エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2013年06月04日

将来の温暖化に備える(2013年6月3日掲載)

 
安倍政権になってからエネルギー基本計画など本質的なエネルギーの方向性に関する議論が聞こえてこなくなり、温暖化対策も心許ない限りです。 しかし、日本が温暖化対策に足踏みをしている間、温暖化の進行が待っていてくれるわけではありません。 気象庁が3月に最新の地球温暖化予測情報を発表しました。日本全国と7つの地域に分けた予測を見ることができますので、ぜひご自分の地域の予測を見てみて下さい。 要約をかいつまんで紹介しましょう。 21 世紀末(2076~2095 年を想定)には 20 世紀末(1980~1999年を想定)と比較して、日本付近で以下のような気候変化が予測される。 ◆年平均気温は各地域で3℃程度の上昇がみられるが、北日本の上昇が最も大きい。  季節別では、全ての地域で冬の上昇が最も大きく、沖縄・奄美を除いて全国的に3℃以上の上昇。北日本や東日本の一部では 3.5℃を超える上昇がみられる。 ◆年降水量は全国で増加。冬から春にかけては、太平洋側で降水量が増加。   ◆多くの地域で大雨や短時間強雨の発生が増える。無降水日数も多くの地域で増加する。 ◆突風や雷雨の発生しやすさを示す大気環境場の指数(エナジー・ヘリシティ・インデックス、EHI2)は、いずれの地域でも不安定の方向に変化する。(以上) 二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を減らす「緩和策」を進めるとともに、緩和策をとったとしても進行してしまう(これまでの排出による)温暖化に対応するための「適応策」も同時に進めなくてはなりません。 これまでは「過去の延長線上に未来があり、過去の気候から未来の気候はわかる」はずでしたが、今後はそうはいかなくなるからです。 たとえば、個人が家を建てたりどこに住むかを考える際にも、「この地域の30年の気候や温度はどうなっている?」と考える必要が出てきました。 行政や地域が町づくりに取り組む際にも、数十年後にも機能すべきインフラや建築物の場合は特に、将来予測を考慮しておかないと、のちに使えなくなる可能性も出てくるでしょう。 企業にとってはどうでしょうか? 2つの観点から考え直すべきことがあると考えています。 1つは、現在提供している商品・サービス、顧客などを、「30年後の姿」から見直すことです。 たとえば、工務店だったら「長く住み続けられる家を建てるのなら、現在の気温や天候だけではなく、将来予測も考えに入れた家づくりが必要」になってきます。 もう1つの観点は、事業自体の継続への影響です。東日本大震災を受けて事業継続計画(BCP)を策定・運用する企業も増えてきました。 しかし、多くの企業は被害をもたらす原因として地震や感染症など、突発的な脅威のみを考えているようです。 「ゆでがえる」の話のように、温暖化のようなゆっくりとした変化は脅威とは感じづらいのですが、それによって市場のニーズも社会の要請も変わっていくとしたら、やはり企業の事業継続計画として考える必要があるのではないでしょうか?
 

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