エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2014年01月07日

バックキャスティング!(2014年1月1日掲載)

 

 明けましておめでとうございます。新しい一年が始まりましたね。今年はどんな一年になるのでしょうね? どんな一年にしていきたいですか?

 一年の計は元旦にありといいますが、新年の初めに、慌ただしいいつものスケジュールが始まる前に、今年のこと、今後のことをじっくりと考えられる時間はとても貴重だなあと思います。

 目標やビジョンを描くには「フォアキャスティング」と「バックキャスティング」の2つのやり方があります。

 フォアキャスティングとは、現状立脚型のビジョンや目標の設定方法です。現時点からスタートするやり方で、「今これができる」「今これはできない」「今この技術がある」「今このくらいのお金が使える」など、現在のさまざまな条件を考え合わせて、「では3年後にはこれくらい行けるだろう」と目標を設定します。

 例えば、企業が二酸化炭素の削減目標を立てる際、「今こういう技術がある」「これぐらいならお金を回せる」などいろいろと考えて、「では、3年後には○%削減ぐらいはできるかだろうと目標を立てるとしたら、それはフォアキャスティングです。

 それに対して、バックキャスティングでは、現状や制約条件はすべて脇に置き、「そのときにどういう姿になっていたいか?」を考えるのです。

 現状の制約をいったん外し、ありたい姿を自由に描くことで初めて、過去や現在の延長線上ではない、ブレークスルー的なビジョンが生まれます。

 企業でも、中期計画など2、3年後の目標を立てる際はフォアキャスティングでよいですが、20年後、30年後の会社を考える時にもフォアキャスティングでは、あまり遠くへ行けませんし、現在から大きく異なる姿には進化できないでしょう。

 10年ほど前から、新年と夏の終わりに、じっくりと自分の"一生の計"と"一年の計"を考える1泊2日のワークショップを開催してきました。200人近い参加者のマイ・ビジョンづくりのお手伝いをしてきた経験からも、まず「ありたい姿」を描き、そこから現状を振り返って間を埋めていくバックキャスティングは、個人の人生にもとても役に立つアプローチだと思います。

 余談ですが、私は90年代にスウェーデンの環境NGOからバックキャスティングを学び、日本に最初に"輸入"した一人です。今では政府も企業も使うようになりましたね!

登山をするとき、「歩いていたらこんなところに登っちゃいました!」ということはあまりないでしょう。ふつう、「あそこに登ろう」と決めてから登りますよね?

人生もキャリアも同じだと思うのです。日々やるべきことを一生懸命やるのは大事なことですが、その結果、「行きたかった山頂」にたどりつけるかどうかは別問題です。

自分はどこに行きたいのか?「これまでの歩み」や「日々の一生懸命」の延長線上ではない、思い切ったビジョンを描く――年の初めにぜひどうぞ!

 

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