エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2007年08月29日

business as usual

 

 温暖化対策やビジネス戦略などで、よく「BAUシナリオ」とか「BAUケース」と見聞きしますね。BAUとは、business as usualの頭文字を取ったもので、そのまま「ビーエーユー」と読みます。

 このbusinessはいわゆる「ビジネス」「商売」というより、「やっていること」ぐらいの感じでしょうか。as usualは「いつもどおり」「ふだんどおり」「相変わらず」「従来どおり」です。つまり、「何も手を打たずに従来どおりの状況」ということです。

 温暖化対策でも何でも、私たちが何らかの活動を行うのは、「変化」をつくり出すためです。「現状のまま」でよかったら、何も取り組む必要はありませんものね!

 望ましい変化を創り出すために、戦略を立て、行動計画をつくり、実行していきます。取り組みがいったい効果を上げているのか、どのくらいの効果なのかがわからないと、次の行動計画につながりません。そのときの効果は「取り組みを行った場合」と「取り組みを行わなかった場合」の差となります。この「取り組みをしなかった場合」どうなるのか、を簡潔に表す言葉がいくつかあります。

 そのひとつが、このbusiness as usualなのです。「ケース(場合)」や「シナリオ」をつけて使うことがよくあります。BAUケースといえば、「対策を実施しなかった場合、どうなるか」ということなのですね。

 同じような意味で、「リファレンス・ケース/シナリオ」という表現もあります。referenceとは「参照」「参考文献」などの意味で使われる単語で、「対策を取った場合と比較するための参照」(つまり対策を取らなかった場合)という意味です。「基準ケース」と訳す場合もあります。

 もうひとつ、「ベースラインケース」という言い方もあります。baselineは文字どおり、「基準となる線」です。

 ベースラインケースという言い方は、温暖化対策でよく出てきます。例えば、共同実施(JI)やクリーン開発メカニズム(CDM)などのプロジェクトによる温暖化ガス排出量の削減量を測定するには、仮にそのプロジェクトがなかった場合の温暖化ガスの排出量を想定しておく必要があります。これを「ベースライン」と呼ぶのです。

 「ベースラインイヤー」(baseline year)もあります。これは「基準年」です。例えば気候変動枠組条約では、CO2、メタン、亜酸化窒素(N2O)については、1990年が基準年で、代替フロンなどの3ガス(HFC、PFC、SF6)は1995年が基準年とされています。

 BAUもリファレンスもベースラインも、「対策がなかったらどうなるか?」という想定です。ですから、その数字は将来の見通しや条件設定によって大きく変わってきます。従って、温暖化対策などでは、どのように設定するかの国際ルールが必要となります。

 

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