月08日

限界集落でのゼミ合宿(2015年10月5月掲載)

 

 昨秋から東京都市大学環境学部で教えています。「社会を変えながら、社会を変えられる人を育てる」をスローガンとする研究室には18人のゼミ生がいます。
 大学に閉じこもるのではなく、社会の現場を見、いろいろな方々の話を聞いて、自分のアタマで考えることが、生きる力・自分や組織・社会を変える力を育むと思い、「飛び出せ、エダヒロ研究室」をスローガンに積極的に学外に出かけています。

 9月初旬に熊本県の山奥にある水増(みずまさり)集落に2泊3日でおじゃましました。10世帯18人、平均年齢72歳。典型的な限界集落です。
 

 山の斜面にある村の共有地の維持が高齢化によって難しくなってきたこと、福島原発事故があったことから、共有地を太陽光発電用に使ってもらうことにしたそうです。
 手を挙げた10数社の事業者の中から、「ただ地代でどれだけ儲かるか」でなく、「地代に加え、売電収入の5%を村のために拠出するから、その資金を活用して村づくりをしよう」と提案した地元のテイク・エナジー社と組むことに決定。
 ソーラーパークは去年春に完成して発電を開始、テイク・エナジー社とともに「子どもたちが帰ってくる村づくり」の取り組みが始まっています。

 この取り組みを取材させてもらったご縁から、今回学生を連れて行くことに。五感を使ってさまざまな体験をし、都会の学生という立場で「集落の未来に向けての提案」を作るのがゼミ課題です。
 ほとんどが都会生まれ・都会育ちの学生たちは、「言われてはいたけど、コンビニもお店も......本当にない!」「どこを見ても緑しか見えない!」とびっくり。
 事前に「歴史文化」「自然環境」「暮らし」「今後の展開」の4班に分かれて事前準備してきたことを基に、集落の皆さんから聞き取りをしたり、畑を耕して野菜の種をまいたり、希少な在来種の大豆でシフォンケーキを作ったり、夜は集落の方々との懇親会で盛り上がったりといろいろな体験をさせてもらいました。

 最終日は明け方3時まで準備した「提案発表会」。集落の皆さんの前で、グループごとに提案を発表し、意見交換をします。キラキラと目を輝かせる学生たちの姿が印象的でした。
「歴史ツアーも農業ツアーも自然ツアーもできる」「地元の料理がおいしい!レシピ本を作ろう」「あの大豆をゆるキャラに」「農業を学ぶ学生向けの学生寮はどうか」「大豆のソフトクリームやプリンを開発しませんか」

 地元にとっては珍しくない自然の豊かさや緑がいかに素晴らしいかが、学生たちの口から繰り返し語られると、集落の人たちは、「東京では味わえないことが、この水増にはいっぱいあるんだな」「自然の豊かさに、もっと自分たちも目を向けないと」「これまでは、ただ田舎と思っていたけど、胸を張って『水増』と言えるように頑張りたい」。

 ゼミ合宿から3週間後、学生たちがまいた野菜の種が芽を出し、すくすくと育っている畑の写真が届きました。
 今回の体験が学生たちにどんな種をまいてくれたのか、どんな芽が出て育っていくのか、こちらもとても楽しみです。

 

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