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【対談】「成長を支える環境力」

「富士通フォーラム2013 環境特別セミナー対談」(2013.05.17)
2013年06月17日
企業主催
対談
 
ICT企業が、地球環境の現状をみつめ、企業としてのあるべき姿を追求するとどうなるのか。富士通フォーラム2013において、ICTの力、そして社会とともにある経営、など様々な視点から、幸せ経済社会研究所 所長の枝廣 淳子と、環境本部 本部長の竹野 実氏が対談を行いました。 ■人間の可能性を高め、発展させる大きな力 枝廣: 「ICTの力」と言うと、なんとなくICTってすごそう、色々なことができそう、というイメージをお持ちになる方が多いと思いますが、実際、「ICTの力」とは何でしょうか? 竹野氏: 人間の技術により文明が進化してきたわけですが、ICTは、その進化をさらに加速させる道具ではないでしょうか。最近では、パソコン、携帯電話、スマートフォンのように、人と人との繋がりをより多様な形に進化させました。人間の可能性を高め、発展させるものがICTの力だと考えています。 枝廣: 人間の可能性をさらに高めてくれるICTは、最終的に人間の幸せに繋がるためのものだと思いますが、具体的にICTが社会の中で役に立っている事例をご紹介下さい。 竹野氏: 例えば、スーパーコンピューターを使って心臓や車の衝突実験のシミュレーションを行っています。人によって異なる心臓の動きが手に取るように見えるようになることは、これまで出来なかったことですので、全く新しい力がICTによってもたらされたと言えます。また、実際の自動車を破壊してしまう実験をシミュレーションに置き換えることで、時間や人間のリソース、さらに、資源やエネルギーなどが不要になり環境に優しい、という面もあります。 ■ICTの拡大による環境負荷増大の危険性?! 枝廣: ICTには多くの可能性があると思いますが、私は光があれば影もあると感じています。現在、ICTは国内の消費電力の約5%を占めていますが、2025年にはICTの消費電力は今の5倍になり、全国の消費電力の約20%になるそうです。環境に貢献する力がある一方で、ICTが広がることにより環境負荷が増えてしまう、という点を心配しています。 竹野氏: 確かに、ICTは現在多くのエネルギーを使っていますが、さらに進化を遂げるとICT機器による電力使用量は減り、さらには自分で電力を生み出せるようになるかもしれません。例えば「エネルギーハーベスティング」という、光、熱、電波、振動、といった身の周りにある小さなエネルギーを集めて使えるようにする、という技術を開発していますが、このような動きは今後も加速すると考えています。 ■社会との繋がりが、新たな力を生み出すチャンス 枝廣: 現在、流通している情報に対して、実際人々が認知しているのは全体の0.004%という数字があります。99%以上の見られてもいないし使われてもいない情報のためにICTが使われ電力使用量が増えるのは間違っているのではないでしょうか。社会の役に立つICTと社会の役に立たないICTの峻別が必要な時代になっていると思いますが、いかがでしょうか。 竹野氏: ICTの力が社会の役に立つ、という思いで提供している私たちは、ついつい新しい技術開発に力を入れてしまいがちです。しかし今は、それだけでなく、実際にICTを利用頂いている方々の声を聞く必要があると思っています。市場を経由するのではなく、現場に赴き、現場の声に耳を傾ける。そうすることで、本当に役に立っているのかそうでないのか、真実の声が聞こえると思います。 枝廣: 欧米では、企業の環境ビジョンや目標、KPIなどを決めるときに、初期段階から社会との共創、対話のプロセスを入れ、社会の声を聞く風土がありますが、日本では、まだまだ少ないと感じます。富士通もこれまではそういう傾向が強かったように思いますが、実際に、どのように社会との共創を進めていらっしゃるのでしょうか。 竹野氏: 例えば、社会貢献の一環として活動を行っていた中で、パートナーの方から、「富士通さん、ICT企業なんだから、こういうことできないの?」というアイデアを頂きました。その可能性に気付いた社員が働きかけ、新たなサービスを開発し、今やビジネスとして広がりつつあります。また、携帯電話やスマートフォンを使った生物多様性調査ツールを、NPOなどの団体に無償で提供する活動を行っています。まずはICTを使ってもらうことで、その便利さや可能性を知ってもらう。使っていく中で、利用者側から、私たちには思いつかないアイデアが湧いてくる。少し時間がかかるプロセスですが、社会に役に立つ、本当に望まれるICTは、社会と積極的に繋がりを持ち、そのやり取りの中で見出していくことが重要だと思います。 枝廣: まずは使ってもらい、お互いに意見交換をしながら、一緒に新たな価値、力を生み出していこうよ、というスタンスですね。利用者の声を聞き流さないで社内に持ち帰る社員の感度、土壌をつくることが重要ですね。 竹野氏: お互いに歩みよる関係を作り上げ、何か支援できるのではないか、ということに気付くよう社員一人一人の感度を高め、同時に働きかけの場を作っていく。という取り組みを進めていきたいと思っています。 ■よりよい環境経営に、社会との対話プロセスは必然 枝廣: 富士通の環境の取り組み自体も、社会との対話の中でよりよいものにしていこうとしていますね。 竹野氏: 我々は、社会との対話を通して、よりよい環境経営を目指すことを目的に、昨年から様々な分野の有識者の方々との対話の場を設けています。この取り組みを通して、社会と対話することは企業の営みの中で必然だと感じました。例えば、富士通としては様々な情報を社会に発信しているつもりでいましたが、実は十分に伝えられておらず、社会には届いていないことを知ることができました。まずは、しっかりと私たちの取り組みを伝える工夫をしなければ、存在価値を社会に認められなくなってしまう、と改めて認識しました。社会の声は経営においても非常に重要であると感じています。 ■本業と同軸性を持った環境活動で、さらなる貢献を目指す! 枝廣: これまでのお話をうかがうと、社会との対話、共創のもとで行っている富士通の取り組みは、単なる社会貢献としてのCSRとはまた違うものに感じます。 竹野氏: 富士通では、本業と同軸性を持ったCSRに力を入れています。ICTを使って頂くことを通じて、環境や社会に貢献できる。そこでビジネスの種が生まれれば、会社として収益をあげ、さらに社会へ還元ができる。本業と同軸性を持つことで、こういったポジティブサイクルを回すことが可能だと考えます。 枝廣: 「本業との同軸性」というのは重要なキーワードだと思います。収益の一部を使って社会貢献をする、というのは少し前のCSRの位置づけですね。そのような考え方になったのは、どういうきっかけでしょうか。 竹野氏 グリーン経済という言葉もあるように、いまや環境というキーワードを無視して、企業が社会に認められることはないと気付いたのがきっかけです。投資家の判断にも、環境への取り組みは大きく影響を与える時代になってきています。それをしっかり認め、先手を打って対応していなかければ、企業は存続を許されなくなります。永続性のある企業として社会に存在し続けるためには必要な考えだと思っています。 枝廣: 本業との同軸性を取ることで、自社も成長するし、社会もより良い場所になる。そういった取り組みが、本当の意味での成長を支える環境力になるのですね。 竹野氏 富士通は、これからも社会とともに環境経営に取り組んでまいります。本日は、どうもありがとうございました。 ※こちらでも同内容をご覧いただくことができます
 

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