エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2007年08月31日

SPM

 

 IPCCがIntergovernmental Panel on Climate Changeの頭文字で「気候変動に関する政府間パネル」であることはご存じの方も多いでしょう。最初のinterは「~間」という意味で、たとえばinternational はnation(国)の間、つまり「国際的な」の意味。intercontinentalはcontinent(大陸)の間、つまり「大陸間」となります。

 世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が1988年に設立した国連の組織で、その任務は、「各国の政府から推薦された科学者の参加のもと、地球温暖化に関する科学的・技術的・社会経済的な評価を行い、得られた知見を、政策決定者をはじめ広く一般に利用してもらうこと」です。

 この組織が科学者の集まりだと知っていても、その重要な任務のひとつが、「得られた知見を、政策決定者をはじめ広く一般に利用してもらうこと」であることは初めて知った、という人も多いことでしょう。

 今年に入って出されたIPCCの第4次評価報告書にも、この任務に基づいて、SPMという要約が付いています。SPMはSummery for Policy Makersの略語で、summeryは「要約」、policy makersは文字通り「政策を作る人々」、つまり政策決定者向け要約です。

 IPCCには3つの作業部会があり、第1作業部会は「科学的根拠」、気候システムおよび気候変化についての評価を行います。第2作業部会は「影響、適応、脆弱性」で、生態系、社会・経済などの各分野における影響および適応策についての評価を担当しており、第3作業部会は気候変化に対する「緩和策」についての評価を行います。

 それぞれの作業部会の評価報告書にSPMがついています。

 IPCCの文書を読むときのひとつの鍵は、可能性や確信度、不確実性の表現です。例えば、科学的知見を扱う第1作業部会では、「ほぼ確実である」(virtually certain・確率99%以上)、「可能性が極めて高い」(extremely likely・確率95%以上)、「可能性が非常に高い」(very likely・確率90%以上)、可能性が高い(likely・確率66%以上)、「どちらかといえば」(more likely than not・確率50%以上)と可能性に関する表現と基準を定め、ある結果が将来起こる、もしくは起きつつある場合に対する確率を評価しています。

 政策決定者に科学者の知見や議論を伝えるために書かれたSPMは、簡潔にまとめられており、私たちもぜひ読むべき文書です。

 参加している研究者は「IPCCの本文にもぜひ目を通してほしい。少なくともTSだけでも読んでほしい」と言います。TSはTechnical Summery(テクニカル・サマリー)です。SPMが政府の承認を受けなくてはならないのに対し、本文やテクニカル・サマリーには科学者の書いた言葉そのままが載っています。ぜひあわせて読みたいものです。

 

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