エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2012年07月23日

エネルギーと世代間倫理 (2012年7月4日掲載)

 

 エネルギーの選択は、もちろん経済的な影響を考えておこなう必要がありますが、野菜を買うのに値段だけでなく、産地や安全性、栄養面などもあわせて考えるのと同様、経済への影響以外にも、考えるべき大事なことがいくつもあると思っています。
 
 たとえば、どのエネルギーを選ぶかによって、「未来世代に何を残すか」も変わってきます。

 前にもご紹介したように、高校生~20代の若者とエネルギーを考える「エネ若の集い」でも、「未来の人たちのことも考えて選んでほしい」という声がたくさんありました。

 特に、「放射性廃棄物を未来世代に残す」場合など、その被害者になるかもしれない未来世代からの合意をとりつけることはできません。そのとき、未来への責任を倫理的な原理として導入し、「未来の他者の生存条件を保証しなければならない」と考える「世代間倫理」が必要となってきます。

 基本問題委員会では、エネルギーの選択肢の経済影響分析は行ってきましたが、倫理面からの議論は議題として取り上げていません(何度も提案したのですが......)。

 委員会資料として、「原発が残すもの」「石炭火力などが残すもの」「自然エネルギーが残すもの」を時間軸を入れて整理してみました。

 各選択肢はいろいろと未来世代に残すものがあります。しかし、現在は未来の時間軸でいえば極めて短期的な範囲(2030年まで)の議論に集中しています。

 当たり前ですが、日本社会は2030年に終わるわけではありません。現在の私たちの選択はその後につづく世代にも影響を与えることを考えに入れた上で、今後の国民的議論が展開されることを願っています。

 

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