エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2007年08月29日

global dimming

 

 地表に届く太陽光がこの50年間、10年ごとに2~3%ずつ減っていることをご存じですか?

 この現象はglobal dimmingと呼ばれます。globalは「地球全体の」、dimmingは動詞dimの動名詞形で、「薄暗くなる」という意味で、「地球にかすみがかかって薄暗くなる」現象を指します。まだ日本語の定訳がなく、「地球薄暮化」「地球暗黒化」「グローバル・ディミング」などと呼ばれています。

 地表に届く太陽光が減っているのは石炭や石油、木材などの燃焼で排出される二酸化硫黄やススなどの大気汚染物質が原因と考えられます。

 大気中に浮遊する微小な液体・固体の粒子は、エアロゾル(aerosol)と呼ばれ、人々の健康をむしばむだけでなく、雲の生成を促進し、太陽光を反射します。太陽から地球に届く光の量は変わっていませんが、人間が排出した大気汚染物質によって、地表に届く太陽光が減少しているのです。北半球の中緯度地帯で特に減少しているようです。

 グローバル・ディミングは植物の光合成に影響を与えて収穫量を減らすほか、天候パターンにも大きな影響を与えます。1970~80年代サハラ以南地域で、日照りが続いて深刻な飢饉が発生した原因も、欧州や北米での石炭や石油の燃焼による汚染物質が降雨パターンを変えたためだと考える研究者もいます。

 また、グローバル・ディミングは、太陽光を反射することで地球を冷却し、地球温暖化を抑えていると考えられるようになってきました。

 石炭や石油を燃やすと、CO2が排出され、地球温暖化を引き起こします。同時に、ススや二酸化硫黄などの汚染物質も排出され、グローバル・ディミングをもたらし、地球を冷却しているのです。

 ストーブに薪をどんどんくべても室内温度はあまり変わっていないので安心していたら、実はカーテンの向こうで強力なクーラーががんがん働いていた、という状況のようです。

 近年、健康被害や酸性雨を防ぐため、“冷却汚染物質”である二酸化硫黄などの排出量は大きく減ってきました。一方、“温暖化汚染物質”のCO2排出量は増加の一途です。“温暖化汚染物質”であるCO2の排出を止めることなく、 “冷却汚染物質”だけを減らしていくと、2100年には、現在の最大予測である5.8℃どころか10℃も気温が上昇する可能性があるともいわれています。

 健康被害や日照・降雨パターンの変化を防ぐためにも、グローバル・ディミングはなくしていく必要がありますが、同時に温暖化汚染物質も無くしていかないと、あっという間に予想もしない範囲にまで温暖化が進んでしまう恐れがあります。

 良いニュースは、「温暖化汚染物質も冷却汚染物質も、石炭や石油の燃焼をやめれば出なくなる」ことです。代替エネルギー技術はすでにあるのですから、あとは切り替えをどれだけ加速できるかにかかっています。

 

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