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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2017年06月11日

ビジネス情報誌・エルネオス3月号巻頭言より 「ESG投資への準備を!」(2017.06.11)

新しいあり方へ
 

3年前から教えている東京都市大の第1クォーターが終わり、第2クォーターが始まりました。以前は、1年を前期・後期と分けていたのですが、いまは1年を4期に分けるしくみになっています。1つのクォーターは7週間で終わってしまうので、できるだけ効率よく効果的にと授業を工夫していますが、「エダヒロ先生の授業は課題が多くてタイヘン」というウワサらしいです(^^;

先日終わった第1クォーターでは、企業の社会的責任に関する授業を担当していました。企業のCSRレポートを何冊も読み、松下幸之助さんの「企業の社会的責任とは何か」を読み、実際に企業のCSR担当の方に来ていただいて現実の状況や課題についてお話を聞き、毎回グループディスカションで考えを深めました。

授業の中でも、学生たちの関心と希望を惹きつけたものの1つが「ESG投資」の動向でした。私も本当に大事な動きだと注視しています。

年に数回、巻頭言を書かせてもらっている「情報感度を研ぎ澄ます」ビジネス情報誌・エルネオスで、少し前にESG投資についてまとめてご紹介したので、お届けします。
http://www.elneos.co.jp/

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

ビジネス情報誌・エルネオス 3月号 巻頭言 より

ESG投資への準備を!

投資をめぐる状況が大きく変わろうとしています。御社は対応できているでしょうか?

以前から、SRI(Social Responsible Investment)と呼ばれる社会的責任投資が行われてきました。これは、年金基金・金融機関・個人などの投資家が、投資の社会的役割を考え、企業の社会課題への取り組みを評価して銘柄選択などをするものです。

SRIは1920年代の米国で始まりました。キリスト教系の資金が、ギャンブル・武器・酒・たばこ関連の望ましくないと考える企業を投資対象から除く取り組みを始めたのです。

その後、1960~80年代にベトナム反戦、公民権運動、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)問題、環境問題などの社会運動が盛んとなり、ナパーム弾製造企業や南ア進出企業への投資を中止する動きが広がりました。

2012年には、学校での銃乱射事件をきっかけに、カリフォルニア州教職員退職制度が銃器製造企業への投資を禁止し、ほかの年金基金にも広がりました。

こうして、企業の社会的責任の観点から望ましくない投資対象を除外するネガティブ・スクリーニングとして始まったSRIですが、企業の良い面を評価し投資するポジティブ・スクリーニングも広がりました。

2000年には、英国で年金法が改正され、①社会、環境、倫理を考慮しているかとその程度、②株主の権利行使の方針の有無・内容について、情報開示が求められるようになります。その後、スウェーデンやドイツなどにも同様の動きが広がり、これを契機に年金基金にSRIが広がりました。

日本でも、1997年の京都議定書などを契機に、企業の環境側面の取り組みは企業評価にとっても重要であるという考えが出てきて、1999年にはじめて環境に配慮した企業を評価し投資する投資信託「エコファンド」が設定され、いくつものエコファンドが誕生しました。

そして、2006年、国連環境計画・金融イニシアチブと国連グローバル・コンパクトが世界の投資家などと、投資分析と意思決定に環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)を考慮するESG投資を広げる取り組みを始めました。

これは、SRI専門の投資家だけでなく、より広く通常の投資でESGを考慮することを目指すものです。SRI投資が環境的に望ましいまたは望ましくない一部の企業が対象であったのに対し、ESG投資はすべての企業を対象とします。なぜなら、環境や社会的課題への取り組みや企業ガバナンスへの対応はすべての企業に関わる課題だからです。

世界的に、ESG投資が大きく広がっています。その残高は2014年時点で21兆ドル、世界の全投資額の30%を占めています。先進的な欧州ではその割合は59%、米国でも18%です。

日本は?というと、現時点ではまだ1%未満です。年金基金が動かなかったからです。

しかし、その日本でもようやく動きが出てきました。2015年9月にGPIF(厚生年金と国民年金の積立金、約130兆円を運用)が国連責任投資原則に署名、ESG投資に乗り出すことになったからです。

今後は日本でも、投資対象事業の環境配慮や社会的な取り組み、コーポレート・ガバナンスの仕組みなどを投資の判断基準に組み込んだり、投資対象に対してそうした取り組みをするよう働きかける動きが広がっていくでしょう。

このESG投資は、環境・社会運動が目的ではなく、あくまでも投資パフォーマンスを上げる手段として位置づけられていることを認識する必要があります。特に年金運用のように長期的に運用する場合には、短期的な業績ではなく、数十年後も成長できる企業を見極める必要があります。ESGという視点はそのための有効な枠組みなのです。

実際に、ESG要因と株価リターンの相関性を示す調査分析が増えており、ますます投資家のESG投資への関心が高まる状況となりつつあります。

さて、御社はどうでしょうか? 単なるCSR(企業の社会的責任)ではなく、長期的な生き残りと成長の要因としてのESG投資の眼鏡にかなう準備はできているでしょうか。

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~

最近では、一般の方向けに、「わが社でESG投資をしましょう!」という証券会社などからの呼びかけも増えていますね。

お金は経済の血液ですから、望ましいほうへお金を動かしていく金融の役割は非常に大きいです。今後の動きに注目!ですね。

余談ですが、都市大で私が第2クォーターに教えているのは、「世界から考える環境問題」と「環境コミュニケーション論」です。

「世界から考える環境問題」は、セヴァン・スズキさんのスピーチを聴いたり、トランプ政権のパリ協定離脱に関するニューヨークタイムス紙の記事を読んだりしながら、ディスカションをしています。授業自体、ほぼ英語で行っています。

「環境コミュニケーション論」は、理論と私の経験からの学びを伝えつつ、各自が環境コミュニケーションを企画・立案し、実行して、振り返りまで行うというアクション・ラーニング方式で進めています。これを7週間で行いますから、学生たちも大忙しです。でも、「聞いているだけの授業より楽しい!」とがんばってくれているようです~。

英語での授業も、最初は「英語は得意じゃないから」と引いていた学生たちも、順序立てて「どうやって聴く力をつけるか」「どうやってディスカションするか」を教えると、少しずつトライして、小さな自信をつけて、さらにチャレンジするようになっていきます。

去年の同じ授業の最終感想から少し引用します。

「今まで受けたことのない授業で、ただ授業を聞くのではなく、実際に自分で行うということができたので、多くのことを学べ、身につきやすいと感じたし、とても楽しかったです!!」
「英語の捉え方が変わりました」
「最近は、「これを英語にするとどうだろうか」「この英語の訳はこうだろうか」と日常で考えることが増えました。自分としては、そこからさらに発信することの能力を高めていきたいです」
「聞く耳は育つということを実感しました」「
1回目の授業で聞いたスピーチをあらためて聞いて、以前より聞き取ることができて自分でも驚いた」「英語力を向上させるきっかけをつかめたと思う。もっとトレーニングして向上していきたい」
「今回の授業で英語を詳しく学ぶことが出来、良かったです。授業の中に様々なエッセンスが含まれていて、内容以外にも学ぶべきことが多くあり素晴らしかった」「この授業は大変だったけど、その分自分の力になった。内容もおもしろかったし、勉強になった。これからも英語学習を続ける」
「この授業では自分が経験したことのないようなことできる機会を与えてもらったと思う。この経験を今後活かしていきたいし、活かすために自分でも授業でやったことを継続していきたいと思う」
「この授業は本当に面白く、ためになった」
「この授業が今回で最終回であると思うと少しさみしく思います」

最後のひと言など、教師冥利に尽きます。。。

英語講座を大人向けにもやってほしい、という声にも背中を押してもらい、2時間半のセッション1回だけですが、7月12日(水)18:30~「英語で学ぶ」「英語を学ぶ」「英語の学び方を学ぶ」セミナーを開催します。大学の授業よりずっと少ない人数で、大人向けにじっくり行います。

「英語を読み、聴き、口に出す」練習の場と学び方のコツを、よろしければぜひ!詳細、お申し込みやお問い合わせはこちらからご覧下さい。

 

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